15,立ち入り禁止
五月の終わり。中間テストまで秒読み。
「勉強面倒くさいー。なにもやりたくないー。成績とかどうでもいいからサボりたいー」
「あば! あーば、あばばば!」
「……最近シグが僕の保護者みたいになってきてる」
「なんでそんなに腑抜けてるんですか、渡邊くん」
「あ、瀬川先生こんにちわー、そしてさようならー」
「待ちなさい。……最近授業中にぼーっとしていることが多いですけど、どうしたんですか? 以前は一応ちゃんとやっていたじゃないですか。それなのに今は板書もせずに外を眺めてばかり」
「五月病」
「は?」
「五月病です、ただの。その内元通りですよ。だから心配しないでください。それではさようならー」
「待ちなさい!」
「あばば!」
「……もう、二人ともなんなんだよ……なにもしたくない……」
「五月病なら五月病でいいから、せめて授業を聞きなさい! そして『二人とも』って、これと含めて言わないでください!」
「あばば!?」
「あ、先生、今のは駄目ですよー。シグに失礼じゃないですか。この前も言いましたよね?」
「……この際はっきり言いますけど、それはおもちゃです。宇宙人なんていません。そしておもちゃだろうが宇宙人だろうが、学校にそんなものを持ってこないでください。学校は勉強をする場所です。関係ないものの持ち込みは禁止です! これは校則です!」
「あ、はい。いいですよー」
「……えっ」
「シグ、明日からは学校に来ちゃ駄目だよ。寂しくても我慢してね。ご飯は用意していくからさ」
「あば!?」
「……いや、あの。言っておいてなんですけど、そんなに素直に言うことを聞くんですか!?」
「え? はい。校則なんだったら仕方ないですよ」
「……こんなにあっさり? じゃあ今までの約二ヶ月間はなんだったの? 最初から校則だって言えばよかったの? なによそれ……」
「もう話は終わりですか? それじゃあさようなら、また明日。さ、シグ。行くよー」
「あ、ばあばば!」
シグは学校に立ち入り禁止。