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いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
771/926

771 間話 門(マ)大人03

山道を行くと白いパジェロが停止していた。

「先に行くな!って言われたよな?」

「あぁ、だけど、誰も乗っていないぞ?」

「あのさ、バスが止まっているのは、この山の尾根を横に突っ切った位置くらいじゃ無いか?」

「ちょっと、地図を出せ!」

「え〜っと、今ここだ!」

「あぁ、やっぱり、この向こうだ!」

「現地の事を、調べているって事か?」

「山の尾根から、見にいっているのか?」

「・・・・・・・多分な」

「どうした?」

「いや、途中でバスに乗せた、あの一家さ」

「あぁ、お前の良い人が居る、山奥の村に帰るって言っていたな?」

「オレも、前来た時にバスが行った後で、3時間歩いてたどりついた」

「バスが止まったし、避難勧告出たから、村に帰ろうとしたんだろう?」

「子供連れでか? この雨の中をか?

オレも急いで3時間だ。この雨と子供連れじゃ恐ろしくって、そんな事は考えない」

「それも、そうだな。

避難勧告出ているんなら村には帰らずに、街の人と高台の街に逃げれば良いのに・・・・」

「・・・・・・・そうか、あの女。オレの流された村に居た女だ」

「なら余計に、逃げるべきだろう?」

「避難が終了したら()大人は何処へ?」

「そりゃ、こんな時間だ。高台の街へ行くだろう?

・・・・・・まさか!」

「あぁ、あの女の家族も、逃げはしたが()大人の事を【疫病神】ってなじっていた一家だ」

「だから、雨の中門大人が居る高台の街よりは、山奥の村が安全だと!」

「そういう、連中がいたんだ!」

「クソ!」

「それは、困りましたね?」

「「()大人!!」」

「どちらに!」

「現場ですよ!」

「えっ!」

「話は後です。

山奥の村から、向こうに抜けますよ。

心配しなくても、皆無事です。

食事もできましたし、何より頼りになる娘が居ます」

「娘? 灯ですか?」

「えぇ、彼女がいれば、この省は、もっと安全で豊かな省になります。

その為にも、この先の村で病人や怪我人が出ないようにして道路を守りましょう。

そして、トンネルに残された人々を、一人残らず助け出して笑顔で山の村で過ごさせましょう!」

門大人が、耳を澄ます様な仕草をした。

「時間ですね」

向こうの谷に出来た土砂ダムが決壊して、濁流が流れる音がした。

地響きもする。

「トンネルの中の人々には、予め土砂ダムの事は知らせておきました。

出来た人々で、燃料タンクが引火しないように燃料を抜いておいてくれました」

「「あっ!」」

「そうですね?

軍人なら、先に気がつくべきでしたね?

でも大丈夫です。

有能な娘が、バス全体をトンネル内に入れなかったから、隙間が保てて空気に流れができています。

バス全体を中に入れたら、火が出たり燃料が漏れて息苦しくなります

さぁ!行きましょう」

「「あっ、はい!」」

若い二人は、後方から後続のトラックのヘッドライトを確認して()の後に続いた。

言葉が出ない。

「仙人?」

「あぁ、そうかも知れん」

「燃料の匂い、気付いていたか?」

「あぁ、臭いなとは思っていた」

「迂闊だったな」

「あぁ、鍛錬が足りない」

ポツリと呟く二人。

先程の()大人は、いつもの事務官のような雰囲気ではなく、軍人の様な、それでいて知恵者の様な姿に見えた。


雨は、益々ひどくなる。


先に山村に入る()大人。

ここは、周囲に土砂崩れを起こす様な場所はないが、それでも雨量はとんでも無かった。

「門大人。お久しぶりです」

「これは村長。何かありましたか?」

「はい。村人の二人の子供連れの女が、下の街から逃げ出せたかを心配しております」

「その、親子でしたら無事ですよ」

「おお、高台の街へ逃げているのですね!」

村長と、その夫の顔に笑顔が戻る。

「いや残念ながら、私の不徳で、この村に向かっています」

「そんな馬鹿な!バスは欠便しています。

まさか、この雨の中を歩いて帰ってきているのですか?」

「いえ、この先に向かうバスに乗せてもらっていますよ」

「はっ!・・・・・あの馬鹿!又、あの作り話を!」済みません。門大人!」

「奥様を、責めないでください。

幸い、この先の研修施設に向かっていた学生がいまして、省で準備したバスに乗せてもらっています。

ただ、そのバスが途中で山崩れで塞がれたトンネルで行き止めにされています」

「そんな!では急いで救援を出しましょう!」

村長の声に、夫が準備をしだす。

「そうですね。

ですが、一気に運びたいのでトラックを二台準備しました。

着きますね」

村人にも、山肌を降りてくるトラックのヘッドライトが見えた。

「食糧や医薬品を持ってきています。

この雨です。

こちら側の山越えの道も、いつ塞がるか解りません。

集会場を開けて準備してください。

秀麗さん。いますか?」

「はい!ここに!」

「お久しぶりですね。

先頭のトラックに、あなたの大事な人が乗っています。

迎えてください」

トラックが停車して、助手席から男が飛び出して来た。

「エッ! (エン) !」

「秀麗!」

抱き合う二人。

「チェ! 良いな〜」

「君も、相手を探せば良いだけですよ。

君なら引き手数多(あまた)でしょうに?

軍にいたなんて嘘でしょう?

翠さんの命令ですか?」

「はぁ〜もう、バレてやんの!」

「苑さんに、ここは任せて一緒に山を降りますよ。

やる事は解っていますね?

盧父!」

「お呼びでしょうか?」

二台目の、幌付きトラックを運転してきた青年団の男が答えた。

「荷物を下ろしたら、降りて来てください。

途中でUターンして降りてくる様に!

そこの男性に、奥様と子供に先に合わせますから彼を案内に助手席に乗せて!

皆を乗せたらすぐに村へ戻って。

後続のトラックも同じ様に行動してください。

お願いします。

残り時間は2時間です」

「わかりました。

主人(あるじ)、お気をつけてください」

「ありがとう。

さぁ、行きますよ。董卓(とうたく)

「本名まで・・・・・はい、ご主人様!」


その後、先にトンネルに山頂側から接近して、翠の部下である董卓を使い山腹側の土砂を抜いた。

排水溝に流れ混む水を、谷川に流す様にして排水溝の部分から閉じ込められていた乗客を助け出した。

とんでもない量の土砂だったが、アンの転移陣に巻き込む様にして谷へ落とした結果だ。

盧父が直近まで近づけたトラックに乗り込ませた。

泣く山の村の女。

()に頭を下げて、夫と共に荷台に乗り込んだ。

女学生達が慰める。

そして、涙の意味を聞いて複雑な表情をしたが納得した。

盧父は助手席に子供達を乗せて、山道を滑らかに進んで村へ帰る。

もう一台も同じ様に降りて来て、運転手と男性陣を積み込んだ。

何故か取り残された(あかり)


「初めまして、城山 (あかり)さん」

(あかり)は、外で音がしていたが岩や土砂を取り除いた門の術を見ていない。

と言うか、アンは見えない様にしていた。

アンにかかれば、決まった方向の視界を防ぐなどお手の物だ。

灯には、董卓にそんな術は使えない事が解っていたから、残された土砂の痕から目の前の門が、とんでもない術師と解っていた。

それこそ、岩屋友嗣クラス。

「どんな人かと思っていたけど、普通の事務畑のおじさんね。

期待して損した!」

「コレは厳しいわね。こっちじゃどう?」

「ゲッツ!」

収納を使って衣装を変えて、現れたのは筋骨逞しい男性。

しかも、翼と尻尾がある。

「な、なんなのよ!夢?」

横には、腰が抜けた董卓。

「さぁ、行きますよ!」

竜人の姿は、美しい女性の姿に!

両手を広げて、車を浮かせて山村の方向へ向けた。

「さぁ乗って!山が崩れます!」

ハンドルを握る姿は、どこかの遊び人?

と思わせる姿のハイデマン。

巧みなハンドル捌きで、たちまち山村に到着した。

運転席を降りる()

「主人ご無事で・・・・」

先行していた盧父の声が終わると同時に、麓の方から土砂崩れの音が響いて来た。

トンネルの上下が、完全に埋まった音だった。

「さて、さて、国からどれ位、予算を引っ張って来れますかね?」

雨の車外で、濡れながら笑う()の姿は大きく見えた。


門大人は、この山村でやって来た翠と約束をした。

先ずは、引き続き先妻と子供の安全を保障する事。

コレからも、国を守る事。

そして、門の事は萩月には伏せておく事。

「まだ、こちらの準備が整っていません」

「確かに。もう少し上にのぼって頂かないと困ります」

「善処します。そちらも引き続き、腐れ道士の方をお願いします。

今、怪しいのは、この市とこの港です・・・・・・」

翠は、彼の情報収集能力が異常なほどに高い事に呆れていた。


董卓は、翠との間を結ぶ内政担当。

内政というより内戦担当とも言われる。


今でも、初めて出会った雨の日の事を思い出して妻と笑い合う。

同じ職場に妻がいる。

いくつになっても、若い妻だ。

キツイところもあるが、可愛いもんだ。

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