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いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
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764 結婚式そして結婚式  115 首脳会談01

新しい体制になった隣国の国家主席が日本を訪れていた。

しかも、友人に会う為とお忍びで入国していた。

京都で数日過ごしてからの首脳会談だ。


当然、そんな事が許される訳がないのだが、今回、政府の対応が落ち着いている。

()は専用機を使わず、同行する随行員も僅かで日本に駐在している大使館員の出迎え、同行もさせなかった。

まだ、新たな大使や駐在員の使命をしていないのが、その理由だが主要国との国交を見直す意思表示が伺えた。

予め予定されていたのだろう。

米軍の厚木基地に、機体番号を隠した白一色のPJ(HJ)が着陸する。

キッシンが手を回した。

「今回は、割と素直に着陸してくれる様ですね?」

「そうか、お前もパイロットが誰かわかった様だな」

「御室美咲さんでしょう?あの声は忘れられませんよ」

「あぁ、彼女の息子も御室 航も凄腕だが、やはり彼女には朝霧 (ひろし)があっているよ」

「でも、大陸の国家主席が搭乗するPJを、関空から操縦するのが日本人と言うのも事件ですね。

しかも、厚木基地に着陸だなんて!」

「表向きは『久しぶりに、富士山を上空から見たい』と言う要望だが・・・・

彼の、意志の表れだ。

京都にいたなら、新幹線で東京に来るのが、警備上の意味でも当たり前だが、あえて関空まで移動して

日本の民間機材を使い、米軍の厚木基地に着陸して日本の警察組織の警護を受ける。

今までの大陸の考えでは出来ない事だ。

米国と日本への信頼の意思表示だ。

大陸の、この動きは東アジア諸国だけではなく全世界に伝わるぞ!

世界が変わる。

とんでもない、役者だよ!今回の国家主席は!」

「成程、東一尉はそう考えるか?」

横に座っていた空軍中尉が、管制塔から担当する空域から報道ヘリが去っていった事を確認して声を交わす。

「私は単純に、富士山が上空から見たい。

その欲求を叶えただけにすぎないとおもう。

違うかい?

今回の世界的な異常事態を収めたのは、『国連の外部機関』と噂されているが、我が太平洋艦隊も一役買った事は間違いない。

新型空母 キッシンの行動がそれを表しているからね!

キッシンやエルベが噛んでいる。

違うかな?

残念なのは、日本にはそういった強力なリーダーになれる人物がいない事かな?」

「良く言いますね!

我々も今回の件で、派遣された自衛官ですよ」

東についてきた中林が反抗する。

「それでもだ。

日本の政治体制が、(むれ)を統率した者が代表になるだけの指導者じゃ、いつまで経ってもお山の大将でしかない」

「・・・・・中林、今の旗本首相が奈良県東部地震から続いた、日本大停電の対応を指揮したと思っているか?」

「いえ、それは無いですね。

首相官邸からの指示は速かったが、それ以上に現場にもたらされた直接の指示が的確で速かった。

関空沖で停泊した大型クルーズ船と、それに商船していた女性達が素早くボランティアとして被災地に入ってくれた。物資の搬送も縦割り行政のこの国では出来ない動きでしたよ。

京都からも彼女達と協力した学生もいたと聞いています。

大停電の際にも、何よりJAXAから派遣されたOG、OBからの資料が的確だった。

それこそ、トンネル内の排水溝や廃校になった小学校のプールまで使って、上流のダムから送る冷却水に使う配管と、その浄化設備を24時間かからずに完成させましたからね。

二つの大災害において、民間の動きが速く的確で助かった。

そう、現場の自衛官から報告を聞きました」

「その首相官邸付きの自衛官に、指示を出したのは羽田 毅さんだよ」

「羽田! あの、釧路の小さな駐屯地に、自ら志願して行ったというエリートですか?」

「あぁ、間違い無くトップになれた逸材だ。

息子が、二人いるけどコイツらも逸材だ」

「なんだ、ハダボーイズの事か?」

航空管制を終えた、別の米軍士官が話しかけて来た。

「立ち聞きしてすまないな。ジミー・ロイスだ。

ロイスで良い。

ハダの名前が出たから、出たからついな」

「羽田兄弟の話を知っているんですか?」

「あぁ、彼らの米軍艦載機の指導教官は私だよ」

「それは、ありがとうございます!」

「あはは、こっちが礼を言いたい。

同じ教育隊には、彼らよりも長い事パイロットを続けていた奴が多くてな!

【シュミレーターボーイズ】がやって来たと馬鹿にしていたんだが、次々と実機での空戦訓練で撃破されたよ。

判断力と行動力そして何より空間把握能力。

見ているこっちが、位置を間違えそうになるような動きの中でも、常に自分の位置と体勢そして対地速度の把握に優れていた。

仮想敵になった奴が可哀想だったよ。

どんなに裏をかいても彼らのペアには敵わない。

今最新鋭機だけでは無く次世代機に乗せてやりたいよ。

間違い無く、エースになれる。

済まないが、どちらかをアメリカ空軍に残したい。

そう思っている」

「御室 航にも声かけたでしょう?」

「バレていたか! あぁ、三沢基地で彼にはF-35AとF35-Bを自由にさせているよ。

表向きは、我が国のパイロットを装っているがね」

「みたいですね。

母親の美咲が、羨ましがっていましたよ。

特にF-35Bですね。VTOL機はそうそう無いですからね?」

「御室美咲って、さっきの特別機のパイロットだな?」

「ですが?」

「そうか、航の母親か!なら民間機に移っても、あの腕なのは理解できる。

ここからじゃ見えないし、この映像を見て驚くしかなかったが見てみるか?」

タブレットを持ってこらせて、映像を選択した。

そこには、特別機の着陸から格納庫までの映像が映し出される。

「知っての通り、厚木基地は周辺の市と神奈川県との間に、騒音防止に関する取り決めがある。

だから、進入コースと高度に規制があるんだ。

だがこの特別機。

勿論、制限空域内ではあるが、進入角度ギリギリでこの基地に入って来た。

仮想敵に進入経路から回り込まれないようにする意図がある」

やはり、見る者が違うと侵入角度にもそのパイロットの意思を見出す。

「だけど、この着陸。

乗客は、着陸した事にも気がつかないほどだろう。

そして注目は、これからだ。

A格納庫の中で、スキッドターンをかました!」

「スキッドターン?」

「あぁ、済まない。車やスキーなんかでやる派手なターンの事だ」

「でも、H・J(ホンダジェット)ですよ?不可能です!」

「だが、君らはこれをどう説明するのかね?」

映像には、格納庫内に入って来た機体が一瞬ブレたと思ったら、次の瞬間には格納庫の奥で方向を転換して、いつでも飛び出せるように向きを扉側に変えていた。

((ひろし)の野郎!)

東には、朝霧 宙がやった事がわかった。

(ギアの下に【転送陣】を噛ませて横滑りさせやがった!)

出来る事ではないが、無理にでもこんな動きをするならジェットエンジの、どちらの出力を反転させる必要があるが、そんな音は聞こえなかった。

複数の転送陣を同時展開できる宙の仕業。

「あはは、こんな事出来るんですか?」

白々しく答えておく。

「今、米軍関係者が調べているよ。

パイロットは口を閉ざしているがね」


きっとコパイの宙が、必死に堪えているだろう。


そんな、大騒ぎを他所に()は厚木基地からヘリで都内に向かい、そこから警察の護衛で首相官邸に入った。

会談前の握手と挨拶の映像は流されたが、会談の様子は非公開とされた。




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