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異世界コンサルはじめました。~元ワーホリマーケター、商売知識で成り上がる~  作者: いたちのこてつ


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第5話 KPIツリーによる改善始動!

翌日。俊はグランツ支店の店員たちを集め、新たな会議を開いた。壁にかけられたKPIツリーを指さし、俊は力強く言い放つ。


「さて、皆。前回の改革で、店の活気と売上は劇的に向上した。だが、まだやるべきことは山積みだ。次はこのツリーの『集客』と『客単価』を上げるための施策を、一つずつ実行していくぞ!」


店員たちは、前回以上の熱意で俊の言葉に耳を傾ける。もはや、彼らは言われたことをただやるだけの人間ではなかった。自分たちの手で店が変わっていくのを目の当たりにし、その面白さを知ったのだ。


「まず、集客の施策からだ。店の前に『店頭看板』を設置する。今日から、その日の目玉商品や限定情報をそこに書くんだ」


俊はそう言って、事前に用意しておいた大きな木製の看板を指さした。


「それから、もう一つ重要なのが、『試食』だ」


「試食、ですか?」


ブレンナーが首をかしげる。


「ああ。人は、一度美味しいと感じたものは、何度でも買いたくなる。それに、試しに食べてもらうことで、新しい味に挑戦するきっかけにもなる。まだ一般的でない食品なんかは、一口食べてもらうのが一番効果的だ」


俊は、店員たちが納得したように頷くのを見て、さらに続けた。


「よし。じゃあ、まずはこの二つを徹底的にやるぞ!」


その日から、グランツ支店は新たな活気に満ちた。


店先には、その日の風向きや人通りを考慮して設置された、目を引く店頭看板が立てられた。そこには、毎日違う手書きのイラストと、店員が心を込めて書いた文字で、その日の目玉商品が紹介されている。


そして、店の入り口には試食のブースが設けられ、店員が率先して実演販売を行っていた。


「さあ、皆さん! こちらの甘い干し果物、いかがですか!」


活気ある声に、道行く人々が足を止める。


「遠い国から取り寄せた、珍しい干し果物です! まずは一口、お試しください!」


差し出された試食を口にした人々は、その味に驚き、感嘆の声を上げる。


「あら、美味しいわ! こんなに甘い干し果物、初めて食べたわ!」


試食をした人々は、そのまま店内に吸い込まれていく。店内では、接客の型を身につけた店員たちが、笑顔で客を迎える。


「いらっしゃいませ! 他にも美味しい商品がたくさんございますよ!」


客は安心して買い物を楽しみ、試食で気に入った商品はもちろん、抱き合わせで提案された商品や、導線に沿って並べられた他の商品も手に取っていく。


その日の閉店後、ブレンナーは興奮を抑えきれない様子で俊に報告した。


「俊さん! 今日の売上は、昨日をさらに上回りました!」


俊は満足げに頷く。


「だろうな。試食は、お客様に『体験』という付加価値を与え、購買意欲を掻き立てる。そして、店頭看板や広告掲示は、お客様に『情報』を提供し、来店を促す。この相乗効果は、絶大だ」


「なるほど……! たったこれだけで、こんなに変わるなんて……!」


ブレンナーの目に、再び希望の光が宿る。


俊の改革によって活気を取り戻したグランツ支店。その成功を目の当たりにしたラッドとブレンナーは、俊の次の提案に期待を寄せていた。


「次は、リピーターを増やす仕組みを作ろう」


俊の言葉に、ブレンナーが問い返す。


「リピーター、ですか?」


「ああ。リピーターを増やし、客単価をさらに上げるための施策だ。具体的には、『割引カード』と『紹介特典』を導入する。割引カードは、お客様が再び店に来る動機になる。そして、紹介特典は、お客様が自ら新しいお客様を連れてくるきっかけになる。これらの施策は、お客様に『特別感』を与え、お店との関係をより強固なものにするんだ」


ラッドは、その言葉に静かに頷いていた。


「面白いな。客と店員、そして店と客、それぞれの関係性を数値化し、それを改善していく。お前のやり方は、この街の商売の概念を根底から覆すものかもしれない」


俊は、ラッドの言葉に満足げに微笑んだ。


「その通りだ。そして、これらの施策は、まだ序の口だ。今から、お客様に『特別感』と『優越感』を感じてもらうための、特別な仕組みを話す」


俊は、事前に用意しておいた羊皮紙の束を広げた。


「これは、来店ごとに渡す、ただのポイントカードだ。1,000リルにつき1ポイントで、1枚につき20ポイントまで貯められる。最初は一般ランクで割引は一切ない。だが、これを貯めていくことで、お客様はランクアップできる」


俊は、ブレンナーに青銅でできたカードを渡した。


「このカードは『銅ランク』だ。一般ランクのポイントカードが2枚貯まったお客様に渡す。これを持っているお客様は、買い物のたびに、金額から3パーセント割引する。そして、さらにランクを上げるには……」


俊は、あらかじめ用意しておいたカードを手に取り、説明を続けた。


「ポイントカードが5枚貯まったお客様には、『銀ランク』のカードを渡す。このカードを持っていれば、買い物のたびに5パーセントの割引だ。さらに10枚で『金ランク』になり、8パーセントの割引。そして、20枚貯まったお客様には、この『白銀ランク』**のカードを渡す。このカードを持っているお客様は、買い物のたびに10パーセントの割引になる」


ブレンナーは、息をのんだ。


「そ、それは……! まさか、お客様によって区別する…と?」


「そうだ。お客様に『特別感』を与えるんだ。そして、このカードを持つお客様は、『この店を育てている』という、この上ない『喜び』と『優越感』を感じてくれるだろう。そうすることで、この店は、ただ商品を売るだけの場所ではなくなる」


俊の言葉に、ラッドは感銘を受けていた。


「……俊、お前は本当に面白い。客と店員、そして店と客、それぞれの関係性を数値化し、それを改善していく。お前のやり方は、この街の商売の概念を根底から覆すものかもしれない」


俊は微笑んだ。彼の心の中には、この商会を年間売上4億リルにまで引き上げる、明確な道筋が見えていた。


(よし。まずは、このグランツ支店で、全ての施策を成功させる。そして、そのノウハウを王都の本店や他の支店に展開していくんだ)


俊の胸に、大きな野望が燃え上がっていた。

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