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64,通算七回目

 大晦日。あれから約一週間が経ち、僕はいつも通りの生活を送っていた。

 テレビをつけるとニュースが流れる。高校生が行方不明になったらしい。……あ、これ相澤くんだ。

 ご都合主義じゃなかったのか、あの世界。長居しなくてよかった。危うく僕も全国ネットに載るところだった。

 それにしても、勇者の仕事ってどれくらい時間がかかるんだろう。冬休みが終わるまでに帰ってこれるのだろうか。帰ってきても帰ってこれなくても話題になること間違いないな。クラスの人気者だね、相澤くん。不登校にはならないといいんだけど。

 …………んー、えー、うーん。


「……あー、駄目だ。全然調子が出ない。なんだろ、チューニングでも狂ったかな」


 僕は相変わらず調子が悪い。不快感続行中だ。なんだろう。体が重いし、頭に靄がかかっているみたいだし、意識がはっきりしないというかなんというか。

 その時、僕の携帯電話が鳴った。珍しいなと思いながら液晶画面に目を落とす。すると、「相澤誠」の文字が表示されていた。おや。行方不明者、発見。


「もしもし。久しぶりだね、相澤くん」

「お前、今どこにいる? 家か?」

「え、家だけど。何?」

「悪いけど、今すぐ駅に来てくれ!」

「は? なに、どういうこと」

「もう一回、お前を異世界に連れてくんだよ!」

「……はあ?」

「今は詳しいことを話してる時間ないから、とにかく来てくれ!」

「僕、今ちょっと調子悪いから外に出たくないんだけど」

「お前、シグを頼むとかなんとか言ってただろ。ならちっとは協力しろ! お前も無関係じゃないんだよ!」

「……シグ? なに、まさかシグ関係なの?」

「そのまさかだよ! 早く行かないと、手遅れになるんだよ。だから早く来い!」

「あー……分かった、行くよ」


 そういえば相澤くんが再召喚されるまえにそんなこと言ったっけ。なら行かないと。

 コートを着て外に出る。寒い。やっぱり行きたくない。いや、でも行くと言ってしまったし。


「はあ……シグも結構やっかいごとを持ってくるよな……」


 そもそも、シグが僕のところに来なければこんな面倒くさいことに巻き込まれなくて済んだんだよな。

 いっそのこと、こんなところに来なければ良かったのに。


「や、相澤くん。元気……そうだけど、なんかボロボロだね」

「色々あったんだよ」

「ふーん、まあいいや。で、もう一回異世界に行くって、どういうこと? 相澤くん、せっかく帰ってきたのにまた行くの?」

「放っておけねえよ、今更。知り合っちまったんだ、仲良くなっちまったんだよ。たくさん助けてもらった。だから、助けねえと」

「……へえ。本当に波乱万丈だったんだね」

「詳しくはその内な。終わったら話す」

「いや、別にそこまで興味はないからいいよ」

「……ああ、お前はそういう奴だよな。っと、とにかく、早くお前をあっちに連れていかないと大変なことになるんだ!」

「大変なこと?」

「最悪、あの世界が滅ぶ」


 わあ、大変だね。


「そうなんだ、どうでもいい」

「本音と建前逆だぞ。そういうの思ってもいいけど、せめて口には出すなよ!」

「あ、ごめん。で、何で僕を連れていくわけ?」

「あいつ……シグが暴走したんだ」

「……暴走?」

「俺も詳しいことは分からねえ。ただ、仲間から酷い仕打ちを受けた、らしい」

「うん」

「で、何かをされそうになって、それに怒って暴走したんだ」

「その何かって?」

「さあ……。あの変な力、お前が宇宙人パワーって呼んでるやつを使われそうになっていたのは見た」

「ふうん……?」

「それを止められる可能性のある奴はもうお前しか思いつかない。ってわけで、連れてく。経緯はいいか?」

「ん、把握した。けど、どうやって行くの? 相澤くんも宇宙人パワーを使えるようにでもなったの?」

「んなわけねえだろ! こいつに協力してもらうんだよ」

「こいつって……あれ、ドランくん?」


 相澤くんが指差す方を見ると、そこにはグランくんの姿があった。いや、宇宙人の見分けなんて出来ないからもしかしたら別の人かもしれないけど。ま、いいや。ドランくんということにしておこう。


「久しぶりだな、ワタナベ」

「やあ。なんだか大変なことになってるみたいだね」

「……ああ」

「シグって優しい子だと思ってたんだけど、どうやって怒らせたの? 僕、呆れられたことはあっても怒られたことはないよ?」

「呆れられるのもどうかと思うんだけど!?」

「そんな小さいことなんて気にしないでよ、相澤くん」

「……予想外だったのだ。まさか、あれほどの力を秘めているなど……」

「で、なにしたの?」

「………………」

「言えないことなのかな?」

「……倫理的に受け入れられないこと、とだけ言っておこう」

「ふうん、どうでもいいけど」

「……どうでもいい? そうか、君はそういう人間なのか。あの子が懐く人間がこんな……分からないものだな」

「で、早く行かないの? 急いでるんでしょ?」

「ああ、そうだな。二人とも、行くぞ」


 ドランくんが発光する。眩い光に目を閉じ、もう通算七回目となる世界を超える感覚を体感する。なんか慣れてきたな、これ。


 目を開けると、光に満ちていた。


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