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いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
96/929

094 再侵攻

「おいおい、タクトはもう女の子に迫られたのか〜。しかし、サランの見込み通りリョウがタカを射止めるとは驚いたな。まぁ、残りの二組は決定していたから今更だけど」

「リル様、私6歳なんですけど・・・・・」

「知っているよ。その割におじさん臭いジュン君に、なんなら、後二人くらい背負わせてあげようか?」

「いえ、結構です。」

突然始まった子供達のお見合いパーティ。

リルは何となくまだ増えそうな気がしていた。

そしてそれが、聖地に変化を与えると・・・・・


「リル様!遠見の部屋にお越しください。動きがありました」

サランから、お願いされて部屋に詰めてくれている女性が声をかけてくる。

彼女もサトリでルナやイバ、サランの念話を伝えてくれる。

「遂に来たか。うちの部署で出ている者はいるか?」

「数名が農園と浜の養殖場に出て、避難誘導をしています」

「間も無く『遮音の陣』発動します。発動完了」

「『遠見の陣』の術師、配置につきました。」

「では、行ってくる」

何度も繰り返し訓練してきた通りだ。


遠見の部屋では、ルナが術師を指揮していた。

「待たせた?」

「ううん。展開し終わったところよ。銀の筒が見えるだけで3本出て来ているわ」

「形状は?」

「ルース様の黒石板の映像で見ると、前回までと一緒の様ね」


「待たせたな」

ルースとイバが、転移して来た。

ゲーリンは階下で、術師を万が一の準備にあたらせている。

広場の大型白石板には同じ映像が映し出されていて、その船腹に3本の銀の筒が見える。

住民が住む自宅の白石板にも同じ画像が流れていて、全てのドアが開錠されていた。

大慌てで、風呂から上がる人もいた。

だが多くは、広場に集まり画面を見ている。

船には色々な光が煌めき、筒の横の光が黄色から青に変わった瞬間に銀の筒が船を離れた。

「落ちてくる!」

「3本だ!」

「何が起こるの?」

「怖いよ〜お母さん」

子供が、両親にしがみつく。


「あつ、燃えているぞ!」 

銀の筒が、赤く光のカーテンを纏い出した。

「燃えてしまえ!」

様々な声が上がる。


その落下の途中、赤く炎を引いていた先端部分が割れて落ちた。

同時に筒の後ろから3つ布が、飛び出してキノコの様に広がった。


「何だあれ?」

「炎が薄くなっていくぞ!」

「先が、ゆらゆらしている」


見ていた筒の奥の物の先端が割れて開いた。

「壊れた!」

歓声が上がる。

だがそこから飛び出して来たのは【黒い鳥】 

歓声は、どよめきに変わった。

「やっぱり、来やがった!」

「どこに、来るんだ!」


「1本あたり24。前回が28か32ですから減らしてますね」

タクムが見てとる。

「この周辺にはどれくらいむかってきる?」

ルースが確認させる。

「一番手前の筒の分、24全部来ますね。もう2本は海向こうの大陸の様です」



【シーグス】、【アレ】、【サイス】、【呪われた街】、【ジューア】に【黒鳥】が舞い降りて周回を始めたのだ。

そのうち【シーグス】、【アレ】の黒鳥は周回を終えた後に、こちらと反対側の領へ向かって行き、【サイス】に降りた4つのうち2つは海沿いに浜の村へ、2つは麦畑と丘の麓を辿って聖地に向かい始めた。


静まり返る人々、

「かくれんぼだね」

「そう、かくれんぼよ。声を出さないでね」

母親に言われて、子供を軽く抱く母親。

今、聖地の奥から、夫もこの子の兄と、こちらに向かって来ている。

一人で、この場にいて泣き出しそうになる子供。

その子を、(かたわら)の男が睨みつける。

引き攣り余計に泣き出しそうな子供・・・・・


「余計に泣くでしょうが?!」

近づいたライラが、その男を睨みつける。

「さぁ、こっちにおいで」

子供とその親を、映像が見えない場所へ連れて行き人形を与えた。

「見ていても見なくても結果は変わらない。大人は不安で見たいだろうが子供にとっては怖いだけ。見せない方が良い。他の子もおいで!」

そう言って、広場のひと区画を【遮音の魔道具】で締め切った。

(ミクマも用意が良い。リーファの経験なんだろうね。教えられてばっかりだ)

サトリの力で、人々を宥める。

(苦手なんだけどね。ルナの後継が育って、歌ってくれると良いのだけど・・・・・)


そして、浜の村の上空に【黒鳥】がやって来た。

(ここには、人家があった記録はない筈だが・・・・・)

それでも、肉屋の港から南の岬、岩場、北の岬の間を行き来する。

岩場の向こう側は【遮蔽】と【偽装】で崖に見せている。

表面を『馬鹿蔦』で覆わせているし、内側には全ての崖を黒い【魔絹布】をかけて置いた。

海に向かって、そそり立つ一枚の崖にしか見えないはずだ。


『ほら、ここを見てみろよ』

『何だ?』

『フリダの崖に似てないか?』

『フリダ? あぁ、そういえばそうだな。でも、海はこんなに綺麗じゃ無かったろう?』

『そうだな。でも、そのうち来てみたいな』

『何だ、お母ちゃんとのデートの場所か?』

『まぁ、そんなところだ』

『次に、行くぞ!こんなところで油売っていたのがバレたら、折角の【爵位】が無くなるぞ』

『それもそうだな。リストにも上がっていない場所でうろついたら不味いな。』


【黒鳥】が岩場を離れ高度を上げて、北の岬を越えていった。


(何も無かったか・・・・・)

遠見の部屋では、一同が固唾を飲んで見守っていた。

次は、丘の麓沿いにこちらへ向かってくる。

途中、家畜の排泄物を捨てている沼の上空で停止した。


『汚泥が底に溜まっている様だな』

『臭いんだろうな。寄りたくないな』

『人が住める訳がないよな。どうする?ガスのサンプル取っておくか?』

『いや必要ないだろう。こっちの土地に侵攻するのは数十年後だ。こっちに敵対する勢力がいるかだけかの確認作業に必要無いさ』

『穀倉地帯だったみたいだけど、もう、草ボウボウで開拓は手間だな』

『3万が食えりゃ当面は問題無い。何十年かかるかね』

『子作り頑張れって事か!』

『爵位が有れば、妾も囲えるさ。軍にいて良かったな』

『さて、お仕事、お仕事。人影見つけたら、無人攻撃機出すだけの簡単なお仕事で爵位がもらえます!』


黒鳥は聖地を飛び越えて行った。


「アソコは前は無かったから興味を引いたか」

「この後、何も無かったら逆に止めると不審がれれますね」

「そうだな。様子を見るか」

丘の村の跡地を、周回している【黒鳥】が興味を持ったのは野を走る羊の群れだった。


『ここは、集落を焼いたから、その時に逃げ出したんだろうな』

『あぁ、でも入植予定地でも、結構残っているから飼う事になりそうだな』

『おや? 何だこの崖の下。拡大してみろよ』

『ウゲ〜 先住民の死体じゃないか?』

『周りに人がいた形跡もないし、世を儚んで飛び降りたってとこかな?』

『生きていても、ドローンでブスッだったから結果は変わらないか』

『次だ!次!』

『これで、終わりだぜ。前の連中が残したチャージポイントに下ろすのか?』

『いや、あそこ飛び立った機体が全機落ちた。発電能力が落ちてきているんだろう。・・・・・仕方ない。入植予定地に集中して下すぞ』

『了解。じゃあ、全機、【ルベル帝国発祥の地】へ!』

『おぉ、カッコいいなぁ』

『もう一回、無人攻撃機を前に攻撃した街に、一機だけ寄越して目立つ物だけブッ飛ばしてこちらは終了だ』

『簡単なお仕事でしたね』

『ブラドの奴が、無茶苦茶やったからなぁ。今回も抵抗勢力無しと。ここのドローンは自動に切り替えてッと、さて次のエリアに参りましょう』

『到着まで、飯食うか?』

『なんか、変わったの無いのか? 飽きて来た』

『俺この前、レーション3Bと2C混ぜて食べたら結構いけましたよ!』

『何だよそれ?・・・・・ 俺もやってみようかな?』

『気をつけろよ。一日の消費量守らないと懲罰食らうぞ』

『なら、半分こにしません?』

『・・・・・だからなぁ〜』

衛星軌道上を次のエリアに向かって、移動を開始した。


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