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52,オープニング

 僕らは異世界に召喚されたようだ。


「しかし……文献では勇者は一人だったはずだ。この中のどれかが勇者だとして、一体誰がそうなのだ?」


 王様らしき人がそう尋ねてくる。よく見ると、なかなかダンディな顔に困惑したような表情を浮かべていた。

 勇者、ねえ。


「……相澤くんじゃない?」

「はっ? なんで俺?」

「あのときの光、相澤くんを中心に光ってなかった?」

「あば、あば!」

「……たしかに、そう言われたらそうだけどさ……。いや、でもまさか俺が勇者とか、信じられねえよ」


 僕らがそう話していると、王様(仮)が相澤くんに向かって話しかけた。


「ふむ? お主が勇者なのか?」

「え、いや違」

「そうです。この人が勇者です」

「っておい、渡邊!? お前なに言ってんの!?」

「ゲームで言えばオープニングのこの時点であまりグダグダ言うのもあれだから、適当に決めようかなと」


 無駄に長いとイライラするよね、あれって。


「そんな理由かよ! だったらお前が勇者で良いじゃねえか!」

「僕が勇者? いやいやいやいや、そんなわけないじゃん。なに言ってるのさ、相澤くん」

「うわすっげえ腹立つ」


 腹立つって言われた。解せぬ。

 とその時、横から咳払いが聞こえた。見ると、何だろう、神官のような格好をした人が口に手を当てていた。どうやらこの人がやったらしい。


「王の御前である。あまり無駄話をするな」


 王様(仮)ではなく本当に王様だったのか。

 僕は王様の方を向いて、手を軽く挙げながら質問した。


「えーとですね。正直あんまり、というかまったく状況を理解できていないので、説明をお願いします」


 とりあえずそうしないと何も分からないし何も出来ないからね。


「それなら、私が説明しましょう」


 そう言ったのは魔法使い風の青年。

 夏に異世界に行った時に出会ったメリアさんも魔法が使えたけれど、こんなテンプレな格好はしていなかったな。普通の村娘というか、そんな感じだった。夏に来た異世界とはまた別のところなのだろうか。確証はないけれど、とりあえずそういうことにしておこう。


「今、この世界は危機に瀕しています。三年ほど前、天から奇妙な物体と共に魔王がやって来たのです」


 魔王? 本当にゲームみたいだ。


「魔王はその圧倒的な力でもって、我々人類を滅ぼし始めました。配下の魔物を制御するどころか暴走させるという、犠牲をいとわない手段で」


 魔物ってこの異世界にもいるのか。まあそうだよな。なら使い魔もいるのかな?


「人類の数は著しく減り、今では三年前の半分以下にまでになってしまいました」


 結構な被害だな。魔王側、ちょっと強すぎないかな? 


「もちろん、我々もこのまま滅ぼされるわけにはいきません。過去の様々な文献や伝承を探り、遂に魔王に対抗できる手段を見つけたのです」

「それが、勇者だった?」

「その通りです」


 相澤くんの言葉を肯定する魔法使いの青年。


「勇者はこの世界とは別の世界にいると伝えられており、どうにか呼び出す方法を見つけ出し、今回無事に成功したのです」

「成功?」


 その言い方だと失敗したこともあるような感じだけど。


「まあ少々、苦労はいたしましたが」


 ……ふむ。


「じゃあ俺達の誰か、もしくは全員が、この世界を救う勇者ってことか?」

「いえ、勇者は一人のはずです。過去のどの文献を調べてみても、勇者が複数いたという記述はありませんでした」

「じゃあ、やっぱり相澤くんが勇者か。頑張ってね。遠くから応援してるよ」

「遠くからかよ、この薄情者! というか俺は勇者じゃねえって!」


 何を今更。


「相澤くんが勇者、僕らはそれに巻き込まれただけの一般人。おーけー?」

「全力でノーだよ!」


 それにしても、相澤くんは異世界に来ても元気だなあ。シグは大人しくしてるし、瀬川先生なんかまだ一言も喋っていないのに。


「……それで、結局勇者は誰なのだ?」

「相澤くんです」

「違う!」


 むう。この強情者め。さっさと認めてしまえば良いのに。こんなんじゃいつまで経ってもオープニングが終わらないじゃないか。


「……はぁ、仕方ない。ラギ、やれ」

「承知しました」


 魔法使いの青年――ラギというらしい――に王様は何かの命令を下した。

 彼は手に持っていた杖を掲げると、何やら魔法を使い始めた。彼の目が奇妙な光を帯び始めた。


「……そこの男、アイザワでしたかな? 彼が勇者のようです」

「えっ!?」

「おお、そうかそうか。そなたが勇者か!」


 どうやら魔法で勇者かどうか見極めたらしい。ゲーム風にいうなら「鑑定眼」? 魔法っていうよりスキルみたいだな。


「勇者殿、よく来てくださった! さあこちらにどうぞ!」

「え? え? え?」


 にわかに活気だつ彼らは、困惑している相澤くんを引っ張ってどこかに連れていこうとしている。

 彼らの中心で相澤くんは助けを求めるようにこっちに視線を向けてきているけど……うーん、どうしようかな。


「……とりあえず、僕らの待遇とかはどうなるんだろう」


 二度目の異世界は大変そうだ。


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