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いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
785/926

785 CCFの企み 08 会議開催 (改訂)

数を減らした会議の参加者。

会場となったホテルの周囲には、多くの報道や各国から派遣されたと思われる大使館員や素性が怪しい連中がホテルをとり囲む。

京都府警の応援要請に応じ、警視庁の機動隊が周囲で睨みを効かす。

会議場は中層階に設けられていたが、順次奥のエレベーターに誘導された。

エレベーターが、地下二階に達してもフロア表示が点滅を続ける。

尚も下降を続けている様な感覚があった。

だが、京都は地下に帯水層が存在して、深々度の地下階は作れない筈・・・・・


一瞬、照明が消えて足元が明るくなった。

扉が開き昨日とは違う会議場に案内された。

「ミスタータケダ。ここは?」

会議の参加者が不安げに問う。

無理も無い。

自分達の国家代表も、このホテルから出て行っている筈。

何台かの車が、昨夜出たが空港で降りたのは随行者達だけだった。

自分達も、何処か他の場所に連れてこられたと気づかないほど馬鹿では無い。

「ホテルから離れて貰いました。京都市内では有りません。CCFの秘密基地と言っても良いでしょう」

「そんな場所に・・・・・だがどうやって?」

「それは、今は明かせません」

CCFの関係者でもアトリエの事を知っているのはごく僅か。

新たに産まれた術師の鍛錬を兼ねて地球での施設を増設させている。

アーバインのルースとウルマが、これ以上手を加えれ得ない状態なのだ。

日本だけでは無い。

かつて冷戦時代に数多くの大陸間弾道弾(ICBM)用の地下サイロが大国に存在した。

軍縮や老朽化で閉鎖されたサイロを使ってイバが先頭に立ち作業を進めている。

核廃棄物用の深々度の施設に除染が済んだ海域から引き上げたボーズを使った核廃棄処理のプラントを建設する予定だ。

日本国内も、秘密裏に建設が進んでいる。


最後にキッシンが現れて不安げな参加者に声をかける。

「皆さん!ご着席願います。

今からCCFが作成しました映像をお見せします。

昨日、今の実情を知らせる為に簡単なお話をしましたが、ここでは更に詳細な映像をお見せします。

この映像が、事実だと知っている私でも信じられない映像です。

AIを使った映像と、実際に記録された映像を組み合わせています。

ですから、創作物に間違いはありません。

ですが、事実です」


キッシンが、指を鳴らす。

スクリーンには、今までで解った【人】が住まう惑星の終末を描いた映像が映し出された。


トウラのデータは、アスアッド、ハイデマン、そしてアン

ドラゴニアは、アン

彼等の記憶と証言、データ。

ファルトンは、ドーンから渡された映像データとバッフィム達のデータを元にしている。

サポート・ユニットが、産み出されたとされる星は、彼も寮監も名を知らなかった。

寮監が映し出してくれた記録映像を元にしている。



先ずは【トウラ】

地球に似ているが、海洋面積が多い。

羽と尾をを生やした人物が空を飛ぶ。

だが、地上に降りると羽が肩甲骨の部分に収容されて尻尾も引っ込んだ。

その為に背中が開いた独特の衣装を身につけていた。

羽と尾を仕舞うと、正面からは人と殆ど見分けが付かない。

だが背中の肩甲骨が剥き出しになった様な姿。

空を飛ぶのは彼らだけでは無い。

地球のアニメで出て来そうなエァーカーも、高度差で進行方向を決めて整然と飛んでいる。

一見すれば科学技術が発展した平和な世界。

だが、女性のナレーションが信じられない言葉を告げる。


「この空を舞うのは、【ドラーザ】竜人である。

彼等は、17歳になると【学園】と呼ばれる隔離された環境で三年間。

特殊な場に集められ自ら学ぶ。

その内容は、明らかに彼等が住む世界の現実を越えた技術や文化、それを知る為の図書館。

教官による指導もあるが【図書館】で自ら書を手に取り学ぶ。

それを元に高度な科学技術を築き上げた国が現れた。

その教育の中で、

『君らの星【トウラ】には最後の時が迫っている』

そう、教官、寮監達が伝えるが、一部の国の若者を除いて春を楽しみ、互いの伴侶を求める場と考える者が大半を占めた。


切迫した危機を感じない若者。

殆どの者達が、同じ世代の友と楽しく時を過ごす事に日々を費やした。

だが、後にドラウド国を起こす王太子は、図書館に篭り蔵書を書き写す事を続けた。


ドラーザの指導者の中でも、特に科学技術を重く見たドラウド国。

宇宙に目を向け火山活動や地震、気候変動にも気を配る。

医療に対しての技術も発達した。

平和な時は過ぎ歴代のドラウドは、学園で言い聞かされていたトウラの危機を忘れるところだった。

しかし遂に、夜空にトウラに迫る死の影を捕らえた。

ドラウド八世の時代。

自らも天体観測を趣味とする彼が見つけた光景。

高地に設けた巨大な天体望遠鏡が、その姿を捉える。

発見当初は、遥か彼方の星の光が消えた事から、その星とトウラの間に何かが存在している。

そう観測できた。

光の速度についての数値は出ている。

各々の星までの距離も光を単位に導き出しておいた。

更に消えた星々の光。

長年の観測が続き、その物体が無数の隕石の集まりだと判明した。

数年ごとに姿を隠す星の数が増える。

まるで目の前に出された手が近づいて来て視界を塞ぐ様に・・・・・。

ロケットを開発して宇宙に天体望遠鏡を打ち出し、迫り来る何かに注意を払う。

そして、多くの光の反射の粒が『巨大な流星群』だとドラウド9世に伝える。

間違いない。

確実に、このトウラに向かっている。

何度も繰り返される軌道計算。

防ぎようが無い。

逃げるしか無い。


そんな中、宇宙開発の最中に偶然得られた【ボーズ】

電気エネルギーを生み出し、巨大な推進力をもえる事ができた。


ナレーションが途切れ、映し出されたその姿に誰もが気付く。

CCFが海中に沈めている放射能物質の処理装置に似ている。

質問の声があがるが、司会を務める武田 豪は無視をした。

映像は続く。

(答えられない・・・・そうだろうな・・・)

参加者は理解した。


ナレーションが再開。

「地球人と変わらぬ姿の、ファスタバから産み出された竜人とも言えるドラーザ。

その間に産まれるファスラーザ。

支配階級で有るドラーザの王に率いられた、ファスタバとファスラーザが新たな星を目指す。

幸い移住先となる惑星ルコが見つかり、トウラの全人口の5%にも満たないとは言え、多くの人々のトウラからの移住が成功する。

最大50年を必要としたその旅路。

外宇宙となる宇宙空間に食糧と空気、水を積んだ補給艦を予め準備しておいて、光の速度を越えた【次元航法】が使われる。

だが、移住できたのは僅かな者達。

更に、この旅の間にも多くの者が亡くなった」


再び、ナレーションは停止して映像とテロップが映し出される。

トウラの最後は、隕石群が炎をあげて降り注ぐ映像から始まった。


「トウラに残り彼等を見送ってくれた人々からの通信は絶えて久しい。

接近する隕石群の影響で、太陽のプロミネンスが引き寄せられてトウラをその炎で炙った。

トウラに接近した隕石は、大気の層で弾き飛ばされ、突入して来た隕石も燃え上がる。

だが、その衝撃でトウラが公転軌道から弾き飛ばされて大気も失っていく。

こうして、隕石群に文字通りフルボッコにされたトウラ。

最後は、隕石群に巻き込まれるようにして砕けマグマを撒き散らし、隕石群と共に無数の黒点が浮かんだ太陽に向かっていく。

突き刺さる隕石群に、巨大な火柱を噴き上げて太陽は耐えていたが、急速に自転速度をあげて扁平になり、引き裂かれたガスが流星群の後を追う」


「こんな、こんな、終わり方があるのか・・・・・」

マムドは絶句する。

マムドも天体好きで、星々を眺めるのを楽しみにしているが、まさか、この様な星の終焉が有るとは思わなかった。

他の参加者もAIによる架空の話だと思いたかったが、アンの姿が一瞬、先程映し出されたドラーザと言われる竜人の姿になっているのを見て実話だと理解した。


テロップが流れ次の星が紹介される。

【ドラゴニア】

アンの故郷【ドラゴニア】の、漆黒の闇に青白く浮かび上がる凍りついた惑星が映し出された。


一斉に会場は円卓の女性に目が注がれる。

「私が、この日本に降りて【神】と呼ばれた事は、昨日お話しした通りです。

ドラゴニアの者にもドラーザと同じ様に羽と尾がありそれを使って空を飛ぶ者がいました。

ですが、ドラゴニア人の中には羽を使わない存在もいました。

皆さんが言われるところの【テレポート】が使える者がいたのです。

この様に・・・・・」


アンの姿が不意に円卓から姿を忽然と消しステージに現れた。

「瞬間移動!」

「神の御技!」

会場から声があがる。

ニッコリと笑って見せるアン。

その姿が消えて会場の最奥に登場し、立ち席に居たCCF職員の肩を叩いて周囲の驚かせて会場の注目を集めた。

そして、一瞬にして円卓に戻って見せた。

会場は騒ぎになる。

特に立ち席で会議を見守っていた連中は、アンが残した『残り香』に彼女がそこに存在した事を実感してしまった。

ざわめく会場を見渡して、アンがマイクを持ちナレーターを務める。


「この様な能力を持ち、自らの能力で空を飛ぶ我らドラゴニアは、地球よりも進んだ科学技術力を持っていた。

だがその力を持ってしても、大地の中で徐々に進行する終末への事象は止めようが無かった。

【マントル対流の鈍化】

マントルの温度が下がり、粘性が高くなり流動性を失った。

自転速度が不安定になる。

宇宙からの放射線を防いでいた磁界が消え、電磁バーストで地上の電力網は壊滅させられた。

自転速度が落ちて公転軌道を保てなくなり太陽からの距離が広がる。

人々は厳しくなる極寒の中、地下に逃れて生き延びようとするが、太陽から得られる熱は減少し気温は更に下がった。

人々は、マントルの対流を復活させようと核を使用。

全く効果がなかった。

当てもなく脱出を図る宇宙船団。

コールドスリープで眠りについたまま、何れかの星の住民の助けを期待したがエネルギーが枯渇。

多くの遺体を運ぶ幽霊船になって宇宙を漂う。

私もそうなる運命だったが、運良くルコに向かうトウラの民に救われた」

映像が切り替わる。

「これは、私の証言でCCFとJAXAが作成したその後のドラゴニアの姿」

完全にアイスボールとなったドラゴニア。

公転軌道を外れ、次第に太陽から遠ざかっていく。

生命の存在は無かった。



次は名も無い惑星。

ナレーターは男性の声だが、実に堂々とした声。

「地球と同じ程度の、科学技術まで発展したが地殻活動が活性化。

地震と火山の爆発で、大地は灰と火山性ガスに覆われた。

気温は下がり始め寒冷化。

だが、海底を走る割れ目が広がり剥き出しになるマグマ。

海水温は上がり、水蒸気が放出されて火山性ガスが溶存した雨は強酸の雨となる。

更に、大地でも割れ目が広がり溶岩が噴き出す。

今度は、地表温度が上昇し続ける。

地上では、生きていけず半地下を形成してドーム状の居住エリアで暮らす。

耕作用のドームの中で食料を得る為に土を耕す者達がいた。

過酷な条件でも育つ食用になる植物。

人々は必死に生きた。

だが、惑星はそれを許さない。


そして最後の時。

惑星の彼方此方から、文明の遺物『大陸間弾道弾』が無数に打ち上げられ大地に穴を開ける。

無数に注がれる核の雨。

遂に、その熱は惑星を包み込みマグマの海を形成する。

マントルの大流動の再来」


誰もが、赤く燃え盛る惑星から目が離せない。


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