4月 この人が一番
翌日の放課後――。
「よろしくお願いしまーす!」
「……よろしくお願いします」
フォークダンス部の練習場である部室棟第3会議室に、パイプ椅子にちょこんと座る初々しい2人組の姿があった。
一人は、人懐っこい笑顔が眩しい、ショートカットの似合う元気な少女で、名前は浜崎このみ。
練習が始まってからは、1年生の話し相手をローテーションで務める不二井、楓、麦尾――下級生受けするトリオ――に対して、専ら会話しているのが彼女だった。
もう一人は、セミロングの髪を少し高い位置で一括りにした、大人しげな雰囲気の少女。
甲斐七海と名乗った彼女は、上級生とこのみの会話に時折相槌を打つものの、基本的にはぼーっとその他上級生達の踊っている姿を眺めている。まるで積極性が感じられない。
練習時間の半分が過ぎた所で、10分間の休憩タイム。
2、3年生達は、徐ろにデッキの周りに集まった。
ちなみに、このみと七海には、後半も見る約束を取り付けた上でジュースを渡し、2人でのんびりしてもらっている。ずっと上級生が張り付いていては休めないだろうという気遣いだ。
「で、どうだ? あの子達の様子は?」
小声だが真っ先に切り出したのは、やはり山勢であった。
「ショートヘアの浜崎さんは、結構乗り気じゃないかな。会話もするし、踊りについての質問もしてくれるから」
「ただ、甲斐さんは……あ、髪の長い子の方ですけど、そっちはちょっと微妙ですね~」
「2人は中学からの友達らしいわ。大人しい甲斐さんが元気な浜崎さんに連れられて来た、って感じね」
1年生の相手をした不二井、麦尾、楓が、1年生の特徴と感想を順番に述べる。
「乗り気なら良いし、大人しいなら流されるだろ―から、後半見てもらいながら、勢いで名簿に名前書いてもらっちゃえばいーんじゃないかっ?」
「部長、それやって去年失敗したのを、もう忘れたの?」
ボブカットの髪をかき上げながら、楓は、山勢の案を即却下した。
実は昨年――つまり麦尾達の代を勧誘した時、最初の頃は勢いで入部した女子が2名ほどいたのだ。
しかし、色々あって結果的に途中退部してしまったのである。
「今年は何としても1年生、それも女子を確保しないといけないからな。澤登、部長が不用意に1年生に近付かないように見張っとけ。思いつきで余計な事されてたまるか」
「(コクリ)」
鍋屋の指示に、澤登は首肯で応じた。
そのやり取りを見ていた山勢以外の上級生達は、(部長、遂に危険物判定……)と心の中で溜め息を付いた。
少しだらけた空気が流れたものの、場は、「さて」と言う楓の声で元に戻る。
……筈だったが。
「じゃあ、あの可愛い子達をどうやって怯えさせずに捕獲しようかしらね。うっふっふっふっふっ」
「「「「「オマエ(先輩)が一番あぶねーよッ!!!(コクコク)」」」」」
年下女子大好きな楓が涎を拭いつつ策を練る姿に、男性陣はツッコミを入れずにはいられなかった。
良識どこ行った。
やっと1年生登場!
でも、まだ気を緩めちゃいけません。




