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いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
827/926

827 CCFの企み 35天河・健 02

『どうやら、私を見張っていたみたいね。

参ったなぁ〜 綴さんに怒られちゃう』

『でも、仕方ないよ。

これだけ大陸人が居るんじゃ。見分けがつかない』

犬に追いかけられたのは、天河達だけでは無かった。

水樹を名乗る、この二人にも犬が尾いていた。

昭和記念公園と青梅線の間の通りを並んで歩く姉妹の後ろを犬が二匹追ってくる。

北東へ向かった天河と健とは反対方向。

だから、軽いジョギングで公園を周回している様に見せているが・・・・

マンションとは逆方向で怪しまれた。

周囲に人家は無いが、車の通りはこの時間でも多い。

店内に天河達の後に入った姉の美琴は、国分寺に実在する女子大の偽造学生証を提示した。

妹の鈴華はジャージ姿で、学習塾が入ったビルの非常階段から、二人が入ったネットカフェを見張っていた。

今二人は、塾帰りの妹を迎えに来た姉を装っている。

実際に姉妹の二人。

妹の鈴華は今年、初任務についた。

同級生の祝 天河の護衛。

前から中三で交代する事が決まっていた。

中高一貫校の羽田が経営する有名私学。

去年までは、高校生だった美琴の役目。

健の護衛は、今二人の背後を守っているが、鈴華は(ブツ)を預かった美琴と共に連絡員と合流すべく向かうのだが・・・・・

犬を巻くのは簡単だが、その背後が問題だ。

道士・・・・

三人はいる。

売人の背後の道士が、パケを渡した学生(斎藤)の住所を特定する為に犬を使った。

住所の記入欄が、徒歩圏内。

住宅街を行かせるのに犬を使う。

その犬を昏倒させ巻いた二人。

その二人のネカフェへの出入りに追従した単独客の女子大生。

だから、自分にもマークが付いた。

きっと、自分が座っていた椅子のカバーを剥ぎ取って跡を追わせていたのだろう。

その中の二匹。

椅子のカバーは、管狐に任せれば潰してくれる。

匂いを消すには臭いに限る。

ビニール袋にはカメムシが、紛れ込むんだろう。


V(ヴェスダミオ)

伝説の生物兵器。

強烈な匂いで意志を飛ばせる程だがCCFでは、各種の昆虫に模した式を使っている。

青、緑、黄色、赤で、その時に応じて使い分ける。

てんとう虫やカメムシが主流で、中にはGを複数使う広域攻撃用もある。

毒性は無いが、いかな術師でも視覚の隅で虫が動くと構えてしまう。


訓練した犬でも、何度か匂いを嗅がせなければ匂いを忘れる。

向こうは、まだ二人の素性を知ってはいないだろう。

やっつけるのは簡単だが、背後の道士も姿を隠す。

売人は切り捨てられて、奥多摩の山中に埋められる。

J大になんで販路を広げたの理由はまだ解らないが、その理由がわからないうちはどうするか・・・・・

『お薬の販売業者の背後に道士が居るのね』

呼び出しを受けて、管狐からの映像で背後の道士を見張る紗羅。

綴は未だ立川で工作を続けている。

尾行を受ける事になった、経緯(いきさつ)を沙羅から聞いた美琴はホットした。

これは、ミスと言えない。


『犬の放し飼いを警告する様に、警察に指導させるか・・・・』

『どうせ、犬は飼い主を特定されるだろうが・・・・消えているだろう』

『まさか、犬まで処分されないだろうな・・・・』

『犬にセサミを、飲ませていなきゃ良いが・・・・』

『それは、調べるしかないわね』

『音叉は鳴らないけど、対策しているかも』

紗羅の周辺にいる重鎮達の、声が魔道具で聞こえてくる。

キッシンや木場 昴の声が聞こえる。

犬を飼っている姉妹は、少し暗い顔になる。

ただの犬では無い。

忍犬(ニンケン)だが、やはり可愛い家族だ。

秩父に有る訓練場で、はしゃぎ回る姿はいつ見ても可愛い。

そして、頼みになる。

『綴の準備が済んだわ。駅の昇降口で青梅行きの電車が到着して乗客が降りてくるタイミングに合わせて一気に公園口を駆け上がって』

『でも、線路を挟んで後方から二人います』

『多摩地区に、道士がこんなにいるんですか?』

『向こうも、羽田や東郷の事を怪しんでいる証拠ね』

『あの、天河君は・・・・』

『心配要らない。使い捨ての選挙事務所から自宅に転移したわ。陣は燃え尽きている』

『良かったわね』

『うん』

『でも、天河君。告白したね。明日の朝、頑張ってね』

『・・・・・』

『気づいていたもんね。彼が鈴華の事好きなんだって!』

『お姉ちゃん・・・・』

『さて、明日、天河君のお迎えを受ける為にも帰らなきゃね。

電車が入ってきたわ。タイミング合わせて』

『でも、こっち側公園で・・・・うぉ〜、なんじゃこりゃ!』

公園口の昇降口にも若い男性が結構いる。

さっきまでは居なかったのに。

公園側に深夜にもかかわらず、大勢の客が降りてくる。

『走って!』

言われた通りに階段を駆け上がる二人。

階段を降りてくる客が、彼女達を通してすぐに背後を閉ざす。

追いかけてきた犬と道士が、公園口に溢れた人波に押されて階段を登れずにいる。

エレベーターに回るが、上階に上がったままで降りて来ない。

何か襟元のマイクに向かって叫んでいるが大陸の言葉だ。

線路を横切ろうとしても鉄条網と上り電車で渡れない。

下手をすれば、1,500Vの直流電流を食らってタダでは済まない。

今度は、南口を降りる二人を囲む様にして人並みが動く。

「こっちです!」

「なんで!」

「公園口の彼らはバイトですよ。詳しくは女帝から! 道士と犬は潰します」

背広姿のサラリーマンの袖口から、ゾロゾロと頭にマークを付けたカメムシが飛んでいく。

「「やば!」」


慌てて用意されていたワンボックスに乗り込んでカーテンを閉める。

そして、響き渡る。

阿鼻叫喚・・・・・


陣が展開して自宅に帰れた二人。

母の絹恵が二人を出迎えた。

「お帰り」

「お夜食。準備してあるわよ」

外に出たら安全が確保されない限り、食事を取る事は無いし水分も同様だ。

外から犬の散歩を、装って周辺を見回った父が帰って来た。


翌朝。本当に天河が迎えに来た。

水樹家でも、家族全員が早朝から待っていた。

「おはようございます。(いわい)天河(てんが)です。鈴華さんを、お迎えに参りました」

「お、おはよう。天河くん」

「おはよう。水樹さん。これから毎日、迎えに来ていいかな?」

「で、でも天河君・・・決められた人が・・・・」

「それは、周囲が言っている事。今の僕は君が好きだ」

両親と姉の前での大胆な告白。

天河が水樹一家が綴の一族であると知っても、水樹鈴華を恋人にしたいと願っている。

「あなた」

「中学3年だという事は、忘れないでくれ。私は認めようと思う」

「私も、お似合いの二人だと思うわ」

「お父さん。お姉さん」

「天河さん。娘を宜しく」

「はい。だから、これからは家族ぐるみでお付き合いしましょう。それなら、お互いを守れる」

「ほら、学校に遅れるわよ。急いで!」

「行ってきます!」

「行ってきます」

「今日の夕食。食べにいらっしゃい。お母さんお仕事で出張でしょう?」

「はい。宜しくお願いします」


「どうして、私が綴さんの配下と解ったの?」

「怒らない?」

「・・・・・努力する」

「努力か・・・・でも、隠し立てしたくないからね

骨格と筋肉と日常生活の動作に違和感があってね」

「天測・・・・・エッチ・・・・」

「そう。僕は君が好きだからね。

それから推察したら行き着いた。

それに・・・・昨夜、君が初めて使った念話だな。

念話の声って機械音声になっている訳じゃないだろう?」

「自分の声・・・・・天河君の声に聞こえた・・・」

「会った事もない人の念話でも、その人物から話しかけられている様に聞こえる。

不思議だね。誰も不思議に思っていないけど念話の声は相手が解る。

コンナさんに相談してみようと思っている」

「参ったわ。怒る気にもならない」

「じゃあ。僕にも教えてよ」

「忍びだから、言えない事もあるわよ」

「これは、どうなのかな? 同い年なの?」

「うん。年齢は一緒。ただ、誕生日は変えてある」

「今、3月1日って届けてあるよね?」

「もう。そこまで知っているの?」

誕生日は個人情報にあたるとして、教員の資料にも公開されていない教育機関もある。

教員が、誕生日プレゼントを押し付ける事例もあるからだ。

だけど、友人同士ではプレゼントの交換をしている。

「3月なのは間違い無いわ。7日生まれよ。

天河君は7月7日よね?」

「よく知っているね」

「そりゃ、護衛対象だし、特別な行動を取る可能性があるから知っておく必要があるの」

「ふ〜ん。

じゃあ、僕の家族環境も知っているね。

明菜の事も知っていたし」

「そりゃ、知っているわ」

「じゃ、これからは、直接知ってくれないかな」

「うん、解った。でも良く、両親が許してくれた・・・・なぁって」

「きっと、紗羅さんが綴さんに伝えて、君の両親が知っていたんじゃ無い?

朝、僕が君の自宅に着く前に、君のご両親は室内で僕を待っていた」

「はぁ〜。だから、あんなに余裕があったのね」

「どうする。電車の中では肩を抱いてて良い?」

「痴漢なんか怖く無いわよ!」

「でも、騒ぎはごめんだろう。僕は君を守りたいんだ」

「・・・・バカ。・・・・ありがとう」

冷静ではいられない。

夢見た様な光景だ。

顔が熱い。

駅から出ても、二人は肩を並べて歩く。

同じ方向に行く生徒が、ジロジロ見てくる。

二人を見たクラスの女子が、慌てて追い越して門を潜った。

「・・・・・クラスの女子に、いろいろ聞かれるだろうなぁ〜」

「堂々と言えば良いんじゃ無い?」

「何って?」

「結婚を前提に、お付き合い始めましたってね。僕は、聞かれたらそう答えるよ」

「・・・・・バカ!」

ますます、顔が赤くなる。

『でも・・・・言うしかないよね。天河君を嘘吐きにしないためにも・・・』

少し冷静になれた鈴華。

『でも、これでも護衛なのかな? 好きになっちゃいけないのに・・・でも、好きになってもらったし・・・』

全く眠れなかった鈴華は、寄り添って歩く天河にもたれる様にして歩く様になってしまった。

『昨夜は、西立川で集合したナイトハイクの学生が、異臭騒ぎで大変だったみたいだね』

『ナイトハイク?』

『突然集合がかけられて、指定行動を取らされる。今回は、西立川で降りて公園口集合がかけられた。それに応じると現金が振り込まれる仕組みになっていたそうだよ』

『それでか〜』

『原因は、大量のカメムシみたいでね。バイトに参加した面々はナイトハイクどころじゃなかった様だよ。でも、不可抗力でバイト代は返さなくって良いみたい』

『よく知っているわね』

『健の同級生の兄さんが応募したみたいで、夜中にメールが入って来た』

『他にも変な集合が、かかった事があったの?』

『鹿島神宮の大祭の後に、要石の周りをバイトで集められた人達が参道を埋めた件もそう見たい』

『それって!』

『そう、要石をすり替えた。本物の要石は、あの要石の地下に置かれたよ。アレがあれば、今NYに行っている透歌さん達が留守でも、東日本は地震予知できるからね』

『今回も、私達を守る為に?』

『そう言う事』

『眠気が飛んだわ』

『しまった!夕食時に話せば良かった。校門を潜るまでは寄り掛かって貰いたかったのに!』

『それくらいなら、構わないわ。ありがとう』

更に寄り掛かって歩く。

「暖かい・・・・・」

「そうだね。暖かい」


周りの一人ぼっちは

「何言ってんだ? 今日は一段と寒いじゃ無いか!」

そう、愚痴るしかなかった。

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