いただきます
七宝様主催『合法殺人企画』参加作品になります。クククク……。
「本当にいいの?」
もじもじしながら彼が聞く。
「うん、いいよ。食べてあげる」
私はくすっと微笑み、うなずいてあげた。
「う、嬉しい。……優しくしてね?」
そう言ってベッドに横たわった、産まれたままの姿の彼を前に、私はナイフとフォークを手に持った。
美味しそう。どこから食べてあげようかな。
やっぱり最初は唇だよね。彼の唇をナイフで切り取ると、ちゅっとキスをしてから噛りつく。
うん、甘い。とてもジューシーで、ぷるんぷるんしてる。
大好きな彼の唇だから、美味しくないわけがなかった。
次はどこにしようかな。彼の小指がかわいく立ってる。それをポキッと折って、口に運んだ。
うまっ! 骨付き鶏とポッキーを合わせたみたいな味がした。
大好きな彼の小指だから、美味しくないわけがなかった。
うー、うーと彼は苦悶の声をあげながら笑う。私はそのお腹にナイフを突き刺して、それを引いてスパッと切ると、皮をぺろぺろと剥いてあげた。
うーん、この皮、美味しい。
食パンの耳が大好物の私にはたまらない。
鼻に噛みついた。ムギッ!と横にむしり取ると、クチャクチャと咀嚼した。
ミミガーだ、これ! 鼻なのにミミガーって、面白くて素敵!
広がった血はぜんぶ舐め取った。少しでも残したらもったいない。
「美味しい? 香菜ちゃん」
彼がハァハァいいながら私に聞く。
「ぼく、美味しい?」
「美味しいよ、すごく」
お世辞じゃなく、取り出した彼の心臓をペロペロ舐めながら、私はほんとうに感動していた。
「もっと食べていい?」
「うん。グチャグチャにして!」
興奮しながら、私は彼に取りかかった。
全部食べちゃった。
骨はフードプロセッサーにかけて粉にして、あとでビスケットにすることにした。
ふー……。食べすぎた。
お腹がパンパン。
でも満足感はもっと大きかった。
これで私、彼と一つになれた。
結婚よりも強い結びつきで、彼と繋がることが出来た。
「これで私たち、死ぬまでずっと一緒だね」
口元の血を拭いながら私が言うと、
「うん。香菜ちゃんが死ぬまで……いや永遠にずっと! 二人は一つだよ」
お腹の中でたくさんの彼が幸せそうに笑った。
これでもう、彼は他の誰にも恋することはできない。誰に取られることもない。不可能だ。
これで彼は一生私のもの。