第一話 ⑧
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君塚と駅前で別れ、家路をたどる。
「あ、解……」
家の前の壁にもたれて立っていたのは三谷だった。ばっちりと目が合う。もしかして、俺の帰りを待っていたのか?
「……三谷」
お互いに名を呼び合う。微妙な気まずさが漂う。
「あのさ……」
さきほどの君塚の笑顔を思い出す。大丈夫。
「もう気づいてると思うけど、俺、オタクなんだよ」
「……うん」
「三谷がそういうの嫌いなのも、知ってる」
「……うん」
「でも、好きなものはやっぱ好きだ。誰がなんと言おうと」
「そっか」
三谷は静かに頷く。
「私もね、好きなものは好き。例えそれがどんなに理解できなくても」
どこか意味深な言い方をする三谷。
「だから、頭ごなしに否定するようなこと言って……ごめんなさい」
三谷は深々と頭を下げた。
「そんなに頭下げられたら、なんかこっちが申し訳ないよ……それに、待っててくれたんだろ? 俺と仲直りするために」
「……うん」
「ありがとう。それだけで嬉しい」
最初にオタバレした時、三谷にはもう嫌われてしまって、元には戻れないと思った。だけど、こうして俺の帰りを待っていてくれて、素直に俺の話を聞いてくれた。
「また、明日から一緒に登校しようぜ! な?」
「……うん!」
三谷は屈託のない笑顔で頷いた。