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5,名前
宇宙人がやって来て二週間。僕はあることに気がついた。
「ねえ、君の名前ってなに?」
「あば?」
「名前、まだ知らないから。今更だけどね。別に知らなくてもまったく困らないけど、一応」
「あばば……あばー……」
「まるで人間が首を振るように体を左右に振り始めたけど、どういうこと?」
「あばば……ばば……」
「ん? なに、名前ないの?」
「あば……」
「ふーん。それじゃあ『シルバー』にする?」
「ば?」
「君の名前だよ。銀色だから『シルバー』。それとも『グレイ』がいい?」
「あば!? ……あば!あばばば!」
「え、なに? どっちが良いの?」
「あば、ばばば!」
「じゃあ『シルバー』と『グレイ』の頭文字で『シグ』にするね」
「あばば、あばー! あばばば!」
「嫌だって言っても君に拒否権はないよ? 他のが良くっても諦めてね」
「あば!」
宇宙人の名前はシグになった。