大雨の中
大雨の中、綾瀬光輝はハンドルを握っていた。高2の息子、和也を嵐の中、高校に送っていた。
「雨、ひどくなってきたから間に合わないかもな」
「別に大丈夫だよ。どうせなら休校にして欲しかったよ。バスで来てる連中はどうせ遅延で遅くなるんだから。花梨は熱出して欠席しなけりゃいけないのはある意味ラッキーだよ」
妹は昨日から発熱して高校を欠席していた。本来なら兄妹で自転車で通学していた。台風が近づいて来ており、昨晩からの大雨が、止まずに朝方になって雨足が一層強くなっていた。
(なんで本当に休校にしないんだろう、こりゃ帰りも迎えに行かないとな)
そんな事を考えながらとりとめもない会話を試みた。
「最近高校はどう?」
「普通だよ」
助手席に座った息子は面白く無さそうに答えた。
「昨日も遅くまで本読んでたみたいだな。今、何読んでるんだ?」
「別にただのラノベだよ」
一言一言が素っ気ない。
「そっか、読書もいいけどあんまり夜更かしするなよ」
「うん」
続かない会話。
(一体息子と何を話したらいいんだ。昔はもっと話をする我が子だったけど、中学2年生の頃からあまり会話をしなくなってしまい、本ばかり読むかタブレットで絵ばかり描いているようになった。こいつを送ったら、事務所に戻って、急ぎの図面と見積もり仕上げないとな。今日はこないだ頼まれたクライアントの平面計画をまとめないといけない。さてどこから手をつけよう)
息子の事は考えるのを止めて、この後の仕事の段取りを考えてしまう。
雨足が強くなり、ワイパーを最速に調整しても、前が見えないくらい、フロントガラスに雨が叩きつけてきた。ボディからのバケツの中にいるような雨音が響いてくる。何とか前方の信号を確認して、交差点に入った次の瞬間、 目の前が右側面から大きく照らされたかと思うと強い衝撃に包まれた。とっさに車がぶつかってきたということだけが判断できた。 反射的に、助手席側の息子をかばおうと息子に、覆いかぶさる形になった。 強い衝撃で 天と地が分からなくなった。
2作品目、第一話目の投稿です。
これから、どんな展開がまちかまえているのでしょうか。
次回は病院での目覚めです。