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51,召喚

 冬休み、前日。今日は終業式だ。


「……はぁ」

「溜め息なんか吐いてどうかしたのか? お前が憂鬱そうなのって珍しいな。体育祭以来か?」

「うん……。明日、叔母夫婦の家に行かなきゃならなくてさ。気が重いなぁ、と」

「叔母さん? 何で?」

「年末だから早めに挨拶に行っておく。というのと、両親の命日だから、その関係でちょっと」

「……え、命日って……」

「昔、事故でね」

「わ、悪い……」

「何が? 相澤くんが謝るようなことはないと思うけど」

「いや、その、親が亡くなってるとか知らなくて、無神経なこと言っちまったなって……」

「ああ……気にすることはないよ。別にその事に対して何か特別思うこともないからさ」

「いや、そういうわけにはいかねえよ」

「本当にどうでもいいのに、相澤くんは律儀だね」

「いや、これくらい普通だろ? にしても、お前って結構大変なんだな……。妹ちゃんも行くのか?」

「絆は向こうに住んでるから」

「え? そうなのか? そういえば前に一人暮らしって言ってたっけか」

「シグもいるから正確には二人だけどね」

「ああ、うん。ソウダナ」

「何で棒読み?」

「……はぁ。ま、気にしても仕方ないか。今更だし」

「何が?」

「何でもねえよ。さーてと、帰るか」

「あ、今日はこの後買い物に……」

「……あの、渡邊くん」

「ん? 瀬川先生。何か用ですか?」

「……これ、何でいるんですか?」

「は? これ、って……あ」

「お、渡邊ん家の宇宙人だ」

「あば!」

「さっき廊下で見つけたんですけど、何で連れてきてるんですか!」

「シグ、校門のところで待っててって言ったよね。入って来ちゃ駄目じゃないか。どうしたの?」

「あーば、あばば、ばあばばー……」

「何? お腹すいたの?」

「あばばば!」

「……寂しかったんじゃねえの? よく分かんねえけど」

「そうなの?」

「あば。……あーば、あばば……」

「そっか。でも、もう駄目だよ。これからは気を付けてね、いい?」

「あば!」

「……渡邊くん、何でこれが学校にいるんですか?」

「学校帰りにシグと一緒に買い物に行こうと思って、校門のところに置いてきたんです。入ってきちゃったみたいですけど」

「……これからは気を付けてください」

「ああ、それと。何回も言ってると思いますけど、これ呼ばわりは止めた方が良いですよ?」

「……」

「……なんか瀬川先生って、渡邊の前だといつもと違うよな」

「え、そうかな? 僕はそう思わないけど。いつも通りじゃない?」

「……たしかに、何か調子狂うんですよね。……はぁ」

「あーば、あばば!」

「あ、待たせてごめんねシグ。行こうか。相澤くん、ばいばい」

「おう、また休み明けにな」

「瀬川先生もさようなら」

「ああ、はい。さようなら……」

「じゃあシグ、クリスマスプレゼントは何が……シグ? どうかした?」

「あ、あーば……あばば……」

「え、何? 相澤くんの方を向いて、何か言いたいの?」

「渡邊? どうした?」

「いや、シグが……って、相澤くん? それ、何か……」

「は? 何だよ」

「……足元、光ってない?」

「……へ?」

「え、ちょっ!? な、何ですかこれ!」

「先生、これ多分離れた方がいいやつ……っう、わっ」

「あーば! あば、ばばっ!?」

「えっ、はっ!?」

「きゃあっ!」




 光がいっそう強くなり、僕らは思わず目を閉じた。瞼越しに光が消えたことが分かると、一瞬の静寂の後ひそひそ、ざわざわと話し声が聞こえてきた。

 あれ? おかしいな。さっきまでいた廊下には僕とシグ、相澤くん、瀬川先生の四人しかいなかったはずだけど。

 そっと目を開ける。と、そこは見慣れた学校の廊下ではなく大理石の床に赤い絨毯の敷かれた、いかにも城という感じの広く大きな部屋があった。

 目の前には黒いローブを着て、手に捻れた木の枝で出来た杖を持った魔法使いのテンプレのような格好の青年。その横には赤いマントを羽織った中年の男性。その頭には金色に光る王冠が乗っかっている。何あれ、王様のコスプレ? 辺りを見回すと、他にも兵士のコスプレのような格好をした人達が十人ほどいた。

 あ、シグと相澤くん、瀬川先生もいる。あの場にいた全員がここに呼び出された(?)らしい。

 王様のような格好の中年の男性が一歩近づいてきた。そして歓迎するように両手を広げ、口を開いた。


「ようこそ、勇者殿」


 ……どうやら、また異世界に来てしまったらしい。



切りがいいのか悪いのか分かりませんが、ここで一旦更新を止めます。再開は多分十二月中になるかと思います。

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