16,梅雨
六月、梅雨が来た。例年より少し早めの梅雨入りらしい。
「はい、復活。みんなが沈んでるの見ると元気になるよね。瀬川先生も最近うるさく言わなくなったし」
「あ、あば……」
「なに、シグ。なんでそんなに呆れたような顔をしているの? ……顔? 目玉だけでも顔って言えるのか?」
「……あばばー」
「なんでやれやれみたいな仕草をされなくちゃならないのか、一回聞いてみたいんだけど。僕と会話すると、何故かみんなそんな仕草をするんだよね」
「あばば……あば、あばばば」
「うーん、まあいいや。どうでも。……あ、雨が降ってきた」
「あば? あばばー」
「シグは天気なら何が好き? 僕は雨が好き。あとくもりも好き。雨のにおいっていいよね」
「あば」
「ああ、でも、くもりは好きだけど冬の曇天は嫌いかな。雪が降る」
「ばば?」
「シグは雪って知ってる? あ、知らないんだ。雪はね、冬に降ってくる白い氷の結晶だよ。ここは雪国だから、冬はたくさん降り積もるんだ」
「あばー、あばば!」
「楽しみ? ……僕は嫌いだな、雪」
「…………あば?」
「電車が止まっちゃって面倒くさいからね」
「……あばば」
シグは雪が楽しみらしい。