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いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
823/928

823 NY 新生活 13

テーブルに並べられた様々な料理。

ビュッフェの様に各自で皿に盛り付け、やっと起きてきた巴を交えて、西郷夫妻と使用人まで勢揃いさせて食事をしながら、それぞれで近況を伝え合い映像を見て楽しんだ。

未だに巴は眠そうだ。

料理に少し口をつけてソファーで、ぼんやりしている。

早苗が、心配して横に座って肩を貸していた。

他の者も、次第に料理に伸びる手が少なくなり、デザートと飲み物に移っていった。

美沙緒に言われて瑠璃が手配した、牛カツも出て来ていた。

流石に全部は食べきれない。

「この残った牛カツは、明日のお昼のサンドイッチにしよう。

これ、誰がチョイスしたんだ?」

「透歌よ」

注文した瑠璃が答える。


「へぇ〜透歌。どこのKEIKAに行ったんだ?」

「新宿と熊本の本店よ」

「熊本にも行ったんだ!」

「私が教えたの」

「未彩か。なるほどね〜でも、透歌もすごいじゃ無いか。

誰と行ったんだ?」

「まるで、お父さんみたい」

「そう言ってもな〜。北海道で要石の調査と対応をしてからだぞ。透歌が外に出たのは」

「心配してくれてありがとう。

でも、室もついているし大丈夫よ。

九州新幹線にも乗ってみたかったから、綴さんにお願いしたわ。

丁度、東京から来ていた水樹さんという新人の忍びが、岩屋学園に来ていたからね。気が合ったから、付き合ってもらったの。

彼女は、そのまま東京に帰ったわ。

水樹さんの研修も兼ねた私の護衛。

彼女も良く食べるわよ。

KEIKAだけじゃ無く、他の肥後ラーメンの店舗に行ったわ。

最初に駅前の黒TEI、KEIKA本店・・・・」

指が折られていく。

呆気にとられる未彩。

未彩もラーメンは別腹だが・・・・・。

「よく食べきったな!」

「コホっ!震災後の熊本も見ておきたかったしね。地脈と断層の関連を知りたかったし、彼方此方回ったから・・・・・それこそ、阿蘇山から南の八代市までね」

「そう言うわけか」

「東日本の地震は、要石の事を知る前の出来事だから、どうしようもなかった。

要石と波防石で津波対策が行えていたら、もっと被害を減らせたのに。

熊本地震も波防石の存在を知って、南海トラフ地震対策に追われていた時だったからね。

生駒の震災も、埋立地と断層集中の影響を考えなければいけない事を思い知ったわ。

長周期振動もそう。

慶長の地震で伏見城が壊滅的な損害を得た事も知っていたのに。

それでも、熊本で働いた要石を見つけている。

二度に渡る大きな地震で壊れた物も多かったけど、内陸型の地震の要石の効果も見ておきたかったから」

「熊本には、他のメンバーを誘わなかったのか?」

「学校が、あるじゃない。特に三人には、私と回って貰っているから出席日数の事もあるわ。私は、まだ正式に学園に通っているわけじゃないからね」

「そうなんです。透歌ったら置き手紙だけ置いて居なくなって、翌日の夜遅くに帰ってきて、熊本のお土産を渡された時には驚きました」

洋樹に当時の事を告げた瑠璃が、つい先程の映像で抱いた疑念を思い出した。

「そうか・・・・内陸か・・・・明日の地脈も、色々問題があるみたいだしな」

「あぁ、瑠璃のバカ」

雪緒が、直ぐに洋樹の言葉の意味を読み取った。

「えっ」

「洋樹さん。瑠璃の動揺を見抜いたのよ」

「瑠璃が優秀だからだよ。

食後のお茶をしながらで悪いが、何に気付いたか教えてくれ。

今夜は、早く休みたい」

洋樹が、上谷達に自分たちで片付けるから休んでくれと屋敷から離れへ帰した。

明菜は、はしゃぎ過ぎてソファーで美玖に抱かれて眠っていた。

「それじゃ、私は透歌と一緒に離れに行こうかね。

貴方、後で教えてね。何が起きるか知っておきたいわ」

白檀(シロ)黒檀(クロ)が現れて、明菜を離れに運ぶ事を手助けする。

クロは寒さを感じさせない様に、遮蔽を張って明菜を抱き上げている。

ドアをシロが開けて美玖と明菜をエスコートした。


「良くできた式神だ。

上谷さんが居なくとも、明菜を守って居てくれる」

「そうね。これなら留守の間も安心ね」

「未彩も、聞いておくだろう?」

「えぇ、心構えは必要ですから」


瑠璃が預かっていた写真、早苗がプロットしたグラフを、白魔石に取り込ませ洋樹に渡す。

洋樹が遮蔽を張り、その表面を偽装で白いスクリーンにした。

魔素を流せば魔石板の様に映像が映せる。

「へぇ〜そう言う応用もあるんだ」

意識がハッキリしてきた巴も目を覚まし、美沙緒と一緒に自分の眼の前に小さなスクリーンを出して真力を操って映像を映し出そうとしていた。

新たな術を覚える事は楽しい。

「瑠璃。説明してくれ」

先程、気付いた事とCCFに依頼したデータを待っている事を告げる。

「まぁ、おそらく地下水脈は、西から東に流れて大西洋に出ているだろうな・・・」

「私達も、そう思っています」

「この地脈は、地下水脈の下を走っているのかな?」

「それが、そうとも言えないらしいんですよ。

地脈は、プレートの縁に沿った物が殆どですが、断層や岩石の構造でプレートに対して直角に出ることもありますし、地表スレスレを走る物があります。

あの、双子石の要石を沈めた時は地脈は、地表スレスレでしたよね?地下水脈に挟まれる様な状態でした」

「成程・・・・・東西に向かう地脈の太さが違う。その理由は『地下水脈に溶け込んで大西洋に流れ込んでいるか、地下で溜まっているか・・・・・』そう考えた・・・

それで?」

「地下水に溶け込んでいるのなら心配しないのですが、他の2本と違って変動幅が大きいので・・・・三本のせいかもしれ無いんですけど・・・・」

「確かにな。

このデータは、ここ最近だからな。

・・・・・瑠璃も大学は、こっちに来て碧の研究室に入るか?

なんなら、ハイスクールもこっちで通っても良い。

ジョディとジョアンが通うハイスクールなら安全だ」


瑠璃は、思いもしなかった提案に衝撃を受けた。

私には、そんな未来が有るんだ。

雅樹を追いかけて同じ高校、大学に進み陰陽師としての能力を磨く。

雅樹が静香と籍を入れても、その側にいて彼の訪問を心待ちにする。

そんな日々を考えていた。

でも、透歌達と地脈や波防石を探す旅の中。

自分の能力が、とんでもない能力だと言う事を改めて知った。

確かに自分の能力をコピーした陣を組み込んだ魔道具は有るが、瑠璃には敵わないし

【天測】と合わせても成長する瑠璃には敵わない。

いずれは、真力、法力、マナの存在も明らかになり、地脈の存在も明らかになる時がくるかもしれないが、日々の危険は待ってくれない。

現に、ここから50kの地点に、壊滅的な地震を起こすかもしれないポイントが存在している。

これを何の対策も打たずに放置したら、数百万人の死傷者が出る恐れさえある。

人々を救う。

世界を救う。


恵梨の様に、なれるだろうか?

雅樹を、しばらく忘れる事が出来るだろうか?


静香は、悩む瑠璃を見て自分も悩む。

正妻となる事は決まっている。

雅樹が国分寺の『アドリア』を継いで、塔矢家の跡取りを自分が産んだ子にさせる。


恵梨は恐らく母親の碧の研究所に入り、後にルースで研究に入る。

彼女の夢は『ルベルの破壊』

そして雅樹の妻になる。

雅樹との家庭が2番目の夢。

ルベルを消し去らなければ、全ての夢が(ちり)と化す。


相手に気取られずに、ルベルのコントロールを奪い外宇宙で破壊する。

自爆システムは、ドーンとバッフィム達の知識から構築してある。

青木が、休眠状態に置かれている他の戦艦の所在地も突き止めていて、その再稼働までかかる時間内にアンドロイドを停止させる広域妨害装置も現在最終段階だ。

少女が考える事では無いが、彼女はアーバインで流れた多くの血と、失われた命の事を知って変わった。

あれほど、雅樹を自分の身体で誘惑してでも、二人の生活を築く事しか考えなかったのに・・・・・透歌の影響だろう。

ロイアも変わった。

彼女に雅樹の初めての女になられたのは悔しいが、ファミールの未来を支える海の女王候補だ。

渚さんと同じ様にマリーンショップの経営者で海洋科学の研究者を目指している。


自分は、雅樹を支える存在だけで良いのだろうか?

同じ様な立場に未彩が居る。

自分は、未彩の様に雅樹を支える存在になろうと思っていた。

でも、恵梨とロイアに続いて、瑠璃まで大きな存在になろうとしている。

雅樹を独占できる。

でも、それで本当に良いのか?

ジョディとジョアンに、NYのハイスクールに勧誘される瑠璃が、羨ましく見えてしまっていた。


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