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いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
796/926

796 CCFの企み 19 エトランゼ 7

「通路?」

マーカスが、すぐさま反応した。

「耳が良いですね。

皆様が、この会議からお帰りになられて誰かにお話しされても、誰も信じて頂けないでしょうから、お話しします。

もうお分かりでしょうが、この地下会議場も京都市内のホテルから離れた位置にあるんです。

移動方法については、アン王女の方法とは違いますが設置型で『転移』を使っています」

「あのエレベーターだな?」

「そうです。そのエレベーターをホテルの中で、お探しになっても見つかりません。

例え中に入ったとしても、皆様の為にならない事が起こりますので、そういう行動はお取りにならない事をお勧めします。

扉の先が、ここに繋がるとは限りますん。

皆様の前任者が、お世話になっている場所に繋がっているかも知れません」

「成程、そうやってジメール達をホテルから出したのか!」

カストムには、自国の代表ジメールを収監した方法が判った。

「えぇ、私達には過去に地球の闇の世界で顔を売った方が、善良な市民となってアーバインで暮らされています。良い方なんですが、何しろお顔が怖い。そして、全身から漲る胆力の強さ。

アーバインでも犯罪を犯す者はいます。ですが、犯罪者は直ぐに捕まります。そして、裁判で決まった懲役を務め上げる収監施設が有る。

その施設の初代所長を務めて頂きました。

今は、名誉所長として実務を退かれて屋台村の気の良い親父。

自ら腕を振るい点心やスィーツを提供してくれます。

それに、優秀なブリーダーでもいらっしゃいます。

今回は、皆様の前任者のお世話で地球に来て頂いています。

その方は、地球上ではお亡くなりになっている事になっていますが、今頃、ジメール様達は青くなってらっしゃるでしょう。何しろ、ジメール様はその方を亡き者にした事件で片棒を担いでいらっしゃいましたからね。

殺した筈の人間が生きていて、自分を収監する施設で眼を光らせている。生きた心地はしないでしょうね。

色々と、お話を自らされている事でしょう。

ジメール様はカジノで大きな負債を負っていらっしゃって、組織の方々からは良いカモでした。その負債を帳消しにする為に、賭け事を禁止している教義を破ってまでして治外法権のカジノ特区を作り上げた。『異教者達から贖罪としての金を巻き上げる為、海外からの観光客を呼び込む為』と称してね」

「やはり、噂は本当だったんだ!」

「ですから、貴国にはカジノが進出している。長年、治安の悪化を見逃して、海外のその手の業者の好き勝手にやらせて来た訳ですよ。他の国々にも悪しき前例があるのにカジノを呼び込む計画を手助けしていました」

「あの野郎〜」


カストムは、国からの奨学金で国外で生活をして外交官となった。帰国する度に特区周辺の治安が悪くなり、友人達の夫婦間の不仲や借金の噂を聞いた。

上流家庭や海外からの客だけがカジノの狙いでは無い。

レートを下げての表に出ない賭場も有る。

賭場では新たな客を連れて行けば、その客の掛け金の額に応じて借金が減るかチップを回して貰える。

優秀なクルーピアは新顔の扱いに長けている。

その賭け方を即座に見抜き、射倖心を弄ぶのだ。

こうして客達は、負のスパイラルで繋がって落ちていく。

今じゃ、特区は違法賭博と風俗の巣窟だ。

薬物も持ち込まれている。

だが、今回の件でCCFは、そこにも手を入れてくれている。

友人達も醜聞を晒し、ギャンブル依存症で有る事を家族に告白するしかないだろう。

中には隠し持っていた薬物が消えていて、禁断症状に苦しむ者もいるだろう。

家族は離れ離れになるかもしれない。

財産も職も失うかもしれないが、この機会を逃したら家族も巻き込んで落ちていくだけだ。


「さて、話を戻しましょう。南極大陸にレリアの連絡艦の格納庫が存在すると申しましたが、これから南極は短い夏に入り気候が安定しますから航空機で移動します。

オーストラリア空軍基地を経由しますからパスポートは不要です。

残念ながらオーストラリアでの観光はできませんので、カンガルーとコアラは別途、個人でお願いします。

搭乗人数に限りがありますから最終人選はこちらで行いますが、今この会議場で参加されたい方は、後ほどCCFの職員へ申し出てください」

「そこへ行けば、あの宇宙船を目にする事ができるのかね?」

「当然そうなります」

人類学者や医学者達が目を輝かせる。

その他の科学者連中もウズウズして自国のCCF職員に目配せをする。

マーカスも興味をそそられる。

この機を逃したら、子供の頃からの夢を目に出来ないかもしれない。

せめてブリッジに座らせてくれないか?

「・・・・・解った。移民の受け入れについては引き受けよう。CCFが資金と人材は出すんだろう?」

「袖の下は出さないがな?」

何処からか声が飛んで来た。

「(キッシンの奴だな?)当たり前だ。貴重な人材が来てくれるんだ。重機なしで工事が出来る人材も頼む。機密保全も有るだろうから現場については君らに任す。

至急、やってほしい事はダムの補修だ。

まだ新しいダムだが、漏水が酷くって決壊しないかと台風や雨期にはビクビクしているんだ。

立て替えてもらいたいのが本音だが、それでは目立ってしまうだろう。何とか次の雨期までにやって欲しい」

「あっ!ズルいぞ! 我が国も引き受けよう!」

「我が国も大型化の傾向が強い台風被害に悩まされている。是非とも協力してくれ!被害が甚大で困り果ててる。どうすれば良いか知恵も借りたい!」

「そうですね。補修工事ならば受けやすいですね。CCF職員・・・・ミズ・カスガにそのダムの資料を預けて下さい。彼女は海洋学が専門ですが、お父様の会社でバイトをされて、そう言った土木関係も詳しいですよ。他の国の方達にも職員がお話を聞きます。(間違いなくダイキが現場に入りたがるだろうな〜)」

他にも数カ国が手を挙げた。


エルベがステージに立つ。

現在のアーバインからの移民状況について説明する為だ。

彼が、今回の事業についてCCFのトップを務める。

スクリーンにはアーバインの少年少女が唄う映像が映し出されていた。

ルースホールでの合唱だ。

アーバインの言葉を忘れないように、アーバインの言葉で歌を歌わせる。

イタリア語に近い音節と言葉。

アーバインから地球に来た子供の中には、地球の音楽を聴いてオペラの舞台に立つべく留学している者達もいる。

少女の受け入れには、真弓の母校が声楽科を設けて対応している。

岩屋学園にも香織の母校にも、それぞれの特技を生かす為の専科が設けられていて活躍している。

エルベもすっかり彼らの歌声にぞっこんで、ルナに頼んで動画を共有させて貰っていた。

妻と娘を連れて年に数回はルースのホールに行く事が楽しみだ。

柳葉への逗留も予定に入れているから、この旅は余計に妻の機嫌が良い。

ウルマにキッシンと共同で使っている住居に老後は引っ越したいとさえ思っている。

特に欧州でも過酷な暑さとなった夏には、エリファーナとキッシンの妻を誘ってウルマに行くのが通例になっている。

ウルマに行けば、周囲の眼を気にせずに過ごせる。


計画初期は、特異な術師の子供は移住させない。

せいぜい、身体強化が出来る程度の人族の子供だ。

親元を離れる事になるが、彼らは気にしない。

何より、外の世界への憧れが強い。

ルースで日本の生活は体験させているが、所詮は疑似体験。

そんな彼らを日本で教育して生活に馴染ませ、専門学校や大学を卒業させて、何ら地球人と変わらぬ生活が送れており、アーバイン人同士が多いが、日本人との間に家庭を持っている例を報告する。


詳しくは述べないが、ホテルマンや自衛官にも職を求めている事も話した。

旗本の警護にあたるSPにも当然、長谷山と白山の道場を出たものもいるし、古武道流道場へ進んだ武道馬鹿もいる。

こうしてアーバインを故郷に持つ者は二千を超える。

更にバッフィムの言う通り、ファルトン人も地球人と結婚し子供もいる。


「さて、何かご質問は?」

マーカスが挙手をした。

彼の目は、アンに注がれている。

「(予測通りか) マーカス様」

()代表の事を知りたいんだ。彼は人なのか? それに、どうして、その身体になったのかを知りたい。何より、今後どうなるのかもだ」

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