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58,クエスト

 異世界に来たのはこれで通算三回目だ。

 一回目は夏休み。シグの宇宙人パワーによって。二回目は今日の昼頃。相澤くんが勇者として召喚されるのに巻き込まれた。三回目は今。シグを仲間のところに連れ戻すのに巻き込まれた。


「あれ、僕って結構巻き込まれやすいのかな。まあいいけど」

「あばば?」

「なんでもないよ、シグ。そろそろ落ち着いた?」

「……あば」


 そうか、落ち着いたか。なら良かった。あのままだと話が進まないからね。


「で、えーと……僕はどうしたらいいんだろう。帰してくれたら助かるんだけど」

「悪いが、それはもう少し待ってくれないか」

「あ、ドランくん。なんで?」


 ドランくんがそう言ってきた。僕は関係ないと思うんだけど?


「その子の説得を頼みたい」

「シグの説得?」

「ああ。……さっき力を使った時はその子と車、君らはUFOと呼んでいるのだったか、だけを転移させるつもりだった。だが……」

「僕まで来てしまったのは、シグがやったってこと?」

「十中八九そうだな」


 ……何でこうなったんだろう。なにも僕を道連れにしなくてもいいだろうに。そんなに嫌だったのだろうか。


「それで、説得って?」

「君と一緒にいることを諦めさせてもらいたい。その子は随分と君に懐いているが、いつまでもそのままでは駄目だ。私たちと共に生きるよう、説得してほしい」


 ……。なーんか、あれだな。うん。ちょっと気にかかる言い方だ。色々隠している感じがする。

 まあ、いいか。どうせ僕には関係無いのだから。


「ところで、その大きいのって何?」

「お、大きいの!? 失礼な口を利くな! この方は我らの王、サリヴァル様だ!」

「王様なんだ? へえ、こんにちは」

『……あばばー』


 挨拶をしたら、返ってきたのはシグと同じあばばという言葉だった。音量はこの部屋に反響するほど大きいけど。

 王様は喋れないのだろうか。それともわざと?


「王様って喋れないの?」

「……そもそも私は君らの言葉を話しているわけではない。力を使って翻訳しているだけだ」

「ふむ」

「力を使うには体力、精神力が必要になる。……サリヴァル様はもう大分高齢でな、力を使うのに万全な状態でないのだ」


 なるほど。宇宙人パワーには体力精神力勇気希望その他もろもろが必要だということか。後半は冗談だけど。

 ……物語とかだと、こういう時に裏設定があったりするよな。


「もしかして、シグと王様って何か関係あったりする?」

「あばば?」

「……何故そう思う?」

「いや、なんとなく。ただの勘」


 ふとそう思っただけで本当にただの勘なのだが、ドランくんの反応からするに、まさか本当なのか?


「……その通りだ。その子と王様は親戚同士だ」

「やっぱりそうなんだ」

「あ、あばば!?」

「良かったね、シグ。ちゃんと家族がいるんだって」


 祝福するように笑顔でシグを撫でる。あ、これ笑顔じゃなくて頬が引きつっただけだ。表情筋よ、仕事を放棄しないでくれ。普段のサボタージュを寛容していたからか、こういうときにも働かない。

 うーん、そろそろお別れするんだから最後くらいはちゃんと無表情以外の表情を見せてあげようと思ったのだけど、上手くいかないなぁ。流石は表情筋が死滅していることに定評がある僕だ。


「あーば……」

「シグ、残念な子を見るような目で見ないで」

「あばっ?」


 あれ、シグの反応が変。間違ったかな。


「……まあいいけど」


 それじゃあ、僕の仕事「シグの説得」に取りかかるとしようか。


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