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いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
814/926

814 NY 新生活 9

【B-Kai】に近づくと、なんだか騒々しい。

「何かしら?」

騒ぎを聞いた透歌が走り出した。

男性用と女性用にフロアが別れた【B-Kai】の試着室。

男女別の入口から入り区分けされている。

度々、女装した男性が入り込もうとしたが【駆除】されて、それが一層【b-Kai】の信用を上げると同時に、チャレンジャーを呼んでしまっている。

今も、試着室の入り口で入場を断られ、白一色のサンプルドレスを取り上げられた客が騒いでいる。

取り上げられまいと、手で引っ張るだけでは無く噛み付いている。

もう、あぁなってはゴミにするしか無い。

唸り声が・・・・違う。

「オカマ?」

透歌も流石に気付く。

「みたいね。脱毛やメイクで女を装っているけどねぇ。付いているわ」

『何が?』とは言わないでおこう。

美沙緒に、かかれば直ぐ判る。

瑠璃とて、その気になれば雅樹の全身を透視できる。

オープニングして直ぐに、この有様。

()()()()()()にとっても【B-Kai】シリーズは、喉から手がでるほど欲しい。

それならば、『吊るし』のアンサンブルを購入すればコチラも黙っているのだが、どうしてもオーダーメイドが欲しいらしい。

ロビーで自由に見れるカタログを基にドレスを決める。

型取り用のドレスサンプルに袖を通して、オリジナルを受注する為に女性店員とお針子が試着室で採寸と仮縫いの為のデータを取るのだが、入室とサンプルドレスの所有を断られて騒いでいるのだ。

もう、そのドレスを身に纏った姿を妄想しているのだ。

『性被害を受けた!』と騒いでいるが

変な男と狭い部屋に入って採寸にあたる女性への性被害はどう考えるのだ?

だから、頑として排除する。

その手の団体からは、そういった性別の方にも新しいブランドを立ち上げてくれとうるさいらしい。

現に、今日もデザイナーの売り込みで、その方面の方が一緒に詰めかけて香澄との面会を要求している。

店舗前で立ちはだかる香澄。

「私は、宣言している。そういうブランドは立ち上げないし、更衣室を使わせない。性的差別だと騒ぐなら騒げ、こっちも法的処置とお役様の安全を図る為に強制排除する。

そんなに欲しければデザイナーが所属する団体で自らブランドを立ち上げやがれ!

所詮、【B-Kai】のブランド名が欲しいだけ。

そんな奴らの為に貴重な絹を渡すわけが無い!

一昨日(おととい)きやがれ! 塩撒け! 熊野の塩だ! 徹底的に清めろ! 怨霊退散!」

香澄から立ち上がるオーラと、本当に撒かれた足元の塩に押されて先頭が下がる。

SNSでの生中継でも意に介さない。

「これはオーナーである私の方針だ!」

そんな事を知らない後ろでプラカードを持つ『見た目女性達』は、相変わらず金切り声を上げていたが、警備員に押されてビルから放り出された。

転びながら抗議の声を上げているが、その声を横目に多くの女性がビルへ入って行く。

『ここは、お前達が来る場所じゃない!』


「大丈夫?香澄姉さん!はい。お水」

「ふぅ! 美沙緒ちゃん。いらっしゃい。姉さん呼び? ありがとう」

ペットボトルに入れられた水を一口飲んで目を見張る。

「あはは、こりゃルースの水だね。

魔素の味がする。懐かしいね。疲れが吹っ飛び落ち着いたよ。

離れてしまうと味が判る物だね〜恋しいんだろうね。

ありがとう」

「事務所に少し置いておくよ。何?あの連中」

「もう、困ったもんだよ身体は男、心は女って奴さ。

でも、目は男だよ。

女の身体を見る目は、女が同性を見る目じゃない。

性的欲求は男だね。

女の中に入り込んでチヤホヤされる事を夢見るハーレム欲求の裏返し。

東郷兄弟みたいに、女を引きつけてみろや!

そう言いたいよ」

「成程、そういう見方もあるんだ」

「向こう(ヨーロッパ)でも、五月蝿くってね。

心理師に頭の中覗かせた。

本当に女性の心持っているなんて奴、ひと握り以下。

小指の先の砂粒程もいなかった。

雅樹の店でも、長時間居座って周囲に女性客が寄り付けない。

女性専用のテーブルに居座ってSNSにあげている。

ほんと、営業妨害で放り出す毎日だ。

NYでの商売が大変だとは聞いていたけど本当だね」

「手は打つの?」

「打つよ!決まっているじゃないか!

此処は憩いの場だ。憧れたファッションに身を包み、心を癒すひと時を提供する場所だ。周囲に不快感をもたらす連中は排除する。

その為にNYに来たんだ。

恥ずかしい想いをして出て此処には近寄らないし、女装をする事もやめるだろう」

「何をやる気?」

「この子達も乗り気でね!」

美沙緒の目の前に現れたのは管狐。

それも、とびっきり悪戯好きの連中。

「あはは、こりゃ随分と香澄ねえに染まったね? やり過ぎないでね!」

阿鼻叫喚が始まる前に、この一帯のビルから出ておこう。

騒ぎに乗じて車をマンションに帰させよう。

今夜は、ハイキングに備えてインペリアルで泊まる。


今回騒動になった更衣室。

一番奥の更衣室は、男女の売り場から繋がっている。

勿論、細工がされていて他の客が入っても繋がらない。

両方の売り場で服を選び、更衣室で衣装合わせをする。

急激な成長過程にある透歌には余分に衣装を揃えて、調整が必要な分は後日受け取る事にした。

透歌と早苗の分の少女用の服と、静香と瑠璃の少年用の服も準備した。

四つの商業ビルにある転送陣を使えば【インペリアル】にある、東郷家の離れか美沙緒の家の地下室に送られる。

収納に買った服を入れて、一着分だけを袋に入れて店を後にする。

次は、腹ごしらえだ。

MITビルに移動する。

まだ騒いでいる連中が居たが、通りを行き来する女性の視線に晒されて惨めさに引き上げている。

普通の女性が、彼女達を受け入れる訳がない。

奴等は男だ!


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