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第三話 悪夢(霊夢)との初めての対峙


 他の方のエッセイや話を読むと、やはり霊感能力には強弱だけでなく、得手不得手の個人差があるようだ。


 私は視力よりも聴覚寄りなのかもしれない。

 だから視るのは大概夢の中(トランス状態)で、現実では視えないが声だけが聞こえたりする。

 誰もいないのに、突然すぐそばから声がハッキリ聞こえたりする。

 幻聴だったらそれはそれでイヤだなあ……(;´Д`)



 高校生の頃、住んでいたアパートはいわゆる長屋タイプで、小さな裏庭を囲むように建っていた。

 夜、その裏庭側の勝手口から出たところで、いきなりホラー映画で聞くような【うぅうぅぅぅぅぅ……】――言葉にするのは難しい、コミックホラーで使われる文字で表したい――という恨めし気な声が聞こえてきてビビり上がったことがある。

 これは凄くハッキリ、傍で大きく聞こえた。


 周りを見てももちろん誰もいない。狭い裏庭の中は、窓の明かりで薄暗いが見えない事はない。

 何を言ってるのかわからなかったが、とにかくいい意味じゃないだろう。

 このちゃんと意味まで聞き取れなかったのは、私の能力が未熟だからなようだ。

 分からなくて良かったが。


 この時はどこかの家のテレビだろうと思って、そのまま銭湯に行った。

 それからである。

 寝ると金縛り、頭をグイグイ押してくる、暗闇の中バタッンギッタンギャアーの騒がしい悪夢を五日間見るようになったのは。


 こいつは反応すると気付かれてしまったのだ。

 目の前で手を振っても、まったく反応しない相手じゃつまらないからだろう。 

 まったくもって超迷惑である。


 とにかくこんな事がホンのたまにあるから、変なのが聞こえても気にしないようにしている。

 だけど奇声を発するのは、生きた人間もよくやるものだ。


 ある夕暮れ時、買い物帰りに住宅街を歩いていたら、斜め上の方から突然大きな奇声が聞こえてきた。女の人ぽかった。


 ああ、でも多分生きてる人だな、となんとなく思ったし、興味もないのでそのまま普通に行こうとした。


 だが、生きてる人が発してるからこそ、他の人にも聞こえるのである。

 私の数メートル先を歩く男性が、ビクッとして急に私の方に振り向いて来た。


 やべっ!

 私も慌てて後ろを振り返った。


 くそ~~っ、私が奇声を発してるみたいに思われちゃうじゃないかよ。まったくもって迷惑な。

 生者とわかっていても、万一のためにリアクション取りたくないのに――本当に厄介な事だ。


 実は今まであまり体験談を書かなかったのは、百物語じゃないがこういう話をすると寄って来るかもと不安があったからだ。


 しかし最近、甲斐央一様の『なにやら、不思議な話』(カクヨム版)を読んで考えをあらためされた。


 不思議な事は何も怖い事ばかりじゃない。

 それに面白がっての嫌がらせなんて、生きてようが死んでようが理不尽 極まりないっ!

 どうせ話そうが話すまいが変わらない気もする。

 結局自分の気の持ちようなのかもしれないのだ。


 甲斐様の同作にもある『柏手のように高く手を打つ』も、確かに有効な対抗手段。

 忘れていたけれども、昔テレビで――江原啓之さんだったと思うが――手を打つのは場の空気を浄化するというのを聞いた事があった。

 掃除の代わりにやるのも手だという。

 いや、掃除はしましょうよ( ̄▽ ̄;)――って人の事がまったく言えん。


 それにこういう風に書くとこで、あらためて色々考えさせられる事に気がついた。

 ただ一概に怖いだけなわけでもないのだなあと。相手を知ると怖さが薄れる。


 そういえば『エイリアン』のクリーチャーデザインで有名なH・R・ギーガーは、自分の悪夢を描いているというような事を言っていた。

 そういう不定形な不安を、具象化し、現実に引きずり出すことによって、浄化させるのだと。


 そんなわけでこの夏、ボチボチと書いてみている次第である。

 


 話を悪夢に戻すと、

 この時は霊感能力ある友人が、遠隔で力を貸してくれると頼もしいことを言ってくれた。

 そのせいかその晩の五日目の夢は、いつもの暗闇の部屋ではなく明かりがついていた。


 なんとか金縛りを解いて起き上がると、左側に畳の上から靄のようなお爺さんの頭だけが出ていた。


「爺ちゃんっ?!」

 私はつい祖父かと思って覗き込んだ。

 だっ、違うっ 別人だっ!


 後ろに飛び退くと同時に、左右の戸が開いて、両側からわらわらと白い服か着物を着た者達が入って来た。

 こんなにいやがったっ!!


 だが、友達の支えもある。負けるもんかっ!

阿毘羅吽欠(あらびうんけん)――!」

 勇気を振り絞って叫ぶように、教えてもらった真言を唱える。


 するとどうだろう。

 からかうように私を取り囲もうとして来た奴らが、急にマズいっといった感じに慌てて出ていった。


「出てけっ! もう二度と来んなっ!!」

 私は彼らが出ていた右側の戸を確認しに行った。

 すると左側の勝手口に通じる方の戸から、若い神主さんが入って来た。

 どちら様――?


「今こちらに何か来ませんでしたか?」

 その方は落ち着いた声で尋ねてきた。

「来ましたよっ、いっぱい。何なんですか、あれは?!」


「この間、雨が降りましたでしょう。その時、墓場の悪い土がここまで流れてきたんです。それと一緒に来たようです」

 そう言われて思い出した。

 あの声が聞こえた時、雨が上がったばかりで地面はまだぬかるんでいた。


 裏庭は中央に物干し場への外階段があるせいか、陽があまり当たらず、いつもジメジメしている感じだった。草地というより細かい草やコケが生える、土剥き出しの地面だった。

 ついでに言うと井戸水のポンプまであった。


 しかし墓場ってどこから? そんな近過ぎるとこ――100メートル以内にはないのだけど。

 今考えると、墓場とは言ってはいたが、正規の墓地のことではないのかもしれない。


「とにかくもう来ないでしょうねえ?」

 神主さんも来た事だし、私は少し安心した。

「……いえ、それはまだわからないです」

 ええ~~っ!? 

 それで夢が覚めた。


 反撃出来たが、なんともモヤモヤと不安が残った。

 だが次の日、友人が力強く「もう大丈夫だよ」と言ってくれた。

 おおっ、友よ、頼もしいぜっ。


 実はこの時、守護霊様や他の方達も助けに来てくれていたらしいのだ。

 でも結局は、当の本人が毅然とした気持ちでないとダメなのだろうと思う。

 

 ただ、独り怯えて布団をひっかぶっていた四日目、不気味なポルターガイストの騒音の中、

「待ってて、誰か呼んでくるっ」という若い男の子らしき声が傍で聞こえた。

 するうちすぐに誰か連れてきたらしく

 今度は「う~ん、○○でも駄目かあ……」という、中年の男性らしき声がした。


 誰だかよくわからないが、味方はいる! これはかなり心の支えになった。

 それからでの五日目の対峙であった。


 念のためにそれからしばらくは、部屋の四隅に塩を置いておいた。

 それもあってか、彼らは二度と来なかった。


 悪い奴もいれば、良い人(方)もいる。

 気がつかないが、誰にでも守ってくれる味方は結構いるものだ。

 とても有難い。


 何しろ日本には八百万の神様たち、他に精霊や自然霊、妖精さんやら色々とどこにでもいらっしゃるのだから。


 日本では妖精と言われている中には、小さなおじさんとか小さな侍の姿などの目撃談もあるくらいだし。(個人的に一寸法師はそちらの部類かとも思ってしまう)

 人間がそう勝手に分類して呼んでいるだけで、本当はもっと複雑でシンプルなのかもしれないけど、とにかく沢山いるらしい。


 中には子供みたいに脅かしたりイタズラして来るモノもいるけど、後味が悪くなければ気にしなくて大丈夫かなと思う。


 それはポルターガイストというより、グレムリン、いや、悪戯好きな妖精さんなのかもしれないからだ。

 

 妖精さんと言えるかわからないが、一番知られている例を言えば、『座敷童様』かな。

 みんな怖がるどころか、わざわざ会いに行っている。


 でもこれって、考えてみるとちょっと可笑しいよね?

 他の怪奇現象は怖がるのに、童様のはOKって(^▽^)


 まあ御利益があると思うからこそなのでしょうが、これがもし御利益がわからなかったら、やっぱりポルターガイスト扱いになっちゃうのかな。

 なんかいい加減ですなあ。


 と言っている自分もそんな輩の1人、いい加減者である……( ̄▽ ̄;)


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