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いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
904/926

903 間話 ファスロ・ピコ 07

暴力的な表現があります。

他国のスペースドックは、2から3キロ程の隕石を横に並べて移民に使う艦の製作にあたるが、ルベルのスペースコロニーは別格だった。

超巨大国が置き去りにしたスペースドッグを寄せ集め、リング状にしたドッグを幾つも使って巨大なコロニー艦を製造していた。

カバーについては【目隠し】だと言われたが、宇宙空間に浮かぶ限りデブリの存在は無視できない。

そして、今そのスペースドッグの素材を使い、ボーズを利用した溶鉱炉で製錬した鋼材を、コロニー艦の表面甲板として貼り付けを終了させた。

覆われたカバーが外される。

緩やかに回転を開始した傘の様な先頭部分。

そして居住区と2万を越えるコールドスリープカプセル(CSC)を収容した軸。

まさに宇宙空間に浮かぶキノコだった。

「でっ、でっけ〜」

「巨大だとは聞いていたが・・・・・・」

「傘の部分と軸の部分は反転しあって、応力を相殺して居るんだ・・・・・」


これだけ大きいと、コロニー艦自体が引力を持つ。

覆いを外されて、次々に小さなデブリが引き寄せられるが、回転する傘に弾き飛ばされて砕け散る。

胴体部分には、まだカバーとドッグが取り巻いていた。

底部中央に置かれた回転しない侵入口から、内部へ飲み込まれていくドッグからの移民たち。

もう、多くの乗員が重力がある居住区画に入り過ごしていた。

ここから更に上部に向かい、それぞれのコールドスリープエリアに落ち着く。

まだ、0.6G程度だが中継ステーションと移動艦。

そしてスペースドッグの無重力下で過ごして来た身体には疑似重力が辛い。

中央区画に移れば重力は小さくなるし、航行中は傘の部分が回転を増して障害物を弾き飛ばすので外周に近い部分は0.9Gまで疑似重力が増す。

とんでも無い構造だ。

中にはCSを拒否して、このエリアで代を繋ぐ事を選択した者もいるそうだ。

巨大な実験農場。

アンドロイドの手を借りて農業生活を続ける。

家畜も飼われており、鳥が宙を舞う。

ロリアが悩む程だ。

確かに、ここで普通に一生を終える事も美しく思える。

実際、中にはこのエリアで暮らす事に切り替えた者もいるが一方通行。

CSCに戻る事はできない。

諦めて、自分達に与えられた区画に向かう大学の研究員たち。

遅れて入ってきた茶色のツナギの一団。

彼らの中には、このエリアでの居住を望んだ者も居て、ここで選別される。

カウルスはハッチの中に消えていくロリアの姿を認めて走り出したが、その進路に少女がいた。

周囲から見れば、遂に変態が娘に飛びかかった様に見えた。

青い制服を着た男に、足を払われ転倒するカウルス。

たちまち取り押さえられて殴られる。

それに怯えてカウルスに突き飛ばされた少女が更に悲鳴をあげる。

「止めてくれ! 俺はロリアに用がある!」

「テメ〜遂に娘に手を出したな!」

「もう乗艦したんだ!構わねえ。やっちまえ!」

常々、カウルスの態度が気持ち悪かった民衆が怒りを爆発させた。

青い制服を着た連中はそれを眺めていたが、殺さない程度、死なない程度までは見逃す気だ。

黄色で背中に書かれた【カウルス】の文字が血で滲む。

適当なところで割って入った。

気を失って居るカウルスを、医務室に放り込む。


「なんだ、もう終わりか?」

「あぁ、上からは殺すなって言われて居るんだ。

治療済ませて準備できたらCSに入れてくれ。

目覚めれたら違う星の上だ」

「何年眠るんだろうな?」

「カイエル様の星に、一緒に入植してくんないかな?」

「それは、ハイエル様のプライドが許さないだろうさ。

それに、そこから先は選び放題だって話だ」

「もう、探査船出て居るんだろう?」

「カイエル様も先に送って居る分があるから、その情報を使われる。

言っちゃなんだが、最後に居住区が充実した、こんなコロニー艦が作れっるとはワーヒルの連中も驚いているだろうな!

資材は残さなくて良い訳だからな。

ベルザ様の交渉力のおかげさ」

「ベルザ様は、難病を発症されてボックスに入られていたんだよな?」

「あぁ、アバターアンドロイドの技術で人間そっくりの姿だったよ。

ピコって、うちに居た奴が自分で作り上げやがった。

表情も豊かで言われなきゃ人間と間違える。

まぁ、俺たち軍用開発から言わせれば無駄なんだがな。

天才だよ。

アバターアンドロイド開発の連中も【神】って言っていたからな」

「そう言えば、娘さんが乗り込んでいたんだよな?」

「ロ、ロリ、ロリア・ギル レイだ。俺の物だ・・・・」

「ケッ。そうだったコイツ。

ロリア様を追って、この艦に潜り込んだ変態野郎だった」

「よっく!聞け!

カウルス。お前は、このままコールドスリープだ。

上からの命令で、もう準備がされて居る」

「そ、そんな・・・・」

「しかも、目的地まで覚醒なしだ。

そこの牛馬や羊と一緒のエリアで保管される」

「な、なんで・・・・」

「家畜並みだからさ・・・・いや、以下だなぁ」

「か、かちく・・・・・」

カウルスが、目を閉じ出した。

「おっ、効いてきたな!」

「ね、眠い・・・」

「じゃあ、後一発。

お前が最後に目にするのが俺様の拳だ。

起きれたら、又喰らわしてやる!」

バキ!

「あぁ〜、良いのか?鼻、折れたかもしれんぞ?」

「良いんだよ。

コイツは起きたらボックスだ。

そう聞いている」

「変態野郎のタマは抜く訳か!」

「竿も指も舌も無くす!幸せだろう?」

「聴こえているみたいだな。

脳波が反応している。

まぁ、ハイエル様直直の決定だ」

「起きたら忠誠を誓いな。俺たちの様にな!」

「あはは、いい気味だな・・・・・」

『コイツら・・・・・元・・・しゃいん』


「死んだんじゃ、無いよな?」

「心拍数も脳の波形もCS待機状態だ。

出血は止めておけ。

面倒だからもうボックスに入れておきたいが、オペ担当の嬢ちゃんが、男にメロメロだからな」

「おい!墓守!さっき言った通りコイツは牛と馬の間だ」

「良いねぇ〜心をバキバキに折る訳だ」

「大人しくカウルスのコロニーに乗れば、もっと楽に死ねただろうに・・・・」

「親からも見放されてんだ、仕方なかろう?」

「まぁ、人工子宮オペレーターとしてだけの存在価値だからな。

さて俺らも、上のエリアで愛を語る相手探そうぜ!

墓守!あとは頼んだぜ!」


哀れなやつだ・・・・もう人として扱ってもらえそうに無いな。

ファルトンで、そのまま残って医師として最後を迎えた方が幸せだったみたいだな。

棺桶に見立てたCSCの管理をする事で、この艦に乗れた男達は墓守と呼ばれた。

まもなく、CS専門医官がやってくる。








誤字修正しました。2025/08/12

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