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いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
773/928

773 結婚式そして結婚式  121 御堂の新入り02

首脳会談を挟んだ日本での休暇を終えた門。

(ロウ)は萩月に留まり、表には出なかった。

元から、門が国家主席になるなんて想像したこともない。

前妻と子供がいる事は知ってはいたが、行方がハッキリしていない。

自分と知り合う前の事だから、罪悪感はないが、それでも少し気にかかった。

だが、夫が今の地位になってしまってからは聞かない事にした。

生きていて平和に暮らしている事だけが解っているなら、数ある夫の秘密と一緒に墓まで持っていく。

そう心に決めていた。

夫の秘密の一つとして、紗羅の提案を受け入れて言語能力を身に付けた。

秘書官の江 灯から日本語を教えて貰っていたが、あの苦労は何だったんだとぼやきたくなる。

英会話もフランス語まで身に付けた。

萩月でテーブルマナーも教えて貰い国際舞台に出る自信もついた。

楽しい京都での日々に別れを告げて関空から帰途に着く。

大陸からの特別機を呼ぶ事もなく、新しい各国の大使と共に日本が用意した特別機に乗り込んで帰国した。


帰路京都に着く為に大阪に寄った門。

アンが試しに、ちょっと掃除をする事にした。


今までの国家主席のような大名行列ではなく、突如として市井に現れ市民の生活を堪能する。

今でも、語り草となっているのが【たこ焼き屋】での姿。

道頓堀に秘書官と現れ、たこ焼きに舌鼓を打ち店主と話をする。

誰も彼が大陸の国家主席とは気がつかない。

だが、店を覗き込んだ大陸の観光客が大声を上げてしまいそうになる。

お茶目に、唇に人差し指を当てて、隣に座らせタコ焼きを奢った。

周囲にゴツいボディガードがいないのだ。

大陸から来た初老の男が、娘と一緒に日本に旅行に来ている。

そんな雰囲気だ。

とは言っても、立ち寄る店舗は萩月の娘や男の子に聞いた。

おじさんでも行ける店だ。

危険な訳が無い。

彼らも、立ち寄る際には安全を確認する。

実際、店の出入り口と通用口の前のテーブルには彼等が駄弁っている。

店の店員と仲良く話しているから、もしかしたらココも市井に散らばる在野の陰陽師の店か、アーバインからの移住者なのだろう。


しかし、この観光客の数はどうだ?

道士や他国からやって来て活動している工作員は、ある程度見分けがつく。

特に呪糸蟲使いは(こう)と音が弱点。

だが、今回追加で注意する対象になった工作員はマジに見分けがつかない。

【洗脳】

幼児の頃から刷り込まれた国家への服従。

渡されたバッグの中身が何かとは知らされない。

ただ、行動だけを指示され、それを履行する。

人権侵害になるのかもしれないが、管狐による監視を強めている。


心斎橋のデパートの奥に設けられたセーフハウス。

【転移】でしか入れない。

アンの姿で女性下着売り場から転移で室内に入った()と灯。

中で出迎えたのは沙羅と美耶。

「はぁ〜大陸も人が増えて大変だけど、日本はそれ以上ね!」

「何、もう根を上げたの?」

「だって、『グリコの前でポーズを取って、写真を撮りたい!』

って行動しただけなのに彼方此方に、洗脳を受けた連中が歩いている。

気にならない訳が無いじゃ無い。

常にサトリの能力を使って、洗脳を受けている人間の接近を探知するのよ!」

「戦い慣れしてないからね」

そっけなく美耶が釘を刺す。

「そうね、剣を使った戦いではなく、静かな戦いには慣れていない。

でも、普通はこう言った行動は二人が基本なんでしょ?」

「それが基本ね」

「でも、あいつら5人くらいでたむろしていて、それから分離しながら追いかけてくる」

「それが、道士や他の工作員とは違っているわね」

「今日は、何人?」

「17?いや18だわ。一人は、ワザと逃したけど後を追えている?」

「えぇ、真っ直ぐあの料理店に戻ったわ。

休憩を終えた調理師のような顔をして、もう店で働いている」

「ある意味最強ね・・・・・・・しかし、萩月も大変ね?」

「もうアーバインで、生活する方が楽だわ」


門大人が、大阪にいると言う情報は、早くも様々な国の工作員が知っている。

だから、一瞬だけ門の姿を見せて次の角で姿を変える。

結構、コレに引っかかる。

道士や他国の工作員は追って来ない。

コレが萩月の罠だと見抜いている。

萩月も捕らえたりしない。

そんな事をしていたら、ハンの収容所が溢れてしまう。

【マーク】を打つ!

どうやら、術師がいない様だから、簡単な判別用の陣を足の親指の裏か股間に打っておく。

アジトを見つけて靴に仕込んでおけば浸透して刻まれる。

誰もまだ股間には、手をつけてない様だが・・・・・

見えなくなっているし、皮下組織に食い込ませているから少々痒いだけだ。

水虫と思ってくれれば良い。

「でも良く、こんな物使っていたわね?」

「ドラゴニアは、家畜の管理を厳しくしないといけなかったからね。

実際、雄が狂い出した際には家畜を襲う奴も出た。

もう(ケモノ)よ。

だから、マーカーが消えたら、その近隣に注意を促した。

でも直ぐに、フェロモンを検知して獣になりかけた雄にマークをする。

そんな殺伐とした世界になったわ」

「女は?」

「不思議と何も起こらなかった。

でも無いか・・・・通常の繁殖。

まぁ、ぶっちゃければセックスが無くなったからね。

ファスタバ、ファスラーザみたいな存在がいたらどうだったのかな?」

「で、雄は、その・・・・・性欲処理は?」

「アンドロイド相手よ。

これなら壊してもすぐに回収して、再利用できるから安全よ」

「女は?」

「そこは、ヒミツ!」

「そうね、でも、二人ともいや、三人とも興味が、ありそうにしているんじゃ無い?」

「サポートユニットは、私の記憶として持っているけど秘密にしているわ」

「我らもそうだな」

「お互いの記憶は、知る事は出来ない訳ね?」

「そう制限させていただいています」


「サポちゃん?前から疑問に、思っているんだけど?」

「・・・・・・何でしょうか?沙羅さん」

「どれ位の数の人格と能力、記憶を取り込めるの?」

サポートユニットは、ギクリとした。

彼自身の尽きない疑問。

今までも、残しておきたいと思った人間の人格と記憶はあった。

だが、その人格自体が消えて行く。

いや、消している。

呼び出さなければ、消えて行くのだ。

アン達も新しい身体に慣れる必要が有り、それまで繋がった人格との縁が消える。

門も、その事を知っているからこそ、すぐに消してもらいたいと思っている。

能力がなければサポートユニットの中には残れない。

「そうですね。

まだ、余裕は有りますが、やはり能力を持った者しか残れません。

ですから、門の前の数世代は短命でアスアッドかハイデマンに人格を繕ってもらいました」

「となると、アーバインと陰陽師の術師なら取り込めるのね?」

「それは、何とも・・・・・

まさか、陰陽師の身体に取り込まれろと仰りに?」

「ううん。それは大陸の事を考えれば、そうも出来ない。

モンちゃんは、大陸国家にとって欠かせない人材よ。

彼のオリジナルを消すわけにはいかない」

サポートユニットは、複雑な気分になった。

【天測】を手にできないが、確かに門を失うのは惜しい。

それに、寮監からも言われている。

【国家主席の職務を果たせ!】

「その前に、御堂の主と話した後よ。

もしも、御堂の主が御堂に招く事に、支障があるなら止めるわ。

だから貴方も、勝手に取り込まないで」

「・・・・・そうね。

アーバインには行けないけど、萩月の術者とはうまくやっている。

私は、萩月の術者ならうまくやっていけるわ!」

「アンは、日本での暮らしに憧れているからな・・・・」

「私も、同意する。この国で、海に出て見たい!」

「はぁ〜為政者としては、由々しき発言ですね。

解りました。

国の改革を進めて、国に残って貰える様に頑張ってみましょう」

「ありがとう。解ってくれて」

「それで、木場 直さんのご容体は?」

「もう、長く無いわね。

お父さんも、羽田さんと枕元に付き切りよ。

治癒師の助けで、痛みや苦しみを取り除いてあげているけど・・・・

明日、常義とエリファーナが時間を調整して向かうわ」

「そうですか・・・・・

お会いして見たかったわ。

同じ医師として、そして何より萩月の苦しい時代を支えた影の功労者として・・・・・」

「会って貰いたいけど、無理はできないわ」

「そうですか・・・・・・」


そんな話を聞きながら、サポートユニットは考えていた。

多くの擬似人格と特殊能力を集めて、その先、私はどうなるんだろう?

それから、前から思っていた・・・・・

【魂の融合】は私じゃ無いのか?



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