第6話 コルネ亭の再調査
俊とライバル店の店長との対峙を終え、二人はコルネ亭に戻ってきた。
「俊さん、ありがとう……!」
ティアは、深々と頭を下げた。彼女の目には、涙が浮かんでいる。
「いや、俺が駆けつけただけだ。お前のパン屋を守ったわけじゃない」
俊は、照れくさそうにそう言った。だが、ティアは、俊の言葉を遮り、再び頭を下げた。
「でも、俊さんがいなかったら、私は、どうすればいいか分からなかった。駆けつけてくれて、本当に、本当にありがとう……!」
ティアの言葉に、俊は静かに頷いた。
「ティア。お前が謝る必要はない。問題は、あの男の悪質な噂だ。あれをどうにかしないと、お客様は戻ってこない」
「うん……。でも、どうすれば……」
「大丈夫だ。俺に任せてくれ。まずは、今ある施策をさらに進化させる。そして、あの男には絶対に真似できない、コルネ亭だけの強みを作る」
俊は、そう言って微笑んだ。
そのとき、店の奥からロランとエマが出てきた。
「俊! 帰ってきたか!」
ロランが、嬉しそうに俊に声をかけた。
「パパ、ママ……!」
ティアは、二人の姿を見て、安堵のため息をついた。
「俊さん。忙しいのに、わざわざ来てくれたのね。ありがとう」
エマが、少し疲れた様子で、俊に礼を言った。
「いえ、俺のほうこそ、すみません。俺の施策に、不備があったのかもしれない」
「そんなことはない! 俊が教えてくれたおかげで、一時は店が繁盛したんだ。また、俊が来てくれて、本当に良かった!」
ロランが、力強く俊の肩を叩いた。
俊は、ご両親の言葉に、決意を新たにした。
「分かりました。俺に任せてください。コルネ亭を、必ず再建してみせます!」
俊は、テーブルに広げた羊皮紙に、次々とアイデアを書き込んでいく。ティアとロラン、そしてエマは、その様子をじっと見つめていた。
「まずは、あの男のパンとの差別化だ。『スイートクッキーブレッド』は、この店の看板商品だ。その魅力を、さらに引き出す。ネーミングをさらに工夫し、お客様が、パンに込められた想いを、より深く感じられるようにする」
「パンに込められた想い?」
「そうだ。スイートクッキーブレッドは、ロランが家族を想って作っている気持ちが込められたパンだ。その物語を、POPに書くんだ。お客様は、ただパンを買うだけでなく、その物語も一緒に買ってくれる」
ティアは、俊の言葉に、目を輝かせた。
「それから、試食販売だ。あの男は、安い値段で試食販売をしている。だが、俺たちは、もっと違うやり方で、お客様に『体験』という付加価値を与える」
俊は、そう言って、ティアに一つのアイデアを提案した。
「ただパンを配るだけじゃ、あの男の真似事になってしまう。俺たちがやるべきは、試食を『特別な体験』に変えることだ。たとえば、一口サイズのパンを試食してもらう際に、温かいお茶を添えて提供する。お客様には、単なるパンの味だけでなく、温かさと、季節の移ろいを感じてもらうんだ。そうすれば、あの男には絶対に真似できない、コルネ亭だけの強みになる」
ティアは、俊の言葉に、感嘆の声を上げた。
「すごい! それなら、あの男には絶対に真似できないわ!」
「ああ。そして、最後に、俺たちがやるべきことは、お客様との信頼関係を、より強固なものにすることだ。あの男の悪質な噂に、負けないくらいの、強い信頼関係を築くんだ」
俊は、そう言って、ティアに新たな施策を提案する。
「ポイントカードは、すでに導入済みだから、次はお客様の声をもっと積極的に集める仕組みを作ろう。店頭に、お客様が自由に意見を書ける紙と箱を設置する。お客様の意見を真摯に受け止め、それをパン作りに活かすことで、『お客様と共に成長するパン屋』というブランドイメージを確立するんだ。そして、特に良い意見があった場合は、その紙を店頭に飾らせてもらおう。お客様は、自分の意見がお店に取り入れられたり、他の人にも読まれたりすることで、より強い愛着を感じてくれるはずだ」
ティアは、俊の言葉に、深く頷いた。
「分かった! 俊さん、私、頑張るね!」
ティアの目に、再び、希望の光が宿っていた。
俊は、ティアと共に、コルネ亭の再起をかけた、新たな改革に乗り出した。
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