表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新たなる世界へ  作者: パルス


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/42

第17話 「シルヴィアの双剣と、バルドへの武器依頼」


朝、シェルターの外で薪を割っていると、リリアが元気いっぱいに駆け寄ってきた。

「お兄ちゃん! シルヴィアさん、もうほとんど元気みたいだよ!

 今日は軽い依頼に出かけて、みんなの連携を確認しようよ!」

リックは斧を置いて振り返ると、シルヴィアがエレノアに支えられながら外に出てくる姿が見えた。

彼女の足取りはまだ少し慎重だったが、昨日より明らかにしっかりしていて、紫の瞳にも力が戻っていた。

シルヴィアは少し照れくさそうに微笑んだ。

「……おはようございます。

 今日は体がだいぶ軽いです。

 皆さんと一緒に、少し動いてみたいと思います」

リックは皆の顔を見回し、頷いた。

「よし、今日は軽い依頼で戦いの連携を確認しよう。

 そのついでに、バルドのところにも寄って、シルヴィアの武器と防具の作成を正式に依頼する」

シルヴィアは少し驚いた様子で目を丸くした。

「……私のために……武器と防具まで?

 まだ完治したわけではないのに……」

リックは優しく微笑んだ。

「もうほぼ完治だろ?

 君の双剣の動きを見たいし、ちゃんと装備を整えておきたい。

 バルドなら良いものを作ってくれるはずだ」

4人は準備を整え、まずギルドへ向かった。

ギルドの受付で職員が笑顔で声をかけてきた。

「Eランクの皆様、ちょうど良い依頼がありますよ。

 『近くの森で中型魔獣の素材を集めつつ、薬草も採取してきてください』という複合依頼です。

 危険度は低めなので、リハビリにもちょうどいいと思います」

リックは即座に受諾した。

「これならちょうどいいな。受けるよ」

森に到着すると、4人は自然と役割を分けた。

リックは大地同調で地面を安定させ、ゴーレムを召喚して前衛を固める。

エレノアは風の加護を纏い、弓を構えて索敵と遠距離援護を担当する。

彼女の指先は弓弦を引くたびに優雅に動き、風の加護が矢に乗り、正確に目標を捉えた。

リリアは炎を纏った戦鎚を振り回し、正面から魔獣を叩く。

シルヴィアは——

二本の短剣を手に、静かに森の影に溶け込んだ。

彼女の戦い方は二刀流の双剣だった。

短めの剣を左右に構え、ヴァンパイア特有の素早い身のこなしで魔獣の側面や死角から斬り込む。

剣に薄く血の魔力を纏わせることで、切れ味が増し、毒への耐性も高まっていた。

最初の魔獣(毒棘を持つ中型狼)と遭遇したとき、シルヴィアは初めて本格的に剣を振るった。

「——っ!」

二本の剣が風を切る音が響き、彼女の体が低く沈んで狼の腹を横に薙いだ。

続けてもう一本の剣が首筋を狙い、正確に急所を捉える。

動きは華麗で、しかし無駄がなく、皆が思わず息を飲むほどの速さだった。

リリアが興奮して叫んだ。

「わあ! シルヴィアさん、かっこいい!

 二本の剣、すごい速さ!」

エレノアは弓を構えたまま静かに感心した。

「夜視と素早い動き……ヴァンパイアの特性を活かした素晴らしい二刀流ですね」

リックはゴーレムで狼の動きを封じながら、シルヴィアの戦いぶりをしっかり見た。

「連携がいい。シルヴィアの双剣が側面を崩してくれると、俺たちの攻撃が通りやすいな」

戦闘の合間に薬草も効率的に採取した。

シルヴィアは休憩を挟みながらも、皆と一緒に動き、時折「この影の奥に良さそうな草があります」と夜視能力を活かして貢献した。

依頼を無事に終え、ギルドに寄って納品した後、4人はそのままバルドの工房へ向かった。

工房に着くと、バルドは大きなハンマーを振るいながら汗を流していた。

リックがシルヴィアの加入を報告し、武器・防具の作成を正式に依頼すると、バルドは作業の手を止めてじっくりとシルヴィアを見た。

「ほう……ヴァンパイアの少女か。

 二刀流の双剣を使うそうだな。

 夜の戦いに適した軽量で魔力を通しやすい武器がいいんだろう?」

シルヴィアは少し緊張しながらも、はっきりと言った。

「……はい。

 短めの双剣を二本、素早い動きに耐えられる軽さと強度をお願いします。

 防具も、動きを妨げない軽いものが理想です」

バルドは髭を撫でながら頷いた。

「わかった。

 必要な素材は前回話した通り、ムーンシルバー鉱石、ダーククリスタル、影織りの革などだ。

 上質なものを集めてくれば、良いものを打つぞ。

 リリア、お前も修行を続けろ。シルヴィアの装備を作る頃には、お前も少しは手伝えるようになっているはずだ」

リリアは目を輝かせて拳を握った。

「はい! 頑張ります!」

工房を後にした4人は、拠点に戻って今日の成果を振り返った。

夜、焚き火を囲む頃。

シルヴィアは少し疲れた様子だったが、満足げに言った。

「今日は……双剣を久しぶりに使いました。

 皆さんと一緒に戦えて、とても心強かったです。

 バルドさんに武器を依頼できたのも嬉しいです」

リックは焚き火の炎を見つめながら頷いた。

「シルヴィアの双剣、素早くて頼もしかったよ。

 連携がとても良かった。

 これからは4人で本格的に活動していこう」

エレノアが穏やかに微笑んだ。

「シルヴィアさんの動きが加わって、パーティの幅が広がりましたね」

リリアは元気よく拳を握った。

「うん! シルヴィアさんの二刀流、かっこよかった!

 次も一緒に戦おうね!」

その夜、焚き火の明かりが4人を柔らかく照らす中、皆は自然と寄り添うように近づいた。

シルヴィアはまだ完全に回復したわけではなかったが、今日の戦いで得た達成感と皆の温もりに包まれ、初めて積極的に皆の中に身を委ねた。

リックはシルヴィアの細い肩を抱き寄せ、優しく髪を撫でた。

エレノアはシルヴィアの背中にそっと手を置き、風の加護で優しい温もりを送る。

リリアはシルヴィアの胸に顔を埋めるようにくっつき、「シルヴィアさん、あったかい……」と囁いた。

シルヴィアの体はまだ少し冷たかったが、皆の体温と優しさに触れるうちに、徐々に温かくなっていった。

彼女は目を閉じ、震える息を吐きながら小さな声で言った。

「……皆さんの温もりが……こんなに心地いいなんて……

 初めてです……」

4人は言葉を少なく、ただ互いの体を重ねるように寄り添い、今日の疲れと喜びを静かに分け合った。

シルヴィアのほぼ完治した体が、皆の中でゆっくりと溶けていくような、穏やかで親密な夜だった。

リックはシルヴィアの冷たい指を自分の手で包み込みながら、心の中で思った。

(シルヴィアがほぼ完治して、双剣の二刀流も加わった……

 これで4人としての夜も、少しずつ変わっていくんだな)

遅咲きの物語は、ヴァンパイアの少女を迎え入れ、

静かに、しかし確実に家族の輪を広げていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ