24,生存
何やら右腕に違和感。あれ? 僕は死んだのではなかったのだろうか。
「……あらら。生きてたわ、僕」
「あ、目が覚めましたかー」
「あーば!」
「……えーと、シグはともかくとして、どちらさま?」
一瞬鬼さんが喋ったのかと思ったが違った。女の子だ。
「ああ、まだ動かないでくださいねー。右腕がグッチョグチョですからー」
「右腕? うわ、気持ち悪っ」
右腕に目を向けるとかなりグロい光景が広がっていた。詳しく言うと、皮膚がなくて血管やら筋肉やらがまる出し。そしてそれらがグニョグニョとくっつこうとするかのように蠢いてまるで虫のよう。なんで皮だけ剥がされているんだろうか。見た目がかなり気持ち悪い。
「痛いですかー? 痛いのならいいんですけどー、痛くなかったらヤバイですよー。さっきから全然痛がる様子がないんですけど、大丈夫ですかー?」
「めっちゃ痛いです。やせ我慢してます」
嘘。本当はあんまり痛くない。でもまあ大丈夫だろう。痛すぎて痛くないとか、そんなかな。
「あーば! あーば! あばばー!」
「シグ、君は大丈夫? というかこの状況はなに? 僕、鬼さんに食べられたんじゃなかったっけ」
「その鬼さん、というのはオークのことですかー? それなら私が追い払いましたよー」
「え、あ、そうなんだ。ありがとうございます」
「いえいえ、どういたしましてー」
見た限り標準的な体つきであの大きな鬼さんを追い払えるとは思えないのだが、人は見た目によらないんだな。
「でもー、貴方は右腕をぱっくり食べられちゃいましてー。助けられなくてごめんなさいねー」
「だから右腕がこんななんですか。別に大丈夫ですよ、それくらい」
なるほど。それにしても、皮だけなんて器用な食べ方をしたものだ。もっと食べたらよかったのに。中途半端だな。
「はいー。今は再生中ですのでちょっとグログロですけどー、もう少ししたらちゃーんと治りますから、安心してくださいねー」
「……再生?」
「はいー。私、治癒魔法は得意なんですよー」
「……ちゆまほう。まほう……魔法か」
……ふむ。どうやらファンタジー要素たっぷりな世界に来たらしい。やれやれ、シグも面倒なことをしてくれたものだ。
「ねえシグ。いつ帰れそう?」
「あ、あばば……。あ、ば、ば」
少し困ったように間を開けたあと、手のような形の触手を出して三本の指をたてた。
「三……三分? あ、違う? じゃあ三時間? ……これも違う、と。じゃあ三日? ……当たりか」
三日か。結構かかるんだな。そのわりには普段どうでもいいことで使っていたような気がするけど……ああ、異世界に来るなんていう大仕事だから、回復に時間がかかるとか?
「……さてさて、どうするかねえ」
「……あのー。なにがあったのか分かりませんけど、お困りですかー?」
「そうですね。主にこれから三日分の食料とか寝床とか」
「もしかしてー、旅人さんとかですかー?」
「あー、そんな感じです」
ちょっと違う気がしなくもないけど、まあいいか。
「それなら、私の村に来ますかー? この森をぬけたところにあるんですけどー」
なんと。こんな都合のいい申し出があるなんて、なにか裏があるんじゃないだろうか。
「村……他に行くところもないしな。じゃあ、ありがたく」
「はいはい。二名様ごあんなーい」
僕らは異世界に三日間の旅行に来た(強制)。




