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いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
886/928

885 変化 07 ハイエル 04

「ハイエル様」

「あぁ、聞いていた。病の流行か?」

「はい。予め、先住民の血液から罹患する可能性があるウイルス等については、調べて対処していたようですが、今回、蔓延しているウイルス性の発熱疾患は、今までのウイルスとは違うものでしょう。

居住地の医官達では、どうにもなりません。対処療法になります。

しかし、・・・・死者が出るとは・・・・結局は体力勝負になります」

「・・・・・病院や防疫施設が、必要だった・・・・と?」

「はい。防疫、衛生管理を軽んじすぎました。申し訳ありません。

(うつわ)となる者を、臣民の女に産ませる事はしばらく延期です。

宿らせて感染されたら受精卵が無駄になって仕舞います」


ガルズは、今後の対策を必死に考える。

ここで、失敗すれば死が待っている。

私を受け入れる器を産ませて、残り少ない培養した鱗を埋め込まなければならない。

ここ(コロニー)には、ハイエルとロリアの卵子を使った受精卵の他に、私の精子を使った受精卵がある。


卵子は、研究室の科学者の物。

二つの実験を目的とした受精卵。

人工子宮で胎児を育て、出産間近の胎児の脳を使った研究を行った。

事故で昏睡状態になった作業員や兵士以外には、生きた脳を手に入れる事など、出来るわけがなかった。

人工子宮を研究するグループと脳科学を研究する私たちは、倫理感に苛まれながらも互いの研究に没頭した。

残された時間は僅かだ。

最終の移民団に登録したのもその為だ。


滅ぶしか無いファルトンを離れる際に、人工授精卵の凍結保存技術と人工子宮の実用化を確実にしたかった。

研究者同士で卵子と精子を融通し、設備の提供はハイエル将軍によってなされた。

その、時の名残とも言える受精卵がここにはある。


残っている受精卵を、臣民の女の子宮を使い器を手に入れる。

その為に 女を、コロニーに連れてくる予定だった。

使われていない子宮なら、幾つも下界にはある。

元少年兵の女・・・・・


「仕方あるまい。だが、どうする?」

「器ですか? (しまった!つい、考えが漏れ出た!」

「あぁ、今手元に私の器が三つ。お前の器は無い」

「(クッ!見抜かれた・・・)ですが、器を産ませる子宮がありません」

「ナトルに置いて来た探査船からの、過去データを整理して報告しろ!

「ナトル! ナトルに向かうのですか!」

・ナトル探査船のデータは53年前に途絶

「あぁ、その事は知っている。その前に入信している情報を整理しろ!」

次元航行中は、探査船の様な微弱信号は受信できない。

その為に、次元航行から宇宙空間に出た際にデータの要求をしていた。

だが、探査船からの通信途絶・・・・・

その事を知って、ナトルとの関係を切ると決めたのだ。

他の探査船が生きていると言うのに、ナトルの衛星軌道上に置いた探査船が信号を絶った。

つまり、ナトルの手で破壊された・・・・・そう言う事だ。

誰が置いた物かはわかっている筈。


・ナトルで、多くの島々にコロニーか゚建設された事を通知してきています。

・海上を行く多くの船舶が確認されています。

・コロニー艦、護衛艦ローダ艦隊 休眠状態です。

・衛星軌道には、数機の衛星を確認出来ます。

・気象衛星、通信衛星、資源探査衛星、軍用衛星の存在が確認できます。

それからも報告が続く。

「もう良い」

ハイエルは、報告を終わらせた。

「やはり、入植に成功し、居住地を多数持つことができた」

「53年・・・私達は未だルベルに到達できて居ませんね」

「向こうは時が動き出して居たんだ。我々は眠って居た。仕方あるまい」

「探査船を飛ばしますか?」

「あぁ、位置がハッキリしている。コチラが置いて来た探査船のうち近い物をナトルへ接近させよ。

その方法なら、ナトル到着までどれくらいかかる? 

ただし、向こうには発見されない様に衛星の影を伝って接近させよ」


・40日


「閣下・・・・何故カトルに気づかれない様に接近するのですか?

カストム様が率いるルベル国民ではありませんか?

コロニーの機能を使って直接、次元通信を試されてはいかがでしょうか?

それならば、我々を受け入れてくれると思いますが?」

「衛星軌道上の探査衛星が、何故通信不能になったか解らないのか?」

「・・・・・まさか!先程の軍の衛星・・・」

「あぁ、自爆型の衛星だろう」

「それでは、ナトルはハイエル様を敵と見做しておられると・・・・」

「そう言う事だ。

追加の探査船を、ナトルに向かって発進させろ!

コロニー艦のセンサーで、ナトルの探査船を燻り出せ!

恐らく、こちらの動向を探る為に送り出している筈だ」

「カイエル様が、その様な指示を!」

「カイエルは、もう死んでいるであろう?」

「それは・・・・確かにそうかも知れません」

「代が変わった。ローダだけでは無く他の星に入植した連中も向かってくる可能性も捨てきれない。カブが殲滅された事は伝わっている。他の入植地も、その事に脅威を抱いている事は推測できよう?」

「それは・・・・そうですが・・・・・」

「コロニー艦を先頭に、ルベル艦隊を外宇宙に出すまでの時間は?」

・準備時間5日、次元航行開始可能位置まで220日

「相変わらず、この時間はかかるな・・・・次元通信をリレーする為の衛星も準備しろ!準備が済み次第。周辺の入植地に向かって探査船を発進させろ!」

・了解

「ナトルへ向かわれますか?」

「それは、探査船の情報次第だ」

肉親同士で、戦うのか・・・・・


拡大したスペースマップには、先にレリアに向かわせた探査船の航跡が記録されていく。

間もなく、このルベルの外側の惑星を使って次々に加速して外宇宙へ向かう。

外宇宙にさえ出れば、後は次元航行で光の速度を越えていく。

一気に距離が縮まる筈だ。

「案外、レリアは近いかも知れんな?」

更にいくつもの探査船が表示される。

「ガルズ。あの【影】は姿を現さないか?」

「あの培養した『竜人の鱗』の定着を確認してからは姿を見せていません」

「鱗の培養は、その後どうなっている?」

「続けておりますが・・・・芳しくありません。遺伝子の欠損が見られ修復を欠けておりますが専門家ではありませんので・・・・」

「影が現れるのを待つか・・・・ガルズ・・・あの影が言った事は本当だと思うか?

ドーンと竜人がいる星、地球の話だ。

我々と同じ姿をした人が70億人もいて、竜人は人の中に隠れて暮らし、海に住む一族もいるという話だ」

「竜のお伽噺は、私も聞いたことがありますが・・・・ですが、あの鱗を見るとあながち作り話ではないと思います。海の中で魚の様に暮らす人間は思いもつきません」

「あの鱗の持ち主は、人の目では見えない程の遠くを見て、身体を鉄の様に硬く変えて身を守るそうだ」

「ハイエル様・・・・それは!(この話は聞いていない!)」

「あぁ、解るか? あの器の産みの親になった、この星の女の能力だ。

何故、ドーンが降りた地に住まう竜人の女と、この地の娘が同じ様に不思議な力を使えるのは何故だ?

この星の女の腹を借り、竜人の鱗を胸につけた器にも同じ力が宿るかもしれん。

他の女も同じ様な能力者だ。

身を硬く変え、物を遠くに飛ばす。

他にも術を使えたが、大地を離れて術が使えなくなっている。

『魔石』と言われる石を持つと術は使える。

そう告白した」

「24号に、この地に住んでいた先住民は、男も含めて預けてあります。

色を失った石を大事に抱えて暮らしています。

ルベルに南半球で先住民の女を探させて居ましたが、見つけた集団は、巧みに森林の中へ逃げ去り捕らえられませんでした」

「北の島で捕らえた連中は、腹をすかし洞窟か出て来たところを捕縛したからな。

大陸の森林で隠れ住む連中は、軍でも出すしか手に負えないか・・・・・」

ハイエルは、その時アンドロイドが遭遇した先住民の映像を見ていた。

木々の枝を巧みに使って、追ってくるドローンを網で落としていく尾の生えた人影。

赤外線探査モードで上空から探索すると、ダミーを使って無数に熱源が浮かび上がり、どれがどれだか判別ができない。

「チャフの様だな。知恵と技を使って巧みに逃げた。軍を出しても生きて捕らえる事は難しそうだな。

ならば、他をあたるか・・・・」


ガルズは、(あるじ)の意識が入植地から離れて外宇宙へ向いた事を感じた。

だが、それは又、どれほどの時間が必要なのか・・・・・私に、その時間は残されているのか?

「・・・・・・」

「ふん!不安にはなるな」

「・・・・・・この星は、如何されます?」

「・・・・・・この星の座標は登録済みだ。時間はかかるが戻ってくる事は容易」

「艦隊規模はいかほど?」

「知れた事。ナトルに備える。

全艦発進準備だ。

外宇宙に達したら、息子達を覚醒させろ。

ナトルのローダ艦隊ならば、我が艦隊の戦艦一隻でも事足りる。

向こうの主砲は、こちらの主砲の射程より遥かに短い。

遠距離から中央付近にぶっ放せば相当の被害が出る。

同様にレリア艦隊は滅ぼせる。

ドーンが降りた地球とやらの先住民の科学力は取るに足らない。

今と同じ様に、衛星軌道から睨みを効かせれば従うしかなかろう。

この場合は、ルベルとトーラスを使う。

残りはスタンバイさせて、外宇宙でナトル方向に睨みを効かせろ。

探査船の帰りを待たずに、コロニー艦が掴んでいるレリアの方向に向う。

そうすれば、早くつけるだろう?」

「・・・・・・・(また、コールドスリープをするのか・・・・)」

「・・・・・案ずるな。24号に命じて無理にでも着床させよ」

「・・・・・はい」

「だが、出発はまだだ。

下界の連中がどうなるか・・・・・見ておこう」

「はい。それに、どちらにせよ、パネルの引き込みを含めて出立準備に時間がかかります。

ルベルとトーラスの自動航行および自動迎撃システムの調整も必要です」

「下に向かって、主砲を撃つのも一興だが・・・・」

「それはおやめ下さい。御身の名に傷がつきます」

「誰も見ておらぬではないか?それに、我は皇帝だぞ?」

「ですが、いずれこの星にルベルの人民が降り立った時に気付きます。

どんなに破壊しても、ルベル人民の住んだ跡と、レールガンの特殊弾頭の痕跡と破片は残ります」

「臣民殺しの悪評がたつか・・・それもそうだな・・・・」

ガルズはない腕で胸を撫で下ろす。


冗談じゃない!

身体を無くしても、脳が筋肉で出来ているのは間違いない!

主砲なんてぶっ放したら、この星が破壊され、その影響で引力場が乱れてしまう。

このコロニー艦が、どうなるかわからない。

万が一太陽に引き込まれでもしたら、耐久性がない構造のコロニー艦は傘を残して消滅する。

そもそも、戦艦ルベルだって主砲を撃てるかも怪しい。

出力を落とした副砲でも、あの後、船体の修復にどれだけ悩まされた事か・・・・

射撃管制システムは『引力が存在する衛星軌道で発射した為だ』

と、解析し衛星軌道からの砲撃を禁止事項に設定したんだ。

結果だけに酔いしれやがって!

物を知らないのにも程がある・・・・

ガルズは、ルベルの主砲からヒューズを外す決心をした。


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