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夢オチ。あなたも人生やりなおせたらなぁ~ なんて思うことありませんか?
そんな話です。よかったら、あなたの感想なんかをいただけるとうれしいな。
とりあえず、不定期に連載予定
『その悪夢おわらせませんか? あなたの人生リセットしましょう!』
俺が今、手にしているチラシには、そうデカデカと書かれている。
できるだけ遠くへ逃げようとやってきた駅前の広場。何人かチラシやティッシュ配りの若いヤツらが立っていたが、俺は急いでいた。どれにも興味が惹かれなかったし、受けとろうなんて気もさらさらなかった。
なのに、俺の手の中にはそのチラシがいつの間にか握らされている。受け取った覚えがないというのに・・・・・・
俺は首をフリフリ先を進んだ。やがて、改札の建屋の前でピタリと立ち止まる。妙な胸騒ぎを覚えたのだ。その胸騒ぎにしたがって、近くの柱の陰にそっと身を寄せる。柱の陰から覗いてみると、
いたっ!
改札口の端、側壁に寄りかかるようにして、改札を通り抜けようとしている人間に眼を光らせている目つきの悪い男がいる。ヤツらの仲間だ!
俺を探しているに違いない。
だから、今ここを通り抜けることはできない。
俺はヤツらに見つからないように、その場できびすを返し、もと来た道を戻り始めた。
俺のいうヤツらとは、この町のヤクザものたちだ。
5年前、勤めていた会社が破綻した。世界でも名の知れた古い歴史を持つ大会社だったというのに、こうなるときはあっけないものだった。
職を失い、路頭に迷うことになった俺は借金をして、この町で小さな雑貨店を始めた。
はじめのうちこそ、順調に売り上げを伸ばしていたのだが、一年後、近所に大型スーパーが進出してきたのが運の尽きだった。
あっという間に客足が途絶え、閉店に追い込まれてしまった。
俺の手元に残ったのは、巨額の借金だけ。残ったものをすべて売り払っても利子すら返せなかった。
そんな状況では、家族から愛想を尽かされるのも仕方がないこと。俺は、一人だけで返す当てもない多額の借金を抱え、この町で生きていくしかなかった。
そんなときだ。ヤツらが俺に声をかけてきたのは。
一晩で俺の背負った借金を全部返済できる方法があるという。
バカな話だ。そんなうまい話など、この世にあるはずもない。なのに、そのとき、俺はその話にホイホイと飛びついてしまったのだった。そのときの俺はどうかしていたと言うしかない。
で、ヤツらにつれらて行った先が古い雑居ビルの一室。そこでは、妙な熱気のこもった眼で数人の男たちがトランプのカードとにらめっこしていた。そう、賭博をしていたのだ。
もともと、賭け事自体は嫌いな方じゃない。サラリーマン時代には、同僚たちと競馬場へ通い、空いた時間にはパチンコ屋に通い詰めていた。
血が騒いだ。
気がついたときには、俺もカードを手に取り、賭けていた。
はじめのうちこそ、ツキがあり、俺は大いに勝っていた。だが、賭け事なんて、そうそうツキが続くもんじゃない。あっという間に手持ちの金が底を尽き、ヤツらに言われるまま借用書にサインして、全額をつぎ込んだ。そして、それすらもすぐになくなった。
ヤツらは舌なめずりしながら俺を別室へと連れ込んだ。そして、その借用書に書いてある内容を読み上げた。
期限以内に借金を返済できないなら、俺の臓器を売るという内容だった。
もちろん、もともと多額の借金を背負っているこの身。この新たな借金を返済できるあてなんかなにもない。
そうこうするうちに、カネを用意することもできずに期限が近づいてくる。
このままでは、ヤツらに身柄を押さえられ、臓器を抜かれる。
俺は絶望した。そして、期日前日、とうとう逃げ出すことにしたのだ。
できるだけ遠くへ、ヤツらが追って来られない場所へ。
そうして、駅まできたのだが、ヤツらの手が既に回っていたのだった。
俺は途方に暮れながら、もと来た道を引き返していた。
――カサッ
気がつくと、まだあのチラシが俺の手の中にある。
途中、ゴミ箱にでも捨てようと思っていたのだが、ヤツらの仲間を見つけて、それどころじゃなかったのだ。
俺は、もう一度、その文面に視線を向けた。
ふと、隅の方に描かれた簡単な地図が眼に飛び込む。
今いる場所の近くだ。
俺には、もう行くところはない。そして、この悪夢のような現実から逃れたい。
俺の足は自然とその地図の指し示す場所へ向かった。
雑居ビル裏のゴミゴミとした路地奥。ビニール製の黒い幕一つで外界と区切られた区画。そこはそんなところだった。
俺は、戸惑いながら、その幕の端に空けられた入り口に架かる布をめくった。
中は、光に溢れていた。
路地の奥とは思えない、立派な家具がいくつかおかれており、床はフカフカの絨毯で覆われ、温かい空気が俺を迎える。
「いらっしゃいませ。夢オチ師・保佐津事務所へようこそ」
中から、やたらと爽やかな声で10代後半ぐらいの少年が俺に声をかける。しつこいぐらいに爽やかな満面の笑みを浮かべながら。
「このチラシを見てきたのだけど?」
「ああ、はい。ここであってますよ」
少年は、俺が掲げたチラシに一瞥もくれることなく、大きくうなずく。
「そんなところに立っているのもなんですから、どうぞ中へお入りになってください」
少年の勧めるままに中に入り、俺には価値が分からないが高価そうにも見える椅子に腰を下ろす。
「お飲み物など、いかがですか?」
そういいながら、少年はどこからか茶器を運んできて、俺の前に芳しい香りが立つ紅茶のカップを並べた。
少年は、そのままテーブルを挟んだ向かいに座り、手をあごの下に組んで、微笑みかけてくる。
「では、ご依頼をお伺いいたしましょう」
脳裏に、なぜこんな子供に今の俺が置かれている苦境を話さなければいけないのか、話したところでなにになるというのか、と、当然の疑問が湧いてはいた。だが、どこかにストレスでも溜まっていたのだろう。だれかに俺が置かれている状況を話して、すこしは気が楽になりたいという気持ちが急激に膨らんでくる。だから、次に気がついたときには、洗いざらいを話し終えたところだった。
その少年は心からの痛ましそうな表情を浮かべて、一言も口を挟まず俺の話に耳を傾けていた。
「そうですか、それは、大変でしたね」
やがて、そう一言だけもらして黙り込んだ。
ため息を一つつく。こんな少年に話したところでせんないことだと最初から分かっていたのに。なのに、なぜこんな話をしたのだろうか?
考えてみると不思議なことだ。
しゃべりつづけだったので、ノドが渇いている。俺はとっくにぬるくなった紅茶をノドに流し込んだ。
さて、すこしは気分も晴れたし、そろそろ逃亡の続きをするか。
「ごちそうさん、じゃ、俺そろそろ・・・・・・」
「ぐはっ! きゃぁああああ!」
突然、奥の装飾過剰な長いすの陰から悲鳴が上がる。次の瞬間、長いすの陰から誰かが飛び跳ねるようにして体を起こした。
小学生にも見えるような小柄な女。少女。ただ、胸の大きさだけは、大人のそれであり、決して小学生のものではない。少女の顔はフランス人形のように整い、その身につけているゴスロリなドレスとあいまって、幻想的な美しさをかもし出している。だが、上半身を起こした少女は、悲鳴を上げ続けるばかりで一向にその悲鳴を納める気配もない。
「きゃぁああああ!」
俺はその脳天を突き抜けるような悲鳴に耳をふさぐ。頭がガンガンする。
一方、目の前の少年は、その悲鳴に慣れているのか、顔をしかめることもせず、最初に見たような爽やかな笑みをいまだに維持し続けている。
やがて、少女は悲鳴を上げるのを止め、長いすの上で深呼吸した。そして、
「あ、こ、ここは・・・・・・ ハッ、今の夢? なんて非道な・・・・・・ お、お兄ぃ? お兄ぃ?」
その美しい顔に翳をかざしながら、なにかを呟いていたが、ハッと顔をあげ、長いすの背越しに、俺たちの方を見る。
「ああ、文殊、起きたね」
「弥勒兄ぃ。・・・・・・お、お客さん?」
「ああ、そうだ、今、依頼の内容を聞いていたところだ」
「そ、そう・・・・・・」
少女は、目の前の少年に話をしながら、ずぶずぶと沈みこむようにして、座っている長いすの背の向こうへ隠れていく。
「あ、妹は、人見知りなもので、すみませんね」
少年はそういって、ほんのすこしだけ笑みに苦笑を交えた。
そんなことより、依頼? なにを言っているんだ、この少年は? 俺がなにを依頼したっていうんだ?
怪訝に思っていると、突然、頭がしびれるような感覚に襲われる。まぶたが重くなる。頭にかかる重力が倍加する。思考にもやがかかる・・・・・・
こ、これは!
さ、さては、さっき口にした紅茶に、眠り薬・・・・・・
・・・・・・
「グハッ!」
俺は、掛け布団と毛布を跳ね飛ばし、上半身をおこした。
さっきの少年と少女はヤツらの一味か! 俺を眠らせて、その間に・・・・・・
慌てて、自分の体をさわった。やわらかいパジャマの生地をとおして、腹の辺りを撫で回す。撫で回す。撫で回す・・・・・・
ない! とくに、傷跡のようなものも、痛みも、なにもない。
エッ? パジャマ? パジャマ! な、なんで、俺は今、パジャマなんて・・・・・・
俺は逃亡の途中だった。パジャマなんか着ていたはずは・・・・・・!
それに、ここ、この部屋は、さっきの路地奥の少年が事務所と称していた場所じゃない。しかも、この部屋には見覚えがある! この部屋は・・・・・・俺が大学時代に住んでいた部屋だ!
な、なんでだ? どうなっているんだ?
不意に記憶がよみがえる。俺が寝入る前の記憶・・・・・・のはずだ。あの少年の事務所を訪問したってヤツじゃなくて、もっと別の記憶。
昨日、俺は、二つのうれしい知らせを受けた。
この一年間、就職活動であちこち駈けずり回っていたが、ついに二つの会社から内定をもらったのだ。この一年間の苦労がついに報われたのだった。
俺は興奮で寝付けず、寝巻きのまま、祝勝会気分で酒を浴びるように飲み、そのまま眠ってしまった。
まだ、就職が決まっていない大学の仲間たちには申し訳ないが、一足先にあの胃に穴があくような不安地獄からおさらばだ。これぐらい羽目を外すのも、許されるべきだろう。
ふふふ。内定か。しかも、二社から同時に・・・・・・
あはははは。
この世の春の気分だ。まるで、夢見心地だ!
夢見心地、夢、ユメ・・・・・・夢!
一瞬、脳裏にあの少年の笑顔が浮かぶ。少女の幻の悲鳴が耳を打つ。
夢だったんだよな?
俺が悪夢のような転落人生を歩んでヤクザものたちに追われるなんて・・・・・・
・・・・・・
――カサッ
紙がこすれる音が足元から聞こえてきた。なにかの書類を踏んづけているようだ。
俺は足を上げ、その紙を拾い上げる。
『その悪夢おわらせませんか? あなたの人生リセットしましょう!』
体がガタガタ震え始めた。
ゆ、夢じゃない! あれは、夢なんかじゃなかったんだ!
俺は、自分の体を抱くようにして、その場にうずくまった。震え続けたまま。
どれだけの時間が経ったのだろうか?
ふっと気がつく。
今は、俺は・・・・・・まだ就職前の大学生だ。あの未来の俺じゃない。
俺は、俺は・・・・・・ 俺は、人生をまたやり直しているのだ!
このチラシにも書いてあるように、人生リセットしたのだ!
「はははははは、はははははははは」
力ない笑い声を上げるしかなかった。
俺の選択は周囲の人間を少なからず、驚かせた。
なにしろ、世界でも名の通った一流企業への就職を捨てて、だれもその存在を知らないような三流中小企業を選んだのだから。
もっとも、数多くの特許をもち、創業者にして野心的な社長のワンマン経営のもと、毎年300%を超える成長を続けてきた企業である。
俺はその企業に就職し、バリバリと働いた。
そのおかげか、社長に気に入られて、その一人娘の婿に迎えられ、経営幹部に名を連ねるようになるまで、入社から5年とかからなかった。
しかも、それから、さらに3年が経ったときには、海外工場の視察のために社長が乗った飛行機が墜落し、社長が亡くなって、その後継者に俺が納まるなんてことにもなった。
俺は30目前にして、業界では中堅とはいえ成長著しい会社の社長になった。
社長になってからも会社の成長は続き、ついには上場まで果たした。俺の名前は、若く有能な経営者として、様々な新聞や雑誌に取り上げられ、テレビ番組で特集を組まれ、日本中でもっとも有名な若手経営者と評されるようになっていた。
本当に、本当に、とんとん拍子の人生だった。あの転落人生とは大違いだった。
あのチラシにしたがって、あの少年の事務所を訪ねてよかった。俺は心からそう思っていた。
けれど、なにごとも好事魔多しである。
あるとき、会社の監査で俺の右腕として眼をかけていたヤツが会社のカネを横領していることが分かった。
俺は、そいつの言い分など聞かず、さっさと警察へ突き出してやった。
そいつが警察の追及でそれまでに会社で行っていた悪事を次々告白していったのまではよかったのだが、それ以外のこともリークしやがった。
そう、俺が会社の帳簿を操作して、粉飾決算を行っているだとか、様々な手段を駆使して、脱税を行っているだとか、カネに汚い政治家や官僚たちとつるんで汚職を繰り返しているだとか・・・・・・
根も葉もないことを・・・・・・ と言いたいところだが、あいにく、そいつが警察に漏らしたことは、すべて事実だった。
当然、俺も警察の取調べを受け、会社や自宅にも捜査員たちが押しかけ、俺の評判は地に落ちた。
結局、俺の会社が倒産するのに、それから1年もかからなかった。
俺は、数々の容疑で起訴され、大損をした全国の元株主たちから告訴された。
く、くそー! あの野郎! 今まで散々眼をかけてやっていたのに!
俺は歯噛みしつづける毎日を送るのだった。
ある日、多額の保釈金を払って、つかの間の自由を得、自宅にもどっていた俺は、古い手帳に挟んであった古ぼけたチラシを見つけた。もう紙はボロボロで、印刷されていた文字はかすれて読みづらくなっている。
だが、書いてあることは、まだ覚えている。というか、忘れることもできない。
『その悪夢おわらせませんか? あなたの人生リセットしましょう!』
このチラシのおかげで、俺はあの悪夢のような日々から解放されたのだ。
人生リセット。
俺は、そのチラシのその部分だけを見つめ続けた。
もし、もし、また、リセットできるなら・・・・・・
もし、あいつを採用すると決めたときまで、時間を戻すことができるなら・・・・・・
俺は、いてもたってもいられなくて、あの路地をめざした。
そして、あの黒いビニール製の幕をめぐらした事務所を発見した。
入り口の布をめくって中をのぞく。
いたっ!
あの少年が、俺の方を見ながら、前に見たのと同じ爽やかな笑顔を浮かべて立っていた。
「やあ、いらっしゃい。また、来ましたね」
「お、俺を覚えているのか?」
「はい、もちろん」
少年は、大きくうなずき、俺の名前を呼ぶ。
「どうぞ、中へお入りになられてください」
「あ、ああ・・・・・・」
俺は、中に入って、以前と同じように椅子に腰掛ける。それを待っていたように、少年が芳しい香りの立つ紅茶のカップを目の前に置く。
「さて、ご依頼を承りましょうか?」
その少年に促されて、前回ここに来た後、大学時代にもどり、今の会社に入って、そして、今、どのような立場になっているかを、その少年に正直に話した。もちろん、あの俺を裏切ったヤツのことをあしざまにののしるのも忘れない。
少年は、俺の話に適度な相づちを打ちながら黙って耳を傾けていた。そして、
「そうですか。それはお困りでしょう」
「ああ・・・・・・」
俺は、期待を込めて、その少年を見つめ返す。
少年は、爽やかな笑顔を浮かべたまま、俺の視線を柔らかく受け止めていた。
と、
「ぐはっ! きゃぁあああああ!」
例の少女が長いすの向こうで弾かれたように起き上がる。
「きゃぁああああああ!」
盛大に悲鳴を上げ続ける。俺は、耳をふさぎながら、その様子を冷静に観察し続けた。
やがて、少女の悲鳴が途切れ、こちらへ視線を向けてくる。
「弥勒兄ぃ、お客さん?」
「ああ、そうだよ」
「私、また、ひどい夢を見ていたみたい。怖かったよぉ」
「ああ、大丈夫だよ。それは全部夢だから。怖い夢を見ていただけなんだから」
「お兄ぃ・・・・・・」
眼を潤ませる少女を励ますように少年は何度もうなづいていた。
それは、とてもほほえましい光景だった。ゴスロリ美少女と爽やかスマイルの少年兄妹の掛け合い。まるで、一幅の絵のような光景。普通だったら、その光景に見とれているだろうが、今の俺はそんな場合ではない。今度、人生をリセットしたら、あいつを雇うのを止めにして、破滅の芽を事前に摘んでおかなければ。そして、今度は、もっと完璧にばれないように粉飾を行い、脱税し、汚職を成し遂げなければ。なんとしてでも。
そして、俺の意識が暗転した。
「ハッ! ここは・・・・・・」
俺は、壊れかけの古ぼけた椅子に腰掛け、薄汚れたテーブルにもたれるようにして、眠っていたようだ。
周囲はなにもないゴミゴミした場所。左右両側には打ちっぱなしのコンクリートの壁が迫り、細長い通路となってコンクリートで固めた地面が続いている。上を見上げると、細長く切り取られた空が見える。 つまり、ここは路地だ。
なぜ、俺は、こんなところで寝入っていたのだ?
いまひとつ思考がはっきりしない。頭を一つふる。
あ、そうだ、あの少年は? あの少女は?
周囲を見回すが、どこにもその姿はない。
どういうことだ? なぜ、こんな? 俺は人生をリセットしたのじゃないのか? あの少年のおかげで、俺は、またやり直したのでは?
路地を風が吹き抜ける。
なにかのチラシが風に吹き飛ばされて、俺の足元に滑り込んできた。ここに放置されてずい分時間が経っているのか、すでにボロボロで書いてある文字もかすれてほとんど判別できない。
拾い上げ、なんとか、読み取ろうとして、俺はそこに書いてある文字に見覚えがあることに気がついた。
『その悪夢おわらせませんか? あなたの人生リセットしましょう!』
こ、これは・・・・・・!
俺は路地を歩き始めた。混乱しながら、おそらく出口があると勘が告げる方へ。
やがて、大きな通りと交差する出口へついた。
通りに出て、途方に暮れていたが、とりあえず歩きだそうとした途端、だれかが俺の肩に腕を回してくる。
「よぉ! 元気にしてたかい? そろそろ期限だがカネはできたか?」
ヤクザものが、俺の首に腕を回していた。反対側にもその仲間がいる。逃げられない!
「もしカネが用意できてないんなら、このままちょっとオレたちと一緒に来てもらおうか。なあに、そこの病院までだ」
この作品は、ブログ(『恋とか、愛とか、その他もろもろ・・・・・・』 http://loveetc.seesaa.net/ )の方とも同時掲載です。
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