4月 罰ゲームなう
部室棟2階、『フォークダンス部』部室。
16畳窓付きのその部屋には、放課後らしく西日が差し込んでいた。
内装は至ってシンプルで、歴代の資料・アルバム・衣装・音源等などが収められた薄型だが幅広のロッカーと、男子用・女子用に分かれた荷物置き場――と言う名のカラーボックス――が壁際に並んでおり、残りのスペースの中央には、並べて置かれた長机×2台と、それをコの字に取り囲む形で3人掛けベンチが配置されている。
現在、そのベンチには制服姿の男子5人、女子1人が妙に姿勢正しく座っていた。
けれども、全員顔色悪く項垂れている。空気も果てしなくどんよりだ。
それもその筈。彼らは“ベンチの上で1時間正座の刑”を食らっている真っ最中だったのである。
「……もう、無理だぁぁ~~~ッ!!」
突如、窓を背にしたお誕生日席ど真ん中に座っていた、“部長”である3年の山勢数馬が、短い髪を掻き毟りながら勢い良く立ち上がった。
だが、いきなり動いた事で両足を蝕んでいた痺れが激痛へと変わり、その為バランスを崩した183センチメートルの体は、ドッターン! と大きな音を立ててコンクリート床に落ちた。
「○×ッ▲□~~~~~~ッッ!!」
声にならない悲鳴を挙げて悶絶する、山勢。淀み無い熱血バカっぷりである。
そんな彼へと一斉に視線を向けた部員達は、辛い表情の中に呆れの色をたっぷりと浮かべていた。
「バカだバカだとは思っていたが……本当にバカだな」
皆の心の声を代弁したのは、副部長的立場に当たる“指導”の鍋屋岳史。
1年の頃から山勢の尻拭いをさせられている上、クール眼鏡キャラを地で行く彼の言葉に、優しさなど皆無である。
「でもまぁ、『もう無理』ってトコロは、激しく同意するよ」
爽やかイケメンな不二井伸行は、苦笑しつつ一応のフォローを入れた。
流石は、他校や大学・社会人サークルとの窓口を担う“渉外”。こちらは如才が無い。
「……って、今はそんな事言ってる場合じゃないでしょ」
“会計”と書いて“フォークダンス部の良識”と呼ばれる才媛、澄田楓の一言が、全員の表情に緊張感を蘇らせた。
そして、2コマぶち抜きの勢いで叫んだ。
「私達が考えなきゃいけないのは、この状態の原因にして、部最大の問題……もうすぐゴールデンウィークだって言うのに、新入部員を1人も確保出来てないって事よッ!!」
わーお、そりゃお仕置きもされるわ。
とりあえずは、3年生全員登場。