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いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
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006 聖地の孤児

その子が連れて来られたのは秋も深まる頃であった。

【シーグス】の街に火の手が上がった事を警戒して魔道具を身に付けた聖地の獣人の兵が周囲を警戒して巡回していた。

そして【アレ】、【サイス】にも火の手が上がる。

魔道具を頭から被り川の土手に張り付いてしばらく様子を見る。

近くに音がしたので近づいてみると5歳くらいだろうか?

急ぎ聖地へ連れ戻った。


聖地の長『ゲーリン』が話しかけても何も答えない。

余程、恐ろしかったに違いない。

実際、サイスの様子を見て来た二人に聞くと獣人の彼等には耐えら得ないほどの臭いに包まれていたと言う。

この子は、焼かれた村からは随分と離れた場所に座り込んでいたらしい。

持ち物はしっかり握りしめた手に握られている数本の金色の髪。

女の髪らしい。

もう片方の手には焼き焦げた魔道具の握りで小さな青魔石が埋め込んであった。

それを見たゲーリンには思う事が有ったが、目の前で呆然としている子供を思って黙っている事にした。

子供の面倒を見てくれる女に頼んで首から下げる小さな袋を持ってこさせた。

この子の僅かばかり残った思い出の品を入れさせてお湯で身体を拭き、清潔な古着を着せてやった。

名前はゲーリンがつけた。

『イバ』

海を意味する言葉だ。


聖地の暮らしは単調な物だったが、イバは成長するに従いその才能を開花していく。

聖地の長 ゲーリンは聖地で修行をする術師に声をかけて、ファルバン家に伝わる『術』の訓練方法を伝授する様に頼み、自分の副官であるメイルにも、剣と無手の戦い方を教える様に頼んだ。

側から見れば虐待とも見える修行を課していたが、イバはけろりとして毎日を過ごしていった。


それどころか、自ら獣人に頼んで『身体強化』を学び、獣人達からも無手での闘い方を学び外の見回りにも同行して、サバイバル技術を習得して人族には無い知識を身につけていた。

術師やゲーリンが持ち込んでいた、石板に書かれた術の伝記や算術も学び、10年を過ごし15歳になる頃には聖地の術者が手を焼く様な魔道具を作ったり、魔石に魔素をより多く充填できる様になっていた。

【陣】についても大概の陣はそのまま地に描ける様になっていた。

そんなおり、イバはゲーリンに呼び出しを受けた。


「お呼びでしょうか? ゲーリン様」

「おぉ、イバ。ちょっと頼みがあってな。浜の村の村長からの頼みなのだがお前に『遮蔽』の魔道具を作ってくれないかとの依頼があってな。

一度、浜の村長の話を聞いて来てくれないか? 

どうも話を聞くと、お前以外には出来そうもない話なのだ。

丁度、明日、浜の村へ魔石と毛皮そして干し肉の納品が有るので荷車を押して行ってくれ」

そう頼まれた。


イバは浜の村には行った事がなかった。

周囲を周る時も丘の方を選び、海へは足を向けなかった。

やはり、怖かったのだ。

だが、イバはいい機会とばかりにゲーリンに「解りました。お引き受けします」と返答をして荷車を準備している男の元を訪ねた。

「あぁ、ゲーリン様から聞いている。俺も、丁度、イバには頼み事があってな」

「なんだい?」

「他の奴等に聞かれたくない。明日の夜。岩屋で泊まるからその時に話そう。

岩屋で泊まるから少し多めにパンと汁を、明日の朝に分けてもらえるように厨房に頼んでくれ。何か菜が有ればありがたい」

「解った。今から頼みに行くよ」

「あぁ、頼む」


「おや?イバじゃ無いか?珍しいね。夕食はまだだろう?」

厨房に行くと、取り仕切っている女から声をかけられた。

「いや、実は明日の朝、ゲーリン様から浜の村に依頼された仕事の相談をして来てくれと頼まれたので、パンと汁そして良ければ菜を準備してもらおうと頼みに来たんだ」

「なんだい。アンタも浜の村に行くのかい。荷車押しは大変だからね。少し多めにパンと汁、そうさね、菜も悪くなりにくい物を用意しておくよ。でも、必ず火を通しておくれよ」

氷室の中を覗き込んで渡す食材を決めて続けた。


「アンタは色男だし、術もうまい。そして、私らにも優しいから、もしもの事があったら聖地の女の子から何されるか解ったもんじゃ無いよ。良いかい?浜の女に騙されるんじゃ無いよ。聖地の年頃の女の子は皆んなアンタを狙っているんだからね!」


翌朝、出立を聞きつけた女達に更に念押しされて聖地を後にした。

「イバ。やはり、噂通りだな。聖地の女にはもう手を出したのか?」

「いや、修行で忙しいし、あんまり喋る事ないから今度が初めてだよ。女の子と話したのは」

「浜に行くからだろうな。浜にはとんでもなく美人の歌姫が居る。金の髪をしたサトリの家族もいる。彼女達も美人だ。それにな!」

「それに、なんだい?」

「今夜のお楽しみだ。明日は、旨い物が食えるぞ。干した魚じゃなく新鮮な魚だ。浜の女が作ってくれる飯は旨いぞ!」

「そいつは、楽しみだな。腹が鳴りそうだ」

「・・・・イバ? お前、案外気さくな奴だったんだな? いつも、石室に篭っているか術師と魔道具作っているか、獣人と鍛錬しているかで、俺らとも遊ばなかったから驚いたぜ!」

「そうか・・・・今は強くなりたいと決めていたからな。済まなかった」

道が坂になって話はそれで終わった。

20230626

やっと、次章に移る文章まで準備できました。

これを機に行の調整や文脈の調整行います。

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