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いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
750/926

750 間話 アクション・スタート09

ハイデマンは両親に長い不義理を謝罪したが、それよりも友人アーロンの窮状を伝えた。

思った通りに祖先がドラウド帝国からの依頼で、ドラーザの狩猟本能とファスタバ喰い、同族喰いの衝動を抑える為の【制御薬】の研究開発は終わっていて製剤工場も閉鎖していた。

精製した物が手元と管理局に残っているが、全ての軍の兵士には足りない。

憲兵隊にも渡してあるはずだが、多くの者が胸の鱗を抜いて居るから必要が無くなって配給もされていない。

アーロンは責任者なので、憲兵隊の解散までは胸の鱗を付けておくつもりだった様だ。

元々、ドラーザの本能が薄い緑の鱗の家系。

だから、服用したことが無いのだろう。


月面基地のコロニー艦には薬が積まれている。

アスアッドも、ファスタバとの生活に慣れていた。

在庫切れしているのではないか?

急ぎ、王城の高速エァーカーを使い手元にある分は研究所に運ぶし、管理局からも向かわせる。

両親が昔の仲間を連れて研究所に来てくれる事になった。

こうなると、残されていたアルコール類が役に立つ。


娘の様子を聞いたが出掛けているそうだ。

もう、同じ年頃の子供はほとんど残っていないと思うが、手芸を習いに行っているという。

『先方に預かってもらう様に言っておく』

と、何か別の無線電話で話をする父。


屋敷に到着すると心配そうな憲兵隊員が出迎えてくれた。

送られて来た資料を元に、憲兵隊を使って製薬設備を組み立てていく。

学園で学んで来ただけの事はある。

手際がいい。

聴くと学園の閉鎖寸前の隊員たちだ。

皆若い。


「学園に行ってみたかったな」

「でも、やはり御両親の教育が素晴らしかったんですね。

凄い知識量です」

隊員たちとガラス機器の洗浄を続けながら会話を交わす。


あぁ、金貸しなんかになるんじゃなかった。

研究に飽き両親の元を離れた。

両親も『余生を海を見ながら過ごしたい』

と、東の島々に移ると言って屋敷を一緒に出たのだった。

妻と知り合った事も大きい。

子供も欲しい。

ドラーザの貴族なんて、もう多くは残っていなかった。

だが、思いの外に商才があった様で預金残高が増えていくのが面白くって、つい家庭を疎かにした。

もう充分金もあり、移住プロジェクトの報告書を事務所で読む楽しみもあったのに・・・・・

まるで、影で社会を支えているヒーロー気分だった。

その報告書に記載されていた、前から疑念を抱いていた大型艦。

一気に運びたいと他の大陸国に押されて、ろくすっぽ実証実験もせずに連続運用した三隻。

引き返す事も出来ずに、星の海に消えた家族。


救えた・・・・・


「ハイデマン!」

「あぁ〜私のハイデマン!」

両親が抱きついて来た。

しばし、抱き合ったが直ぐに制御薬を受け取って、残党狩りに行ったバカに連絡を取りドラーザの隊員に薬を預けた。

アスアッドにも連絡を取らなくては、王都に残る者達が、今度は夜を味方にした凶悪なドラーザに殺される。

管理局からは自動操縦のエァーカーがやって来た。

「結構、残っているな」

「でも、一日三回。飲む必要があるわ。

朝と昼過ぎ、そして夕刻。

夕刻の薬は特に重要。

夜目が効く様になっているなら、狩りをしに行きかねないわ。

睡眠薬と併用して、今まで通り寝てもらうか鱗を抜くわ」

「母さん。友人の鱗を抜いてくれるか?」

「アーロンね。えぇ、任せて。早いほうがいいわ。

今まで、抑えて来た分、心理汚染が早いわ。

アスアッドの軍人も同様ね」


「しかし、夜目が効かないのは催眠術だったとは・・・・・

アスアッドは、どうしてその事を知ったのだろう?

アスアッドには、会わないといけないな」

父の独り言に頷いた。



その頃、アスアッドは兵と共に王城に帰っていた。

自分に取り憑いた、この胸の赤い球と話をしなくてはなるまい。

人払いをして竜人化を解き、ベッドに横たわる。


『生きている・・・・・しかも、夜に目が開いている』

『深層心理を弄るとは・・・・寮監もすごい事をする』

『寮監に連れてこられたんだよな?』

『あぁ、前にも言ったかもしれないが、君らの移住先で君らの元になった竜人の女性の一生をサポートした。

それが、ほんの数日前だ』

『50年近くかかる距離を一瞬なんだな』

『あぁ、まだその事については理解できていない』

『で、どうなんだ向こうの様子は?』

『君の近親者も元気にしていた。

次世代も生まれて来ていたが、寮監は学園の再興は考えていない。

だから、ドラーザの羽は生えて来ない』

『そうか・・・・・だが、狂うんじゃなかったか?』

『フォルム家の例が有るだろう?』

『赤子の時に鱗を抜くか・・・・・』

『代を重ねれば、本能は消えていくそうだ』

『本能と言うものは、環境で書き換えられるか?

そうか、それを聞いて安心した』

『お前は、行かないのか?』

『知らないのか?年齢制限があるじゃ無いか?』

『王族は行けるんだろう?』

『あぁ、だが今更、この鱗を抜く気にはなれない』

『そうだな・・・・・』

『もうしばらく付き合ってくれ。

この計画を邪魔しそうな奴をドームに近づけさせたく無い』

『それじゃ、三隻のコロニー艦の事は?』

『知っている。

胸に剣を突き立てる前に壊して湖に投げ込んだが、携帯無線機で報告を受けている。

又聞きだがな』

『協力者がいるんだ』

『あぁ、憲兵隊にも居るし金貸しにも居る』

『金貸し?

元はアスアッドに滅ぼされたエルベと言う国の王族の直系だ。

さっき言っていただろう?

フォルム家の事だ。

ハイデマンと言う。

次の便あたりで向こうに行くだろう』

『じゃあ・・・・・』

『あぁ、知っている。

家族があのコロニー艦の事故に巻き込まれたんだろう?

お悔やみ言ったけど、実感がない様だな。

なぜか、悲しくないそうだ』

『連絡取れないか?』

『どうしてだ?』

『済まんが、次は彼に移りたい』

『・・・・・・そうだな。

この星に残る俺の最後にまで突き合わせる訳にはいかないからな。

良いだろう。

憲兵隊から連絡を取らせ・・・・・・』

『・・・・・・・?オイ!なんだ!この感情は!』

『ド、ドラーザの本能って奴だ!』

『悪いが、この本能はカットするぞ!』

『あぁ、頼む』

『・・・・・・・・大丈夫か?』

『あぁ、薬が有るんだ。それを飲み忘れている。

でも、こんなにキツイ事はなくって、長いこと薬の服用は誰もしていなかったんだ。

ファスタバ狩りや、その肉を食う欲求、そして暴力と陵辱の欲求は長い事目覚め無かった。

反乱軍の中にはコイツを思い出して、村々を襲っているがな・・・・・

兵たちは大丈夫か?』

『今頃、疲れて眠っているんじゃないか?』

アスアッドは時計を見た。

深夜2時。

ドラーザは絶対眠っている時間だ。

ホッとして居ると、悲鳴が聞こえた。

慌てて起き上がりテラスに出る。

王城からドラーザが兵装を殴り捨て、裸で空を舞っていた。

吠えるドラーザ!

しまった!

夜目が効くドラーザ!を産み出してしまった!


「ファスタバ、ファスラーザは、安全な場所に移動しろ!

ドラーザが襲ってくる!

これはアスアッド王からの命令だ!」

アスアッドの悲痛な叫びが、マイクを通して全世帯に届いた。


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