30,帰還
あっという間に三日過ぎ、シグの宇宙人パワーで帰ることになった。
「初日から命の危機が二回あったり、変なもの買わされそうになったり、呪い屋の仕事を手伝わされたり、魔法を教えてもらったり、色々あったね。シグ」
「あば!」
「メリアさんも、生け贄にされそうになったけど良い人だったし」
「あ、あば……?」
「良い人ではないと思いますよー?」
くすくすと笑いながら訂正された。そうだろうか、僕は良い人だと思ったけれど。
「なんだかんだで優しかったですし、ご飯もくれたし寝床も提供してくれたし、良い人だと思いますよ」
「……なんでしょうねー。狂ってるんだかお人好しなんだか……ワタナベさんって、よく分からない人ですねー」
「きっとお人好しなんですよ。僕、狂ってなんていませんし」
シグ、なんで否定するような声をあげているの?
「あーば、あば。あば、あばば」
「そうですよねー、シグさん。ワタナベさんは変な人ですよねー」
むう、何故そこまで言われなければならないのだろうか。変だなあ、僕はごくごく普通の高校生だというのに。
「……まあいいや。さて、シグ。そろそろ帰ろうか」
「あば」
「あら、行っちゃうんですかー? 残念ですねー。ワタナベさんに魔法をちゃんと練習してもらって、私の助手になって欲しかったんですけどー」
「無理です」
「せっかく呪いの適正がある人を見つけたのにー。もったいないなー」
いや、僕は呪い屋みたいな物騒な職に就くつもりはないので。
「僕は将来、公務員になるつもりなので」
「残念ですー。コウムイン、頑張ってくださいねー。どんなものか知りませんけどー」
メリアさんに激励された。適当に言ったのだが、それなら公務員にならないわけにはいかないな。
……ああ、そうそう。僕、魔法の適性があるらしい。暇だったからメリアさんに調べてもらった。まあ適性があるというだけで、魔法自体はまだ一つも使えないんだけど。
「……なんで呪いの適性があるのかは疑問だけど」
まあいいや。どうせ使うこともないだろうし。
「シグ、お願い」
「あば! あーばー……!」
「ワタナベさん、シグさん、さようならー。縁があったら、また会いましょうねー」
「そうですね。それじゃあ、さようなら」
「あばばばばー!」
ここに来たときと同じ、宇宙人パワーの強烈な光。一瞬の浮遊感。意識が飛ぶ。視界が真っ白に染まり、暗転。
「……帰ってきました、日本です。京都です。伏見稲荷大社です。千本鳥居です」
「あばー!」
「えっと、今日の日付は……携帯、携帯……あ、全然時間が経ってない」
「ばあばば?」
「ほら、あのときと同じ日付で同じ時刻だよ。うーん、異世界とここは時間の流れが違う、とかかな?」
「あばばー、あばあば」
「ご都合主義だね。まあいいや。……さてシグ、行くよ」
「あば? あばば?」
「京都観光して、その後は広島にも行くんだから。そう言ってたよね?」
「あ、あば……」
「よし。それじゃあ、さっそく行こうか。僕、金閣寺に行きたいな。シグはどう?」
「……あばー。あーばば、あばばあば」
僕たちは異世界から帰ってきた。




