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いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
738/928

738 結婚式そして結婚式 108後始末 10 慰労会

様々な報道関係から、又政府関係者からCCF、キッシン、エルベ達は取材、証言の申し込みを受けた。

が彼らは表に出てこなかった。

こう言う時は、ここが一番安全とウルマに来ていた。


定時的な発表は豪が任されていて、ほぼニューヨークに聳え立つCCFビルの中からネットだけで対応していた。

CIAからの召喚状も届いていない。

米国大統領も沈黙を保ったままだ。


豪は、もちろん自宅には帰れない。

自宅は借家にする為の改装中だ。

それでも撮影クルーは接触してくる。

『あの【ファルトン】と言う宇宙人との接触した、何かが残っているかもしれない』

そう思っている様だ。

近所の監視カメラの映像を高値で買い、上空からのドローン映像が残っていないかを探る。

あの話だと、接触自体は30年以上前、南境大陸に向かって宇宙船が押し寄せていたのは遡れば10年以上前からだ。

アマチュア天文家が、南十字星方向に影が見えたとの報告が上がったのもその頃からだ!

探せ!その頃の情報を!

JAXAのロケット打ち上げ失敗も南十字星方向だ!

やはりJAXAも絡んでいる!

何故!NASAよりも対応が早い!

ファッブル天文台は?

全ての、ここ30年の情報が洗いざらい調べられ、【青木 忍】と言う天文学者の名まであがる。

「ふぇ〜凄いね。パパまで行き着いちゃったよ」

ネットで調べて居るスピカが呆れていた。

ネットの検索で行方不明の名前が躍る。

一応、未だJAXAには籍を残してはいたが入所している気配がない。

研究員を捕まえて話を聞いても、海外出張中です。と答えるのみ。

「あはは、ファーストコンタクトはパパで、ファルトン星人に誘拐された!なんて出ているよ!

へぇ〜パパ!こんな格好で天文台に籠っていたんだ!

随分太っていたんだね?」

「お母さんのおかげさ。しかし、どっから見つけて来たんだ?もう何でもありだな」

ドテラ姿で反射式望遠鏡を覗き込んでいる。

積み上がったカップ麺の空容器。

「お腹すいたね。カップ麺。食べたくならない?」

「そうだな。シューラにも声かけてくれ。俺はカレー!ライスも!」

「もう、ライスはダメ!又、太るわよ!」

そんな、大騒ぎをしながら長野の山奥の自宅で星を見ながら過ごす。



「何もないよ。

ご覧の通り家具は一切無いし、荷物だってトイレットペーパーすら残っていない。

猫の食べ残しのカリカリがドアの隙間にあったくらいだ。

言っておくが指紋ひとつ残っていないから、もしも指紋があったらテメ〜達だからな?」

「ここはどうなるんだ?」

「これだけの立派な家だ。貸家にするんだよ」

「誰が借りるの?」

「知らないよ。俺は不動産屋じゃない。

九鬼に聞いてくれ!」

「九鬼って萩月グループか!」

「あぁ、そうだ。だが、個人情報だぜ?

もしも聴きに行って、その後盗撮なんぞしたら即訴えられる。

覚悟しておけ?」

大工の棟梁が笑っていた。


実は、この家を借りるのは洋樹達だ。

洋樹に未彩、明菜、香織、真弓。

そして新たに産まれる未彩と洋樹の子供。

そして、西郷卓也と美玖。

充分全員が住める広さと離れがある。

中央の庭は、かけっこくらいならできる広さだ。

この場所で借りるとすると、一年の賃料で日本では一軒買える。

「忙しいから出て行ってくれ」

と追い出される。


現在、咲耶も二人の娘も日本にいた。

長野のJAXAの研究所。

その近くに家を持っていた。

認識阻害で日本人にしか見えないし全員日本語は流暢。

家庭用の果樹園を持ち、老人達が手伝ってくれる。

今日は、オールディズの慰労会だ。

もう、紫の霧の話は何処かに飛んで、何とか南極大陸に上陸できないかを考えている馬鹿なテレビ局とユーチューバがオーストラリアで爪をかじっていた。

天候の回復が見込めない。


日本政府にも、もちろんCCFとの関係を聞かれるが、ネコの目の様に変わる指導者の言論。

キッシン達の信頼が受けれていない。

梓が首相になったら考えてもいいと言われているが、日本の政府に物事を任せても上手くいかない。

猫に失礼。

そうまで言われてしまう。

猫好きが加速していて、

亡くなった高齢猫の墓を、この長野の自宅に置いて保護猫を連れて帰って呆れ返られていた。

『こんな辛い別れをするくらいなら、もう飼わない!』

なんて言っていたのにね?

『何もせずに見殺しにも出来ないんだよ』

今も、二匹の猫が大勢の老人達をリンゴの木の棚の上から見下ろしていた。

「冷えたモモがありますよ!」

そう声がかかりテーブルに出された。

日本酒が好きな梓にとっても、桃は好物のひとつ。

北海道や青森、秋田そして新潟から土産に持ち込まれた日本酒。

そいつを冷やした冷蔵庫を横目で見ながら、梓がフォークを手に取る。

今日は、アーバインを新潟に回した北村夫婦も新潟から車でやって来ていた。

北村の両親も一緒だ。

アーバインの旅が性に合ったらしく、長崎のドッグ入りまで過ごす旅になっていた。

萩月常義とエリファーナも、もちろん参加していた。

「美味しいわね!

「あぁ、少し時期は早いが、丁寧な土作りのせいだろう充分に甘い」

常義がエリファーナに、口に入れて貰って嬉しそうだ。

「信じられないなぁ〜」

「あぁ、まさかエリファーナ様が、ここで俺たちと食事をするなんて!」

オールディズのメンバーが、その姿に見惚れている。

「あら、そうですの?

私も、嬉しくて仕方ありませんわ!」

今日のエリファーナは、白いブラウスにジーンズ姿だ。

颯爽とスニーカーで山道を登って来た。

回り込む様な車道もあって、北村の両親は、そちらを使ったがそれは仕方がない。

だいぶ良くはなっているが完治することはない。

でも、幸せそうだ。

「あのまま施設にいたら、もう寝たっきりだったかもしれないわね」

そう言って笑う夫婦。

アーバインの若者が、日本に移住する為の教科書の見直しや、地方毎の食習慣を教えるデータをまとめている。

今日も出されているのは、山形のお菓子を再現した物だった。

「この深緑色の羊羹。不思議ですね」

「海藻の味がする」

「『呉竹』と言って昔作られていた羊羹です。

1830年代に創業開始したお店でしたが、一度、お店を締められました。

クラウドファンディングで復活しています。

続くと良いと、お出ししました」

「これは、鼻に抜ける海の味が良い」

「ほのかに感じる塩気が良い」


「こちらは、新潟小千谷市から。呉竹と同じ様に蕎麦に布海苔を練り込んだ【へき蕎麦】です」

「へき蕎麦?」

「面白いですね!この盛り付け?」

「【へき】と言うのは、こう言った木で出来た餅などを収納する箱の蓋の事で、そこに茹で上がった蕎麦を、こうしてひねっておくんです」

北村の母は、見事な手捌きで蕎麦を並べて見せた。

流石に使っているのはへきでは無いが、桜の木から切り出した厚い板だ。

各地で、ソメイヨシノが寿命を迎えて多くが着られている。

この板もこの山に入る道筋に花を長年咲かせていた老木。

切り倒すと言うので梓が買い取り、製材所で加工して貰った。

テーブルや椅子になっている。

その中でもこの一枚は、よく外での食事に皿代わりに使うお気に入りだ。

北村にも何枚か分けて持って帰って貰う準備をしておいた。

「これは美味しい」

「特に、この辺りは信濃蕎麦で有名だがこれも良いな」

「俺は長岡の生まれで、へき蕎麦は知っているが中々食べないんだ」

「そうですよね。全国に知られているわけではありませんから。

でも、地元で愛されていた食文化は大事にしたいです」

常義は、蕎麦好きなので普段は信濃蕎麦を食する。

うどんは関西の出汁だが、蕎麦には江戸の濃い汁が好きだ。

エリファーナも蕎麦好きになって来ていて、塩で食べたりする。

だが、今日は食べ比べで唸っていた。

「時には、お取り寄せだな」

「えぇ、これは是非に」

「帰りには、お店で食べていきましょう。

信濃川を見ながら食べるヤナであがる鮎も美味いですよ」

北村が話を振って来た。

「良いわね。お米も美味しいのよね?」

「あぁ、日本一と言われる穀倉地帯だ。

これもお取り寄せしてウルマに送ってやるか?」

「良いわね」

「そしたら、キッシンさんが帰って来ちゃいますよ。

あの方。おむすびに目が無いから」

そんな話をしながら、老人達の慰労会が進む。


結局、彼達が組んだ非常用設備が役に立ったのかは不明だが、それでもそのまま置かれている。

地震や非常時の対応に使える。

塩ビパイプはステンレス管に置き換えられていく事になった。

「しかし、あの距離を歩いていたのかミワちゃん?」

「あそこの山。熊が出るだろう?」

「そうだね。もう、ラジオじゃ怯えもしない。

人を弱い立場だと知っているからね。

それに、食べ物が無いのは間違いないよ。

で、せっかく開拓した民家が朽ち果てる。

柿の木、栗の木が残っている。

人が手がけた木だ。

しばらくの間は身の入りもいいし、収穫が楽な様に植えられている。

熊にとっては人間が残して行った食堂だ。

だから、次第に山を降りてくる。

すると、人間がいる場所が分かるけど撃って来ない。

狩るものと狩られるものの立場の逆転。

ゴミを捨て餌付けをしてしまうバカなハイカー。

水筒に残ったジュースなんかも、草むらにこぼすだろう?

残っていたら舐めてみるんだ。

彼らは、食生活が人間に近づいてしまった。

もう、戻れないよ。

美味しんだもの。

ドングリよりも栗、栗よりも菓子。

そうなってくる。

排泄物が少なくてカロリーが高いもの消化も良くて、柔らかい肉になる。

毛が生えていない人間はご馳走だよ」


ミワと言われた女性は、左腕に残った爪の跡を見せた。

「この時は運が良かった。

ハンターが追って来ていた。

偶々そこに遭遇して、熊に退けと突き飛ばされた」

「ミワちゃん・・・・・・」

「何とかしてやりたいね。

今回の工事でも、パイプは出来るだけ沢沿いに張ってもらっている。

私も彼らの生息圏を脅かしたく無い。

パイプの下にはサワガニが隠れる場所が出来る。

ソイツを食ってほしい。

熊は結局撃たれたよ。

無理もない。

あれだけ、民家のそばにいたんじゃね」

「ここの山にも熊は出る。

だから、収穫出来るものは収穫し尽くす様にしているが、

周辺の農家では取りきれずに、そのままで時期を終わる畑もあるんだ。

前は、それでも良かった。

カラスや鳥が食う分しか残らなかったからな。

だが、今はその量が半端じゃ無いんだ。

ジャムに、したりしているが・・・・・・

それが、熊や外来種のハクビジンやアライグマを呼ぶ」

「私も考えてみます。

実りを大事にする事が地域と自然。

お互いに大事な事だと思いますから!」

北村夫婦の声に頷く老人達だった。




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