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いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
788/926

788 CCFの企み 11 ロースイア海 (改訂)

788と789の投稿順がまちがえました。

直ぐに789 再投稿します。

そこへ、ボアのベーコンサンドとサーモンサンドが山盛りで運ばれてきた。

壁側に居たCCFの職員が手際よく、それぞれの好みを聞いて皿に取り分けていく。

「何だかんだで、腹が減った。カストム。遠慮は要らんよ!」

マムドはいきなり、両手に2種類のサンドを手につかみ頬張り出した。

呆気にとられるが、腹の虫がグーと鳴って自分にも味わさせろと訴える。

「私も、両方頂こう。アイスコーヒーを頼む」

隣のアンも同じ様に齧り付いている。

「此処は、オフレコ・治外法権の地だ。戒律は気にするな。

ただ、午後の事もある。悪いがノンアルコールで我慢してくれ」

「えぇ、酒は呑めないんで」

紅茶を貰い、ボアのサンドイッチに齧り付く。

美味い。

あっと言う間にボアを平らげサーモンサンドを口に運ぶ。

やはり、コレも美味い。

確かに素材そのものもしっかりと処理されているが、それ以上にそれぞれのソースがサーモンとボアの肉質に合っていた。

ダメだ。手が止まらない。

結構な量を食べて、もう一杯の紅茶と口直しにゼリーを貰ってやっと落ち着いた。


「サンドイッチも当然だが、そのゼリーも美味いだろう? オレもウルマで食べた時には唸ってしまった」

「ウルマ?」

「アーバインの北の島だ。さっき映像で見ただろう? 海岸に自生していた実を使った物だ。帰りの手土産に持たせてやるよ」

「それは、家族が喜びます。やはり、あの映像は事実なんですね?」

「あぁ、映像だけでは無い。その前に報告されていた。空を飛ぶ竜人と海に棲む人魚の話も本当だ」

「みたいですね」

隣に座るアンを見た。

その視線に応える様にアンが声をかける。

「まだ自分が、代表に撰ばれた事が不思議なようね?」

「えぇ、実際、私は清廉ではありませんし、国に私を支える組織を持っている訳でもありません」

すると、マムドが

「だよな。だから、『国家代表の座を取り上げる』と言ったらどうだ?」

カストムは拍子抜けした。 

それは肩の荷が降りる事になるが、同時に悔しくもある。

口を開かずに居ると、三匹の虎が笑い出した。

アンも同じ様に笑い出した。

「マースル州の代表は続けてもらう」

「マースル州?」

「あぁ、聞いた事は無いか? かつては、あの一帯は一国だったんだ」

「えぇ、それは聞いています。今の国の成り立ちは植民地として支配した宗主国からの独立運動を行った時期のずれ。そして、派閥の対立。そう聞いています」

「だから、この4カ国を一つにして大きな国にするんだ」

【4カ国の合併】

確かに、大戦後、しばらくしてそう言う運動が活発化した。

だが、各国の思惑でその話は流れてしまった。

独立運動を行った者達が、今度は自分達の利益を求めたのが原因だ。

独立を後押しした大国の体制の違いも大きい。


「どうして、そんな話に?」

「昔に戻るだけだ 昔を知る生き証人の勧めもあったし、その方が何かと便利なんだ。領海問題、通商問題も解決する。反対勢力は権力を削がれてしまったしな」

「私が言うのもなんだが、4カ国が一つの国家となったら、ロースイア海を囲んだ国家の出来上がりだ。ロースイア海は内海の扱いになる。大陸の軍の連中も居心地が悪い。まぁ、軍には準備が整い次第。即時撤退してもらうがね」

アンから()の姿に変わった男がニヤリと笑う。

「生き証人?」

間を見るが頭を振った。

「私では無い。アンもそうだが、人魚の伝説を知っているだろう?」

間が壁際に並ぶ男女に手を向けた。

そこには、先程のサービスをしてくれたCCFの職員の男女が立っていた。

マースルも席を立って、その横に並ぶ。

それだけでは無い。その背後からも湧き上がる様に若者が姿を現した。

それに同行する様にしてキッシンやエルベらのCCFのメンバーと旗本が入室して来た。旗本の後ろからも日本人のCCFの職員が現れた。足元が一瞬輝いていた。

「転移?」

「えぇ、私は使えませんけど、水中での活動はお手のものですよ」

マースルが長い髪をアップにして背中を向けて頸を見せつけた。

アクアブルーの鱗。

「人魚の話は本当だったんだ」

『あぁ、私が連れてきてしまったファミールの子孫だ。伝承によると瀬戸内では網にかかってしまったりしたんで、南方に逃れてきたそうだ。

見ての通り人魚とは言え陸上での生活ができる。人に混じって生活を続けていたんだがやはり、海が必要。成長も人と比べてゆっくりなんで長寿だ。

このロースイアに居た人魚達も殆どが人の中で暮らしている。

他にもアドリア海やモルジブ諸島。カリブ海にも移住しているんだ。

だが、近年海の汚染に苦しんでいてな。

そこで、彼らの存在を明らかにして同じ地球に住む人として共に生活する場を作りたい。CCFはそう決めたんだ』

頭の中でアンの声が響くが、もう驚きはない。

「それは何故?」

エルベが答える。

「此処は、大陸の沖合でCCFが沈めた核汚染物質の除去装置からの潮流が流れ込んでいる。そのせいか、非常に綺麗な海に戻ってきていてね。

人と交わりを避けていた人魚の一人が、もう此処の海に暮らしていて地球上で一番最適な海だと証明してくれたんだよ。それまでは石垣島で暮らしていたんだがね。

それでも、海の状態が悪くなる時がある。そんな時は地上のバスタブで浸りながら、海を見つめて悲しそうだったよ」

「それで、4カ国の合併、統一を図るわけですか・・・・・・・今回のクーデターの真の目的はそれですか?」

「それもある。物事を進めるには計画と資金と人材、障害の排除が必要だからな。反対派には、その利権を取り上げて舞台から降りてもらった訳だ。

勿論、マスコミを始めとした反対派は残存しているが、その彼らとて大陸が手をひけば資金源を絶たれて世論のコントロールは弱体化する」

「でも、私も金を受け取っていた」

「あはは、それでも年に自分の給金と同額程度だろう? 君と同じ様に代表に担ぎ上げられた連中もおなじ様なものさ。それは、ボーナスだ。良心の呵責に耐えきれずに地元の病院や学校に物品を購入して寄付しているんだろう?」

「ですが、それは余裕ができてからは続けてきていた事ですし・・・・・」

「オレも裏金を受け取って蓄財はしたさ。綺麗事だけでは政治は出来ない。グエンとマチャドも似たり寄ったりだ。今後もそう言う金は入ってくる。それは受け取って構わない。だが、使い切れ!今までと同じ様にな」

「清いばかりが正しいわけじゃ無い。今では、罪の様に言われている接待も一つの経済を生み出していたし文化を育んで来た。ここ京都の花街の舞妓、芸妓ももそうだ。東京でも銀座界隈の料亭も消えつつある」

キッシンが苦々しく言う。

「消えゆく文化?」

「ロースイア海に面した国々でも、分裂した為に各地に存在した文化財や風習が消失している。特にナールブの惨状は眼に余る」苦々しくグエンが言い放つ。

「我が国は、海外からの観光で国が成り立っていますからね。集落が切り刻まれてしまって、幾つもの村が大陸の資本でホテルになってしまっています」

「我が国の連中が、史跡の存在を無視して、金をばら撒いてリゾートホテルを建設したからな」

「大陸の資本に頼ってしまうのは仕方が無いですよ。働き場所を提供して頂いた。それは、紛れもない事実です。それまでは、家族を食わせる為に国外へ出稼ぎに出るしか無かったですからね」

ナールブが大陸にいい様にされても、文句が言えない理由の一つだ。



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