65,再会
見渡す限りの白。一瞬僕の目か頭がとうとうおかしくなったのかと思ったが、どうやら違うようだ。
「なに、この状況。……世界は光で溢れている、みたいな……」
「こんなに早く進行するなんて、嘘だろ!?」
「説明してくれない? シグは一体なにをしてるの?」
呆然とした様子の相澤くんに問う。それに答えたのは相澤くんではなく、同じく呆然としているようなドランくんだった。
「世界の書き換え、だ」
「書き換え?」
「作り直しているのだ、この世界を」
予想以上に凄いことをやっていた。世界を作り直す? そんなものがシグに出来るのか?
「……出来るからこうなっているのか。にしても……なんか、全く生物がいないんだけど」
見渡す限り真っ白。それはつまり、生き物の姿も見当たらないということだ。建物なんかも、当然見えない。
「おそらく、だが……消滅した」
「は? 消滅?」
「私の目の前で、同胞が消えたのを見た。私は間一髪、力を使って逃げのびたが……」
「俺も見たぜ。人が消えた。なんでか俺は助かったが、気がついたら真っ白だった。その時はまだ、こんな風に見渡す限りではなかったけどな」
「消滅って、死んだってこと?」
「……おそらくは」
なんとまあ。凄いな、色々と。
ビックリしすぎてなのか、頭が回らない。あ、これは最近ずっとか。
「で、そのシグは?」
「……次元と次元の間、か? 力を感じる」
「正確には分からないのか」
「仕方ないだろう、この世界全体からあの子の力を感じるのだ。こんな状態では正確な位置など分からない」
「ああ、それもそっか。んー、でも、僕はどうしたらいいわけ? シグを止めるって言っても、最悪僕も消えるけど。そもそもシグと会わなきゃだけど、どうやって?」
次元と次元の間にいるというシグとどうやって会うというのか。それに会えたとしても、その瞬間に僕も消滅、なんてこともあり得る。まあ消えたとしても僕はどうでもいいけど。
「……って、あれ?」
「ん? どうした?」
「いや、あそこ……なんか変というか」
「は? どこ?」
「えーと、ここらへん……うおっ?」
なんとなく違和感のある場所に手をやると、引きずり込まれるような感覚と共に僕の右手が消えた。その後もどんどんそこに吸い込まれるような形で消えていく。
え、まじで。
「渡邊!?」
「うわ、僕の右腕が消えていくんだけど。なにこれ怖っ。というか気持ち悪っ」
「ワタナベ、大丈夫か!?」
「痛くないから大丈夫だけど、このままだと全身消えるのかな。そしたらもしかして、僕死亡?」
シグに会えず、何も出来ないまま死亡。僕らしいな。
「……あれ、なんか思考が自虐的。おかしいな、前はポジティブというかもっとマシだったのに。やっぱり脳のチューニングに失敗したのかな」
「なに言ってんだよこんな時に!」
「独り言だから気にしなくていいと思う」
「お前はもう少しこの状況を気にしろぉ!!」
いつになく怒鳴ってくる相澤くん。そんなに怒らなくても。
「待って、引き抜けないか試してみるから。……よっ、とと」
抜けた。あっさりと。そしてシグが釣れた。
「へ? シグ?」
「あーば! あーば! あばばー!」
「おお、久しぶりのあばば……」
「いや、なんでだよ!? そんなあっさりと見つかるもんなのか!? しかも渡邊の腕にしがみついて出てくるとかなんなんだよ!?」
「見つかったならいいじゃないか、細かいことは気にしても無駄だよ」
「あばば!」
「……こいつのメンタル強すぎ……なんでそんなに動揺してないんだよ……」
「オリハルコン製だからじゃない?」
いつだったか、誰かにメンタルオリハルコン野郎と言われたことがある。中学の時だったかな? あれはたしか、いじめっ子のリーダー格だった気がする。懐かしいな。
「シグ、世界を作り直してるの?」
「あば。……あばばー」
「別に怒ってないよ。だからこの世界を元に戻してくれる?」
「あ、あば! あばばばばー!」
シグが発光する。次に目を開けたときには、もう全て元通りになっていた。ここで初めて分かったのだが、どうやら僕らはどこか地下のような場所にいたらしい。
「お疲れさま、シグ」
「あーば!」
相澤くんとドランくんが何か言いたそうにしているが気にしない。戻ったなら良いじゃないか。
シグと再会した。




