最終話
最終話です。。
ここまでありがとうございました!
最終話
あの日を境に、君塚へのいじめは激減した。
もしかしたら、これもまた俺が作り出した「空気」なのかもしれない。
君塚をいじめるのは間違っているという風潮。みんな止めたから自分もやめる。
そんな事を考えると、本質的な解決にはなっていないのではないかと言う気さえしてくる。
けれど……
「美味しい! 新作の羊肉たこ焼き最高に美味しいわ!」
君塚の笑顔を見れたなら、小さなことはもういいかなって気がしてくる。
「相変わらず意味不明なもの好きだよな……君塚って」
今、俺たちは宮部さんの店でカイパーティーをしている。
なんでも、宮部さんはサンストーンさんの勧誘でキングダム王国民になり、そして、たこ焼きと羊肉のコラボということでたこ焼きにカイ(サンストーンさんのペットに羊)の肉を入れているのだ。
「うむ。うまいな。しかし、羊とヤギの違いってなんだ?」
「会長。まったく別の生き物ですよ」
カイパーティーには、会長と副会長も来ている。
「美味しいでショウ!? カイの肉は最高級デスので!」
「サンストーンちゃん! これレギュラーメニューにせんか?」
「いいデスね!」
などと、宮部さんとサンストーンさんもいて盛り上がっている。
「ねぇ、須藤君」
「ん?」
俺の向かいに座る君塚が、たこ焼きを食べる手を止めて言った。
「言葉では伝えきれないけれど……あなたには感謝してる。ありがとう。本当に。こんな私を助けてくれて……」
「君塚……」
「あの時、須藤君が私を肯定してくれて……好きだって言ってくれて、とっても嬉しかった。これまで誰にどう思われようがどうだっていい。そう思ってた。けれど、あなただけは別。あなたに嫌われると思うと震えるほど不安になるし、好きって言われるとふわふわするくらい幸せな気持ちになるの」
「……」
「私、あなたの事が好き。心の底から大好き」
「――!」
君塚の言葉に、俺の心臓は飛び跳ねる。
「それとこれ、あなたに」
少し頬を赤くして、君塚は俺に小さな紙袋を手渡す。
「開けていいか?」
「ええ」
開けると、それは以前君塚にプレゼントした『魔法少女☆メロ』の登場人物、主人公のメロのパートナー、イブのストラップだった。
「これ……」
「ええ。前に行ったゲームセンターで取って来たの」
「そう、なんだ。その……ありがとう」
「その……あなたと、お揃いで付けたくて」
「え……」
やばい。やばい。
心臓がどうにかなりそうなくらいの速度で脈打つ。
俺は震える手でストラップを自分の鞄に付ける。
「須藤君の答えを聞かせて欲しい」
君塚が真っ直ぐに俺を見つめてくる。
俺の答え。
「……」
少し間を置き、君塚の目を見つめ返す。
小さく息を吸い、声を出す。
「俺も、君塚の事、大好きだ」
そう言うと、君塚の瞳は潤み、煌めき、そして零れた。
「君塚っ!?」
「ごめんなさい……まさか想いが通じるなんて……嬉しくてっ……」
「……そっか」
急に涙するから少し驚いたけれど、良かった。
「本当に、私でいいの?」
「君塚じゃないと、ダメなんだ」
「私、変だから、これからもたくさん迷惑かけるわよ……?」
「迷惑だなんて思わない。全部、君塚と一緒なら楽しいよ」
少し語気を強くして、素直な気持ちを君塚にぶつける。
「……こんな私がいいなんて、本当、物好きね。あなたって」
「それはお互い様だろ?」
そう言ってほほ笑みあう。
「ひゅーひゅー」
後ろでサンストーンさんが冷やかすように言う。
そう言えば、周りに人がいたことをすっかり忘れていた。
「リア充デスね!」
「アツアツやなぁ~、若いってええわぁ」
「む。君塚に先を越されたか……」
「会長には私がいますよ?」
などと、みんな騒いでいる。
「ちょっと、からかわないで下さいよ!」
急に恥ずかしくなり、言う。
「いいじゃない。せっかく恋人になれたんだもの。熱く激しく艶めかしい所を見せつけてやりましょう」
「さっきまでの乙女モードどこいったの!?」
こんな楽しい毎日が、いつまでも続きますように。
そう願いながら、俺はいつものように全力で君塚にツッコミを入れた。
おわり
これにて、『トリックスターな君塚夜明と彼女のジレンマな思考回路』は終了です。ここまで読んでくださって本当にありがとうございました。ここまで連載できたのも、読者の皆様あってこそだと感じております。
感想、評価等頂けると今後の創作活動の大きな糧となります。よろしければ是非。
これまでありがとうございました! 無事良生




