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いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
792/928

792 CCFの企み 15 エトランゼ 3

映像が切り替わる。

当時のファルトンで放映された宇宙開発に関するニュースの映像や新聞記事だ。

テロップが流れ、参加者の手元のモニタにも選択した言語で表示された。


【宇宙反射炉完成!】


「ファルトンでは各国が争う様に外惑星、小惑星帯の開発が進む。

その中でも注目を集めた技術。数万枚の反射鏡を凹状に展開させた反射炉。

焦点にコーカからの赤外線を集めて小惑星帯から集めた鉱石を精錬。

こうして得た鉱石を、月面基地やスペースドッグに運び、ボーズを使った電気炉、レーザーで加工を加えた」


『こんな事が出来るとは・・・・・』

『精錬用のガスを、あぁやって導入しているのか・・・・・うん? ミル!この精錬炉の映像を記憶しておけ!帰ったらポンコツ溶鉱炉の改修工事の参考にしよう!』

『24時間稼働。精錬した金属だけが残り、スラグの回収だけで良いんだな』

『あぁ、環境汚染がどうこうと言う奴もいない』

『温度の調整も反射鏡を反転させるだけで良い訳だからな』

『宇宙空間に浮かべた金属の精錬施設か・・・・・確かに、その時が来たら、使う事になるか・・・・』

『CCFの事だ。NASAやJAXA辺りも引き込んで着手しているだろう。抜け目無いエルベの事だ。欧州宇宙機関(ASE)も、この映像を見たんだ。がっちり噛み込んでいるさ』


『まぁ、そう思うのは誰しもね・・・・』

碧は研究所で、この反射炉のミニモデルを作って試している。

ミニとは言っても直径1kmを越える大型施設だ。

まだまだ改善の余地があるが、大気によるロスが無い宇宙空間でならば実用化可能との感触は得ていた。地上では反射鏡の稼働についての問題点を検証しているだけだ。宇宙空間では、様々なデータの補正が必要になる。実験機を近日中にJAXAが打ち上げる予定だ。【アンブレラ】の実績が物を言う。

「あぁ、私も宇宙(そら)に出てみたい!」思わず声が出てしまう。


映像が切り替わり、外惑星でアンドロイドが鉱石の採掘と運搬を担っていた。


「トウラが残した探査船を参考にボーズを組み込んだ無人探査機の建造がされた。探査用の光学機器やアンドロイドにドローンは、残されていなかったからな。

通信についても、圧縮送信技術を使ってより多くの情報を送れる様にしたんだ。

兼ねてより観測されていたコーカと同程度の小さな恒星を持つ惑星系。

数百の探査船が月面基地から旅立って行った。

この頃にはファルトンの外惑星でも鉱石採掘が始まる。

ファルトンでは、アンドロイドの開発が進んでいて基地に置かれたボーズから電力を充電したアンドロイドが採掘と運搬を担った。

小惑星帯には長期刑を受けた囚人達が収監されて、運ばれて来た鉱石を選別させる施設で働かされた。

こうして集めた鉱石を用いて、月面には多くのドームが形成されて行く」


バッフィムがマイクを取る。

「ファルトンにも地球と同じ様に国連組織が存在して居たが、元々、国家間、民族間の対立が強かった。ルベルとワービル程じゃないがね。

権力と富を持つ国家は、月に設けたコロニーをベースに、次々に移住用に使う艦艇やコロニー艦を建造する為のドッグを建造した。

その他の国家は、近隣諸国との間でドッグを共同建設してコロニー艦を建造。

もしくは、計画を修了した国家からドッグを譲り受けた。

レリア艦隊は、そうした国家集団が建造した移民団だ。

毎日のようにコーカの表面に黒点が増える。

コーカの寿命を縮めたのはファルトン人なんだ。

追われる様に新たなボーズを見つけては起動させ黒点を増やした。

発電型ボーズには、多くのバッテリーが接続され、一度、次元航行に入るとチャージが出来ないのでバッテリーはフル充電。

『ルベルのコロニー艦では慣性航行状態になるエンジンボーズよりも、発生したエネルギー総量は発電型ボーズの方が多かった』

とデータが証明している」


映像が切り替わる。

ファルトンを中心にして探査船の経路が示される。

四方八方に伸びる探査船の航跡。

候補地となる星のコードが記されて行く。

赤く点灯した点が入植候補惑星。


「探査船から次々にデータが届く。

光速を越える探査船の速度、そして通信装置。

この通信技術もトウラが残しておいてくれた物。

ボーズを使った物なので原理、構造は解らない。

だが、ここで問題が発生する。

次元航行を使ったとしても、最も近い位置に存在する移住候補の惑星まででも50年近くかかる。

ファルトン人の寿命は、地球のあなた達と同じ様に80年程度。積み込む食糧や水を再生産、処理するには限界がある。

しかし、ファルトンには長年研究が続いている冷凍睡眠技術が有った。

宇宙空間での冷凍睡眠(CS)は、囚人達を使った非人道的な実験も行われた」


映像が切り替わり、鉱石の選別作業が終了し自室に帰る囚人達。

だが彼らは眠らされCSCに収容された。

それこそ、条件を様々に変えられて眠りにつかされる。

運が良ければ30年後に覚醒出来れば放免となる。

だが、帰る故郷には彼等を待つ者は居ない。


「人工授精と人工子宮だが、ファルトンでは自然分娩での出産は少数派だったんだ。

そこに、ルベルの遺跡で発見された資料が加わって、より高性能な冷凍睡眠技術と人工子宮が試作されて、宇宙空間での運用実験が進められた。

宇宙空間で人工子宮での成育実験が行われたんだ。

古代遺跡に残されていた、ドラゴニアの研究結果。

アン様の研究資料が大きな助けとなったと聞いています」

間が頷く。


映像はコールドスリープカプセル(CSC)の映像と構造図を映し出した。

実際のコロニー艦内の映像だろう。

数多くのコールドスリープカプセル(CSC)が眠る人々を抱く様に並んでいた。


『材質は強化ガラス?』

『円筒にしてあるんだ』

『まるで母親の子宮で眠る胎児だな』

『そうか、冷凍と言いながら完全な冷凍状態では無いのか!』

『だろうな、細胞が壊れてしまわない温度まで下げる為に、羊水の様な液体で身体を保護しているのか・・・・』

『同じ様な事を我が国でも実行している事例があるが、これを見たら上手く行くわけがないな』

『何の為にやっているんだ? まさか、将来を見越してか?』

『難病に侵されて死を目前にした金持ちが居たんだよ。

去年、自発的に実験体になった。冷凍保存されている。法的にはもちろん死んでいるがね・・・・その死体を処理して冷凍保存している』

『医師の指導の下、自ら臨んだ訳か?』

『遺言で後数十年先に解凍する。彼の子息からは、死の恐怖から逃れたかっただけだろうと言われている。残された遺言状のお陰で医師は罪を問われずに、法外な報酬を貰って海外で過ごしているよ』

『解凍、覚醒に立ち会った医師が、死亡診断をして墓地に移送するだけか?』

『まぁ、そうなるな。ファルトンとの接触が先だったら、蘇生出来たかもしれんな』

『彼を預かっている病院は多大な経費を請求するんだろうな?』

『・・・・・嫌な話だ。その金があったら何千人もの命が救えると言うのに・・・』


「第一候補の惑星は、残念ながら火山活動が活発な未だ若い惑星で見送られた。

だが、やっと居住できそうな惑星を発見した。

知的生命体の存在は無い。

建造物が無かったのだ。

探査船からドローンを投下して調査が開始され、居住地として有力だとデータが送信されて来た。

後を追わせていた地上に降ろす調査ユニットも、地上に降りて様々な分析を開始。

優先順位を与えられた国家が、有人探査船の準備に入った。

訓練を詰んだ青年達。

もう何度もコールドスリープ(CS)を経験し3隻の小型艦船に、それぞれ10組、男女を組み合わせて乗り込み、冷凍受精卵と人工子宮を積んで衛星基地からファルトン連合の代表として旅立った。

こうしてファルトンの宇宙移民が始まった」

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