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いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
794/929

794 CCFの企み 17 エトランゼ 5

「レリア移民団。彼らはルベルと同様に武力での地球侵略を考えているのかね?」


突然、今までバッフィムの横で泣いていたアンジェスが厳しい表情になり声を発した。

「レリア船団は、地球を訪れる事はありません」

「それは?」

「父がレリア船団の乗員を抹殺しました」

「なっ!何だって!」

「多くの人民を率いて居たんだろう?」

「それが何故!」


誰もが考えて居なかった事だった。

バッフィムが肩を震わせるアンジェスを抱きしめた。


「レリア船団が使用して居た中型コロニー艦では、200年を越える次元航行は無理だったんだ。船団を共同で作り出してファルトンを旅立った国家群にさえ見向きもされなかった国々。中には迫害を受け続けた種族もいた。ドーンはそんな国々の人民と最後までファルトンに残った国連職員達の家族を船団に組み込んだ。

だが、補給を受ける事が出来ない旅。

食糧とCSに必要な製剤は減り続け、水と空気はどうしても船外に消えていく。

CS中に死亡する者が増えた。

そして遂に、積み込んだ酸素や水分が次元航行を続けるのには、危険な残量になってしまった。

ドーン氏を始めとして上層部は決断を求められた。

このままでは死を待つだけだ。

そこで、彼らは自らの身体を捨てた。

卵子と精子を取り出して人工受精卵を人工子宮に納める。

愛する者と最後の食事と夜を過ごして、身体を捨てて旅を続ける事にしたのです」


「これが、私の父ドーンの現在の姿です」

スクリーンに映し出された透明な容器に納められた脳。

先程映し出された艦橋の司令官コンソールに向き合っている。


「生きているのか?」

「直接、宇宙船のコンソールを操作して、あの飛行を続けていたのか?」

「脳だけで生きる。アニメやSF 映画で、出て来た事が有るが・・・・」


「この手術を行った脳外科医であり、サイボーグ工学の権威者が乗艦していました。

ですが、父はこの手術に対しての危険性を知っていました。

人々は身体を捨て、アバターアンドロイドを操作して疑似的な日常生活を続けます。身体を捨てれば身体の老化、疾患からは解放され、寿命は伸びるそうですが、次元航行を続けるにはコールドスリープ(CS)が必須です。

交代で覚醒する為にアバターアンドロイドは共有化されました。

アバターアンドロイドを共有する事で、各々の脳がネットワークを構築します。

ですが、この事が精神に歪な感情をもたらしてしまったのです。

それがどういう結果をもたらすか・・・・・

探査船からもたらされる目的惑星の情報。

70億を超える人口と文明。

しかも、その科学技術力はファルトンよりも遅れている。

誰か一人が歪んだ感情を持てば、レリアに乗艦して居た脳達は考えを共にします。


海洋に囲まれた四季がある大陸。

この星の全部を支配するのは面倒だが、この大地の上空と敵対しかねない軍事力を持つ国家の上空に戦艦を待機させれば、この大陸はレリアが占領出来ると。

そして、人工子宮を使いファルトンの子供達を育て一大国家を形成する。

そんな夢を共有し始めたんです。

ファルトンで制定された移住に関しての取り決めがあります。

中でも、

『先住民族がいる場合。それらを害して支配してはいけない』

ですが、守らなかった場合。その行為を誰が処罰するのでしょう?

ルベルが支配したアーバイン。

そしてレリア船団が目的地とした地球。

いずれも先住する人類が存在して居ます。

ですが、科学技術力、軍事力はファルトンが圧倒的に有利です。

レリアの艦隊はルベルの戦闘力には劣りますが、主砲はルベルの副砲に匹敵します。

そこで父達を除くレリアの指導者達は、ルベルの様に衛星軌道上に戦艦を残したまま受精卵と人工子宮を降ろしオーストラリアを支配する計画を立てて、それを実行しようとした」

会場は静まり返る。

今の地球に衛星軌道上からレールガンを撃たれたら防御できるわけがない。

「父とその副官は決意しました。

移動艦に移された人工子宮と受精卵を守る様に、アンドロイドを装って行動をし続けました。

この時、二人は覚悟を決めて居たのです。

狂気に囚われた同胞を手にかけると」

「それでは、先日この地球を周回して消えたあの宇宙船には、ドーン司令官らが乗り込みファルトンの受精卵と人工子宮が積み込まれて居たのかね?」


映像が切り替わる。

ズラリと並んだ人工子宮。

胎児の姿が映し出される。

「これが人工子宮・・・・・・」

「もう、人間で言うところの八ヶ月程の大きさだな?」

そして、その周囲で働く人々。

「これは、君らが言う移動艦の中かね?」

「えぇ、今、この人工子宮の管理をしているのはCCFのメンバーです。連絡艦は南極大陸の氷の大地の下に存在しています。

計画は順調で、間もなく最後の子供達が産まれてきます」

「い、今まで産まれてきた子供達は?」

「今、アーバインで暮らして居ます」

「そうか、それは良かった。南極の氷の下で暮らしている訳じゃないんだな」

映像は無邪気に遊ぶ子供達を映し出していた。

地球人の子供と何ら変わらない。

「実は、CCSではアーバイン人、ファルトン人の遺伝子や体の構造を長年に渡って調査をしています。幾つかの遺伝子に違いはありますが、身体的な構造には違いがありません。

それどころか、交配。つまり子供が作れます。

かく言う私の妻もアーバイン人です。

ご存じの方もいらっしゃいますが、私達にも娘達がいます。

その子達も孫を産んでくれそうです」

「私の部下も、アーバインそして地球人との間に子供が出来た。もう地球上で暮らしているし、君らの国の中でも暮らしている家族がいる。詳細は伏せさせてもらうがね」

東アジア、最大の国家【マイメランド】の代表マーカスが口を開く。

「どう言う事だね? ミズ・アオ。どうして、同じ遺伝子を持ち同じ身体の構造を持つ人類が存在するのかね?」

「進化論。人類の起源の話が変わるかも知れません」

「ミッシングリンクの問題か?」


【ミッシングリンク】

進化論の問題点。

有名なのは首が短いキリンの祖先の化石は見つかっている。

だが、今のキリンの様に首の骨が長くなる中間の化石が見つかっていない。

人類もクロマニヨン人ら先史人との間に、どうしても隔たりが存在している。


「アーバインにアシと言う長寿種で、過去の記憶を引き継いでいる一族がいます。

その記憶に

『竜の一族が、世界の終わりに三つの種族を別の世界に送り出した』

と言う言い伝えが残っています」

「それでは何かね?

地球人とアーバイン人、そしてファルトン人は元は同じ星の元に住んでいたと言うのか?」

「今は、まだ解りませんが、その可能性はあります。御伽噺と言ってもらっても構いません。

彼女達の記憶だけの伝承でアーバインでも、ルベルの存在で調査がまともに出来ていませんから」

「ふぅ。人類の存続だけでは無く、根底に関わる問題だな?

そこで、今回の会議だがCCFは何を我らに要求するんだ?

地球に迫り来る脅威は去った。

アーバインに居るハイエルとか言う狂人が、今すぐに地球に向かったとしても数十年先だ。

だが今、こうして東アジアの国々のメンバーを集めている。

しかも、皆東シナ海に面した国々だ。

大陸からの補償内容と今後の事業についての議論だけではないだろう?

オマケに参加国の汚職官僚や首脳まで取り除いて。

オーストラリアは先にCCFに参加しているから情報は掴んでいるんだろう?

ブラウン?」

エルベの隣に座るオーストラリア首相ブラウンに問いかけた。

彼とは、アメリカでの留学時にアパートで参考書を貸し借りした仲だ。

「やれやれ、昔から君が優秀なのは知っていたが、キッシンが君を買っている事が理解できるよ。マーカス。

私もCCSでは新参者だ。だが、彼等アーバイン人とは浅からぬ縁がある。

現在、アーバインに住むアーバイン人とファルトン人を受け入れるつもりでいる」

「やはりか・・・・・でも、それだけでは無いだろう? マムド? 君らが先程の昼食時に別室に篭って話を進めていたのは何の用件だ?」

「めざとい奴だ。一緒に食事に誘って置いた方が良かったか?」

「再度問おう。何故、今回私達をここに集めたんだ?」

マーカスは、円卓に座るCCF幹部を見つめた。


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