第二話 ③
5
サンストーンさんの家は学校から徒歩で15分ほどのところにあった。
「普通の一軒家だな……」
もっとこう……民族的で個性的なのを想像していたので逆に驚いてしまう。
「さぁさぁ、こちらへ!」
サンストーンさんが家の扉の前で手をこまねく。俺は遠慮がちに、君塚は堂々と扉の前に立った。
「鍵穴がないな」
扉はまるで自動ドアのようにまっ平らで鍵穴や取っ手はついていない。
「この扉は、合言葉で開くのデス!」
「合言葉……?」
俺が疑問に思っていると、扉から音声が聞こえた。
『アイコトバハ?』
妙な電子音だ。それを聞いたサンストーンさんが一歩前に出る。
「可愛さ余って憎さ百倍!」
『トビラ、ヒラキマス』
ウィーーンと音を立てて扉が開く。てか、合言葉なんでそれにしたんだよ……
サンストーンさんはスタスタと中に入って行く。俺と君塚もそれに続いた。
「内装は……普通だな」
家の中をきょろきょろ見渡すも、これと言っておかしい所は見当たらない。
そう思っていると……
「めぇぇぇぇぇぇぇ」
羊がいた。
「え!? ちょっと、家の中に羊いるけど!?」
「あれはペットのカイデス!」
「カイって羊だったのか! つかなんで羊飼ってるんだよ……あと、あえて言わなかったけどさっきの合言葉もなんだよ!」
「須藤君。知らないの? キングダム王国では一家に一匹羊。そして扉のロックが合言葉ってのは有名よ?」
「逆になんでお前は知ってるんだよ……」
君塚の無駄な博識っぷりに驚いてしまう。
「合言葉ロックも食用羊も日本にはあまりなくて……調達に苦労しまシタ!」
ちょっと困った表情で「えへへ」と笑うサンストーンさん。
「今さらっと笑顔で凄いこと言ったよな! この羊のカイ君のこと食用だって言ったよな!?」
「須藤君……大人になりなさい。世の中は食物連鎖で出来上がっているのよ」
「いや、そうだけど……」
決して食物連鎖に不満があるわけじゃないんだ。自分と同じ名前の羊が食べられてしまうというのに抵抗を覚えるのだ。
「今度、お二人ともカイパーティーにお呼びしマスね!」
「カイパーティーってなんだよ! なんでホットケーキパーティーみたいな軽いノリで言ってるんだよ! それ絶対食べるヤツだろ!」
全力でツッコミを入れる俺の横で君塚は「ラム肉…マトン肉……いいわね」とか言って唾液をすすった。
「ワタシの部屋はこっちデスよ~。あぁ、君塚サン、その扉は触っちゃいけまセンよ!」
「あら、ごめんなさい。でも、何か大切な物でも入ってるのかしら?」
「パパの部屋デス! 今日も中でアニメ見てるデス!」
「……そう」
同情するような目で扉を見つめる君塚。そう言えば、転校生紹介の時に父親は自宅警備員だって言ってたけどマジだったんだな……
「ところで……皆サンのパパは何をしてる人なんデスか?」
「俺のとこは普通の営業マンだよ」
特に面白味もない話なのでさらっと答える。
「私の父は弁護士をやっているわ」
「へー、すごいな……」
君塚の話に頷く。弁護士なんて特殊な職業の父親を持ったから、君塚はこんな変わり者に育ったのかもしれない……そんなことを考えているとサンストーンさんの部屋の前に到着した。
テンション上げてくぞー!




