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29/78

29,食費

 結局、僕らはそのままメリアさんの家に泊まることになった。


「本当にいいんですかー? 不意をついてナイフでグサッ、とかあるかもしれませんよー?」

「するんですか?」

「しませんけどー……。なんでそんなにあっさりとしてるんですかねー?」


 いやあ、だって。


「やっぱり、土の上よりもベッドの上で寝たいじゃないですか」


 疲れたからというのもある。

 メリアさんは口をポカンと開けたあと、呆れたようにため息をついた。


「……そうですかー。ところで貴方、図太すぎませんかー?」

「そうですね、よく言われます」

「あば、あばば……」


 確かに繊細というわけではないけど、図太いわけでもないと思うんだけど。


「さてさて、着きましたよー。私の家でーす」

「……おお。魔女の家、って感じだな」

「あばば!」


 家というより、小屋の方が正しい気がする。

 少し拓けた場所には、玄関に何かの動物の骨が飾ってある小屋が建っていた。


「なんですか、あの骨」

「魔除けですよー。ほら、このネックレスも同じもので作られてるんですー」

「へえ」

「万が一にも呪いがこっちに返ってこないように頑張ってるんですー」


 ……さっきから思っていたのだが。そんな対策をしなければならないほど危険なのに、なぜ呪い屋なんていう仕事をしているのだろうか。


「みんな、ただいまー」

「グア! グア!」

「ミュー、ミュー?」

「この人たちはお客様ですよー。襲わないでくださいねー」

「クルルルル!」

「ギャース!」


 騒々しい鳴き声。小屋の中には見たこともないたくさんの動物たちがいた。こんな小さな小屋に、こんな数がいたのか?


「……というか、広い?」

「あば?」


 見た目より大分広い。何かの魔法を使っているのだろうか。

 そしてあれらの動物たちは何なんだ?


「この子たちは私の使い魔ですー」

「え、全部? ……見たところ、十匹以上いる気がするんですけど」

「十二匹ですよー。ミュラを合わせて十三匹の使い魔がいるんですー」


 なんとまあ。多すぎないか、これ。


「この子たちの食費を稼ぐためには、呪い屋が一番なんですよねー。野生の魔物とかを自分で狩ってる子はいいんですけど、そうじゃない子もいますからねー」


 なるほど。そんな理由があったのか。

 ということは、今でさえこんなに大変そうなのに、僕達を生け贄に更に新しい使い魔を契約しようとしていたのか。


「動物が好きなんですか?」

「動物というか、魔物というか……。使い魔が好きなんですよねー」

「使い魔、が?」

「だって、絶対服従ですよー? そういうのって心が踊りますよねー」

「あばっ!?」


 いや、まったく踊らない。メリアさんはサディストなのだろうか。


「言っておきますけど、いじめるのが好きとか、そういう趣味ないですよー?」

「あ、そうなんですか。てっきり……」

「違いますよー。ただ、自分の思い通りに動いてくれるのが良いってだけですよー。痛いのは好きじゃないですしー」


 最後におどけたように言って、メリアさんは台所に向かった。


「久しぶりのお客様なので、腕によりをかけて夕食を作っちゃいますねー」


 そう言ってメリアさんは手を宙にかざしたかと思うと、どこからともなく肉が現れた。


「オークの肉が手に入ったので、今日はちょっぴり豪華ですよー」

「シャー!」

「ピーィ、ピーィ!」

「……お腹すいた」

「あーば、あばば。あばばーば」


 シグは、仕方ないと言うように体をぷるぷると震わせた。


 数十分後、夕食が出来上がった。新幹線で駅弁を食べてからなにも口にしていないので、いただきますと言ってがっつくように料理に手を伸ばした。


「このスープ美味しい。肉も意外とうまい。魔物の肉って食べれるんだね」

「あば! あばば!」

「……宇宙人の味はどうなんだろう」

「あ、あば!? あばばば!」

「冗談だよ」

「お口に合ったようで良かったですー」


 メリアさんは、食べながら使い魔たちに生肉をあげている。


「ほーら、餌の時間ですよー。感謝しやがれー、この卑しい使い魔どもめー」

「……やっぱりサディスト?」

「あば?」

「冗談ですよー」


 使い魔の食費は嵩む(場合による)。


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