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異世界コンサルはじめました。~元ワーホリマーケター、商売知識で成り上がる~  作者: いたちのこてつ


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第4話 ラッド・フォルクナー商会長の再生計画

それからの十日間は、目まぐるしく過ぎていった。


迎えた契約最終日。アランは帳簿を手に、これまでの売上を何度も確かめていた。


「……本当に、最初とは比べ物にならない数字になりました」


「お前の頑張りの結果だ」


「俊さんがいなかったら、ここまでには……」


「いや、最終的に店を回すのはお前たちだ。俺はきっかけを作っただけだ」


アランは目を伏せ、少し照れくさそうに笑った。


その日の夕方、ラッド・フォルクナーが再び店に現れた。


「約束どおり来たぜ」


扉を開け放ち、あの大きな声が響く。


「どうだ、今からでも来てくれるか?」


「ああ、問題ない」


俺が答えると、ラッドの顔がパッと明るくなった。


「よし、じゃあ詳しい話はうちの事務所でしよう。場所は王都の中央通りだ」


アランとニコラに視線を向ける。


「二人とも、これからはお前たちの番だ。困ったら遠慮なく呼べ」


「はい!」


「……必ず、また来てくださいね」


二人の返事に軽く頷き、俺はラッドの後を追った。


***


ラッドに案内されて着いたのは、王都中央通りにあるフォルクナー商会の本店だった。


店先には大きな看板が掲げられ、磨かれたガラス越しに高級そうな商品がずらりと並んでいる。だが、よく見ると通りを歩く客の足は素通りで、店内に入る者はほとんどいない。


「ここが本店だ。親父の代までは、これでも客で賑わってたんだがな……」


ラッドは頭をかきながら苦笑した。


応接室に通され、席につくと、ラッドはぽつりと切り出した。


「実はな、親父が生きてたころは、王都内に四店舗、近郊の都市に二店舗あったんだ。それが、俺が継いで二年で半分……今じゃ本店を含めて三店舗だ」


その声には悔しさよりも、どうしてこうなったのか分からないという戸惑いが滲んでいた。


「なんでそんなに減ったんだ?」と俺が問うと、ラッドは首を傾げる。


「いやあ……売れそうな物を仕入れてるつもりなんだがな。気づくと全然売れなくてさ」


「まあ詳しい話は、在庫と帳簿を見てもらえば早いだろう。明日からでも動けるか?」


「動ける」


「助かるぜ」


ラッドはガハハと笑い、応接室の扉を開けた。


「まずは店の中を案内する。今の状態を全部見てくれ」


棚に並ぶ商品を一通り見て回る。


分厚い毛織物のマント、脂の多い干し肉、保存のきく根菜類……どれも、寒さの厳しい地方では重宝されるものばかりだ。


だが、ここは温暖な気候の王都。外はまだ秋の陽気で、薄手の上着一枚あれば十分な季節だ。


「……これ、本当に売れてるのか?」


思わず口にすると、ラッドは胸を張った。


「おう、北の方じゃ飛ぶように売れるんだ。だから王都でもいけると思ったんだが、なぜかサッパリでな」


(そりゃそうだ。この時期に防寒具や脂っこい保存食なんて、需要があるわけない)


言葉にはせず、心の中でため息をつく。


このときはまだ、ラッド本人はなぜ売れないのか本気で分かっていないようだった。


「まあ、詳しい話は二階でしよう」


ラッドはそう言って、奥の階段へと向かった。


二階に上がると、広い部屋に重厚な机と帳簿の山が並んでいた。


壁際には地図や取引先の一覧らしき書類が貼られ、中央には商会の現状を示す数字がびっしりと書かれた黒板が立てかけられている。


「ここがフォルクナー商会の本拠地ってわけだ」


ラッドが椅子に腰を下ろし、俺に向かいの席を勧めた。


「で、まずは数字を見てもらおうと思ってな」


差し出された帳簿を開くと、各店舗ごとの売上や仕入れの記録が細かく並んでいる。

……だが、目を通すうちに眉が寄った。


「これ、売れてない商品の在庫がかなり溜まってるな」


「そうか?まあ多少は余ってるが、季節が変われば——」


「季節が変わる前に腐るか劣化するだろ」


ラッドが口を閉ざす。


どうやら在庫管理の甘さも問題の一つらしい。


「とりあえず、今ある在庫と、仕入れ先、売れる地域を全部洗い出そう。感覚じゃなくて数字で見る」


「数字か……正直、あんまり得意じゃねえんだが」


「大丈夫だ、俺がやる。あんたは覚える気があればいい」


ラッドはしばらく腕を組んで黙っていたが、やがて諦めたように笑った。


「わかった、任せる。どうせこのままじゃ商会が干上がっちまう」


俺は机の上の帳簿を閉じ、軽く指で叩いた。


「じゃあ今日から、まずは在庫の“見える化”から始めよう」

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