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フローティング・ピープル(たゆたう人)

作者:石川安泰
最終エピソード掲載日:2026/02/01
 会社の命令によって、四人の社員がメンタルクリニックのグループセッションに集められる。名目は「心身のケア」だが、彼らはいずれもアスペルガー症候群を抱え、職場で軋轢を生み続けてきた人材だった。現代医療が彼らの特性を“治す”ことはできない。セッションの目的は、社会への適応力を高め、生きづらさを緩和することにある。しかし、その成果次第では配置換え、あるいは解雇も視野に入っている──参加者たちはそれを察している。
 彼らはいずれも社内で一定の地位にあるため、セッションは現実の身体を隠し、メタバース空間で行われる。アニメ調のアバターに身を包み、匿名性に守られたはずの場で、四人は不器用な自己開示と衝突を繰り返していく。
 参加者の一人・安原は、通院の途中で同じセッションに参加する女性・すずと現実世界で偶然出会う。仮想空間では見えなかった互いの存在が、現実で交差したことをきっかけに、二人はセッション後も個人的に連絡を取り合うようになる。
 やがて安原は、自身が父親から受けてきた虐待の記憶を、初めて他者に打ち明ける。その直後、すずの家を訪れた安原は、彼女の息子がすでに自死している事実を知る。さらに、すずがこのセッションに参加している本当の理由──彼女の会社が、メタバースと医療を結びつけた新たなビジネスチャンスを探るため、彼女を“送り込んだ”のだという現実が明らかになる。
 一方、安原が管理する子会社の重大な不手際によって、社内で進めていた計画は破綻する。抑圧されてきた感情は制御を失い、安原は取り返しのつかない衝動に飲み込まれていく。
 崩壊寸前の安原に対し、すずは突飛とも思える提案を口にする。
──契約結婚をしないか。
 合理性と感情、ビジネスと救済、仮想と現実。
 生きづらさを抱えた二人の選択は、社会の「正常さ」そのものを静かに問い直していく。
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