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いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
852/926

852 間話 レディース 10

最初にCCFに用意してもらった車で、別荘に入って来たのはジェイドにピッタリ寄り添った千秋。

鈴鹿を、さっさと後にしてしこたま松坂牛を堪能し、ホテルで互いを堪能して来た。

それでも、朝から身体を清め、行を行って朝日を迎えるのは流石巫女である。

敷地に入ると、車から降りて来た二人。

千秋がジェイドに楽にする様に勧めると、ポンっと白い耳と尻尾が現れる。

すかさず千秋が、ジェイドの頭を胸に抱き耳に触れる。

なんて事ない、ハンドルを握る彼の邪魔ができないので、我慢していただけであった。

『くっ!可愛い!羨ましい!』

迎えに出た、修造の門下生が必死に耐える。

(でも、言葉に出てしまう)

「ちょっとだけなら触っていいわよ。貴女もケモナーなんでしょ?」

「い、いいんですか・・・」

「うん!その気持ち解るから!」

そっと手を伸ばして触れてみる。

「き、気持ち良い・・・・」

「でしょう! 獣人の耳に初めて触れたの?」

「えぇ、猫獣人の方々は触らせてくれなくって、犬獣人の方は、この地には少ないんです。仕事・・・無いですからね」

ダメだ!手を離せ無い!

「でも、有田の施設を改修するじゃ無い。

これからは太平洋側の地脈と地震の関係を調査する研究が、有田の井戸を使って開始する事になったでしょう?

羽田家の地質学や防災学の研究者と星里研究所が来るわね?」

「はい。それで長谷山の方が・・・・警備として下見に立ち寄られました。

先日、その中に犬獣人の方々がいらっしゃって居ますけど・・・・初対面ですし・・・」

耳を触らせながら

「俺、ジェイド。って言うんだけど、その警備班は俺の従兄弟たちだ!

よろしくしてやってくれ!」

「本当ですか! アッ! 済みません」

やっと耳から手が離れたが、次は尻尾にまわる。

「挨拶が遅れました。私、多喜(たき)と言います。多喜 飛鳥(あすか)です! 

室の門下生ですが、この度、東京から実家に戻ってきました!

この屋敷の警備と雑用を言い使っています!」

「そう。でも飛鳥ちゃん!『雑用』と言う言葉は使っちゃいけない。ダメだよ!」

千秋が釘を刺した。

「エッ! どうしてですか?」

「【雑用】と言う言葉には、仕事を軽んじている。或いは蔑んでいる。そして、『これくらい簡単です。私にさせないでください』みたいに取られる事もある」

「私、そう意味では・・・・」

「だよね〜 だから一層気を付けて。

年長者や言葉に詳しい人には『御用』を使うのよ!」

「御用、『御用を務めさせて頂いています』・・・・そうですね。その言葉でしたら、相手の方にも自分自身にも大切な仕事と思えますね!解りました!有難うございます!」

そこへ、声が掛かる。

「へぇ〜流石、岩屋神社の巫女頭。大したもんだ!」

「脩様!それにカミラ様。わざわざ、お出にならなくとも!

それに、代理を付けてください。

早く、降りたいんですよ。役職が重たいんです」

「良いや、気にするな。ふふん。男と女になった様だな!」

「脩様! なんて事を!」

飛鳥が、真っ赤になって慌ててジェイドから距離をとる。


そうだ! いかに奥様に許してもらったとは言え、人の旦那の耳に触れたのだ。

いや、揉みもした・・・・・尻尾も握っていた!

つい同好の気楽さから・・・・

『心配しないで、私も夫を褒められて満更でもないんだから。

でも、ジェイドの従兄弟に、いい感じの少年がいるわよ!』

念話!飛鳥は気付いていたが

「は、はい!是非紹介してください!」

つい、口に出てしまう。

「飛鳥〜そのそそっかしさが、まだまだなんだ。声に出たぞ! 

念話には念話で答える。感情に左右され過ぎだ!」

「あっ!済みません!」

「脩様。またそんなに言わなくても。見た感じ若いわね。20歳前?」

「はい19歳です!」

「それでな、飛鳥。お前の妹がドナドナされて此処に来る」

「ドナドナ? まさか道士に捕まったんですか!」

「道士が、此処に来るわけないだろうが! 

警護対象に捕まって、昨日から行動を共にしているよ」

「エッ!(まさる)様に正体を掴まれたんですか?」

「あぁ、それでな。東京から昨日鈴鹿に入るまで、健と新幹線の席を隣にされて、しっかりと夕食も朝食も一緒に済ませている。

で、どうなったでしょ〜か?」

「・・・・・一夜を共にしたのでしょうか! 両親になんと説明したら!」

「アホ!健は奥手だろうがぁ〜! そんな度胸ないよ!

そんな事、去年まで健に付いていた、お前なら解るだろうが! 

交際を始めただけだよ!

一足飛びに事を進めるな!」

「姉の私が、彼が居ないのにですか! 真悟さんですね! 

真悟さんが、健さんを焚きつけたんでしょう!」

「ククク〜」

笑いを堪えている千秋。

何故? 笑っている?

千秋の人差し指は上空を指していた。

「上、上!」

この様子を、ナツミが送信していた。

送信すれば、受信する相手がいる訳で・・・・

その相手が入って来た。

ワンボックスの後部座席のドアが開くなり

「お姉ちゃん!」

真っ赤な顔の、ドナドナ影護衛が降りて来た。

まぁ、護衛対象が熊野に行く事になり離れるわけもいかず。

一緒に車でやってきた。

強制里帰り?

健に姉のドジぶりを話していたら、突如飛び込んできた別荘の映像。

まさかそこで、姉からとんでもない事を言われるとは・・・・

その後ろから、これ又真っ赤な顔をした健がおりようとしたが、それを静止した鈴華。

周囲を見渡して、預かった管狐を車の下に潜らせた。

お堅い鈴華らしい念の入れ様だ。

「天河さん。大丈夫です。管狐!帰っておいで!」

管狐は動かない。

「エッ? 名前呼んであげたら?」

護衛対象が意地悪だ。

「ウッ・・・・て、てん!帰っておいで!」

「キュウイ!」

一言鳴いて鈴華の肩に戻る。

首に黄色のリボンを巻いたピンクの耳。

昨日、あの大騒ぎの最中にアトランティスのトレーラーに飛び込んできた。

レディースにサーキットが解放された瞬間に生じた異様な雰囲気。

鈴華は警戒した。

『すぐ様、車を出すべき!』

と、鈴華は判断したが運転手が帰って来ていない。

「仕方無い。自分が運転します」

と、車内から運転席に移動をしようとテーブルを立った。

そこへ、女性の声で念話が届く。

『動かないで!外には影が付いていてくれている。換気口を開けて。

貴女に管狐をあげるわ。可愛がって!名前はテンよ!』

『貴女は!』

『有名だと思ったんだけどな〜 岩屋神社、巫女頭代理 千秋。鬼頭千秋よ!』

換気口を開けたら、ヌルリと入って来て鈴華の指に巻きついた。

立川で使っていたのは姉の管狐小隊。

こちらはエリファーナの指導を受けた管狐たちで練度が高い。

諜報活動向きで団体行動が取れる。

いつかは自分の管狐が欲しいと思っていたが、まさかこんなに可愛いとは・・・・流石、ケモナー!

結局、鈴鹿でインカムの妨害をしていた連中は、捕縛したが道士とは関係ない、ど素人だった。

ただ機材だけは一級品でインカムの妨害など児戯に等しい。

今、調べ上げているがネットで集められた愉快犯。

用意された周波数に、携帯からの音声を流す。

たった、それだけで結構な額の現金が置かれていた。

レディースのテスト走行が終わったら、これを持って帰れとそう言われていたそうだ。

確かに、そこに居る人数で置かれていた現金を分ければ、一人当たり100万を越える。

サーキットの管理者にも、今後、調べが入るだろう。

だが、その後事情聴取を続けてると、この数日の記憶が全員曖昧になって行く。

まるで、此処数日の記憶が溶けていく様に・・・・・

「嫌な気分ね」

「洗脳を思わせる・・・・・」

マリアと真悟が、室の事情聴取の様子を見ていた。

現在、ライダー達も伊賀の病院で様子を見続けている。

同じ様な状況。

ヘルメットを被ってインカムを操作した。

起動確認の音声が流れる。

その後の記憶が曖昧になって来ている。

彼女達には様々な検査をした。

特に呪糸蟲の変異種を疑う。

ヘルメットを回収したのもその為。

脳に侵入して宿主を操る・・・・・もし、これが新たな呪糸蟲ならば・・・・。


「多喜 乙葉(おとは)です。姉と共に伊賀で研修中です。

その教育の一環として、立浪 (まさる)様の警護を命じられました!」

立川で天河の念話でヴェスダミオを使うと警告されて、小さな悲鳴をあげたのはこの娘。

感情を殺す事がまだの様だ。

乙葉も健と同じクラス。

あの声を、白魔石に録音していた天河が健に聴かせた。

あの悲鳴に健が聞き覚えがあった。

任務初日、クラス替えの日に家路についた健の後に続く乙葉。

急に顔に向かって来た虫に驚いて、あげた悲鳴を覚えられていた。

女性の悲鳴と、その虫を飛ばした本人が振り返って無害認定されてしまう。

逆に気遣われて、立ち上がるのに手を貸してもらった。

それ以来、何かと逆に気にされていた。

それほどの、未熟者。

そうなると、まだヒヨッコの乙葉など簡単に東京駅で捕まってしまう。

初対面の鈴華に諭されて大人しく健と一緒に旅をして来た。

「ウチの、お姉ちゃんから聞いていた通りの人ね」

「済みません・・・・・」


改めて、姉から聞かされた乙葉、そして私の立場。

天河さんが、私に好意を持ち出した事から発案された行動計画。

乙葉さんは、実力だと健様や天河さんより下。

警護される側。

「守ってやりたい対象が有れば、健さんも少しは周囲に気をつけるだろう?

これも、教育の一環なんだ。

あの二人には、『影に守ってもらっている』と言う甘えが育っている。

立川のネカフェがいい例よ。

彼らには、道士への対応を学ばせる。

まぁ、女性に対しても少しは耐性つけてやんないといけない」

『私への天河さんの気持ちを利用した?

でも私も、天河さんが好き。

同じ様に、健さんの優しさを使うの?』

乙葉にも、そこまでの感情が育ってしまうのは仕方ない。

複雑な気持ちだ。


「心配しないで良いわよ。

四人とも重要な人材だ。

何よりも守る対象がいる事はいい事だ。

特に互いに背中を守り合う関係。

岩屋の巫女頭代理も、それだけの存在を求めていたんじゃ無いか?

ケモナーだけど!」


千秋とジェイドの姿を見ていると、姉の言葉が良くわかる。

ケモナーだけど・・・・・

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