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いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
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736 結婚式そして結婚式 106 後始末 08魁(カイ)

道士達は【呪旗】と呼ばれる大地の穢れを吸って術を操る集団を知っていた。

元は同じ道士の流れを汲む一門。

法力に近い力の元を扱っていたが、その喪失が呪術に向かって呪旗を産み出した。

彼等は民衆からは、戦場等で穢れてしまった大地を浄化してくれる善行をする集団と捉えられていた。

事実、僧衣とも取れる衣を纏い、穢れた大地に杖を突き刺し術を使う。

大地の汚れが杖に吸われていくと、その先端から旗のように呪詛が広がり風に舞う。

こうして、血と怨念に穢された大地は再生し息を吹き返す。

が、実は戦を招き大地を汚して、己たちの欲望に使う為に更なる戦を招く。

一部の者には解っていた。

為政者の中には、彼等を戦で荒れ果てた土地へ派遣して呪詛の塊を集めた。

それが、人を操り人を恨み憎しみ合う力に使える事を知って、そしてどこからか現れた人に巣喰い人形にする呪糸蟲を産み出すと知った。

呪旗を操る集団は道士とは対立。


黄、柳、そして仭。

改革という名の迫害に遭い、黄と柳は大陸に潜み、逃亡先の台湾に渡り独自の術を使う。


仭は、時代に流れに合わせて近代化学を取り込み、その融合を考える集団。

火薬を考えたのもそうだし、火矢と呼ばれるロケット弾を発明したのもこの一族。

そうなったのも、多く門人がいくつもの術が使えなくなっていた。

特に情報戦に特化していた【符人(フヒト)

人の影に潜み、その行いを監視する。

特に呪詛に反応して呪旗を扱う者に多く集まる。

その為、呪糸蟲持ちを狩る事に専念出来た。

街中に放っておけば術師には【符人】が取り憑いた者は見分けがつく。

影が揺らぐ。

ただ、近代の発展は彼等に苦難を強要した。

移動だ。

どんなに呪旗使いを見つけても、移動されて仕舞えば【符人】とのつながりが消え。

遂には消失してしまう。

【符人】が影に取り憑いた事を知る方法が編み出されたのも痛手だ。

街を行く際にガラス窓に映る自分の背後に気を遣えば良いだけだ。

【符人】が影に潜めば背後の景色が揺らぐ。

術師としての力を失っていくが、頭脳が明晰な者だけは多く、当主の仭は物理学をおさめて天才と言わしめた。

海外の原子炉を参考にしたにせよ、電力の必要性を感じていた彼は自ら設計を重ねて、当時としては革新的な原子力発電所を設計した。

第一基原子炉の着工から竣工まで、現地に寝泊まりするようにして工事を指揮した。

当然、後に続いてもう二基の原子炉も続いて着工した。

だが、ちょっとした手違い・・・・・

いや、恐らく工作されていた旧式の保護服。

剥き出しになって落ちて来た燃料棒。

線量計が一気に振り切った。

被曝してしまう。

その危険性は熟知していた。

その為に、様々な安全面の強化をしていた。

仭は入院を余儀なくされ、第二基以降の工事は現地に委ねられた。

退院後、第三基から折をみては現地には足を運んだが、第一基と違い手抜きがある。

厳しく指導をして第三基は竣工した。

こうなると、営業運転に入っている第二基が不安になる。

やはりその不安は的中。

規格外の配管。

工場で仕上げて来るべき溶接配管が、現地で手溶接で組み立てられていた。

角度が歪な冷却水配管。

確かに接続されているが・・・・・

有る流量域になると振動が発生する。

周囲の配管に接触して、あちらこちらで唸り音が聞こえる。

止めて交換したいが、逼迫した電力需要で計画停電もままならない。

取り敢えず唸りを生じている配管に、緩衝材を巻き付けて音を抑えた。

細かな振動は溶接部分に金属疲労を招く恐れがある。

事情聴取をして驚くべき事が判明。

溶接配管を持ち込んだが、中間のL字配管の角度が小さくなっていた。

持ち帰りか新たに製作する事になっていたが、現地のトラックの荷台で配管に入るステンレス配管を差し込んで無理やり角度を広げたそうだ。

現品を確認すると明らかに途中で角度が変わっていて、振動はその部分から発生している。

運転を止めて周囲の溶接部分の超音波探傷をしなくてはいけない。

いや、周囲の配管全部を交換しなければならない。

そう思い所長として州政府と科学技術庁、産業省に意見書を提出したが半年経っても返事が返ってこない。

その間、何度も足を運んだのだが会ってもくれなかった。

産業省長官の自宅を訪ねて行ったのが、彼の運命を決定づけた。

役所を出た長官を確認して自宅を夜間に尋ねたが、

応対した妻が『ここ数日は地方に出張中だ』と答えて、

仭は『役所から出る姿と、専用車に乗り込む姿を確認して伺った』

と答えてしまう。

自宅には帰らずに、愛人の元から通っている。

図らずも、その事実を妻に知られてしまった長官はすぐさま懲罰人事を発動。

第二基の不調も仭の責任にされ、彼を庇った仲間も飛ばされてしまう。

仭は強制入院となり技術者としての人生を終わらせた。


楊主席は、そんな仭の一門にあたる。

勿論、道士の存在など今の大陸に信じるものは居ない。

それこそ、弾劾され職を解かれて強制収容所送りになる。

だから、ひた隠しにするしか無い。

彼も大陸で一二を争う大学の出で、地方の高官になった両親の力もあり、政治局員として頭角を表す。

特に自由主義経済に国の舵を切らせた功労が評価されて遂に頂点に上り詰めた。

と、言っても多くの経済派閥に属さない中立的な経済学者としての利用価値を認められただけだ。

今までそう言った派閥からの誘いを受けた事は数えきれない。

中には、呪糸蟲を取り込ませようとした秘書付きの女もいた。

自分の幼馴染そっくりに仕立て上げてた女も秘書に付けられた。

手を出せと言うのだ。

だが彼は恐妻家を演じて手を出さなかった。

不能とまで言われる始末。

息子、娘の事は表に出していないが、二人の息子と娘を国外に出している。

民間護衛をつけてある。

自分に攻撃が集中している方が家族が安全。

そう思ってきたが、そろそろ頃合い。

自由経済の導入のおかげで、金の亡者たちが破綻する道筋はついた。

国外に金を逃しているようだが、CCFにかかれば身包み剥いでくれるだろう。


恨みを買いそうだ。

呪旗がまたデカくなるな?

証券取引所に置いたらどれ程広がるだろう。

そんな事を考えて過ごしていた。



「やっと、この家が、ゆっくりできる場所になったわね」

リビングから色んなものが撤去されていた。

国旗やタペストリー、指導者の著書まで。

いつの間にかすり替えたのか、古い蔵書まで盗聴器が付いていた。

秘書が盗聴器ありませんと言っていたのは、

『自分が知っている盗聴器、カメラ以外は有りません』

と言う意味だとは知っていた。

だが、これ程とは・・・・・・


「行動を制限する為の、ガスまで出てきそうだ・・・・・」

「そいつは、リムジンから出てきましたよ」

「成程、運転手との仕切りは、その為だったのか・・・・・」

つくづく、この仕事が嫌になった。

だが、しばらくは、この国にいなくてはいけない。


「絶対に安全な場所がありますよ」

「あぁ、噂には聞いている。鹿児島と宮崎の県境かな?」

「本当、指導者ともなると目と耳が良いわね」

リビングにかけた金髪の小柄な女性が呆れていた。

紗羅である。

「岩屋紗羅さんですね。

妻が貴女の番組DVDを見て、お取り寄せしてますよ。

(カイ)と呼んでください。

家内も、その方が気楽で良いそうです」

「えぇ、お話は済んでいますわ。

事が済んだら、見送りなし、随行員無しで京都に行きましょう。

案内するわ」

「それは楽しみです。

人混みの中を、見られながら進むのは辛いんですよ。

下手に視線を動かすと、後で大騒ぎになりますから」

「そうね。それは理解できるわ。

認識阻害という術をかけないと、周囲の視線を集めるから。

こうして・・・・貴女も道士?」

「うふふ。そうですよ。

でなければ主人をカイなんて呼びませんよ。

ランでお願いしますね。

私の一族の女性はランで現す名を使います。

一番上になると、呼称が削られてランだけです」

「楊 白蘭もそうね」

「いえ、あの娘は楊でも違う一族です。

でも、娘みたいな存在ですよ」

「それじゃ、おばあちゃんね。おめでとう!」

「エッ? あなた!」

「そうだ。前に話した黄と柳を束ねた青年の子を宿したそうだ」

「まぁ!

だからあなたの顔色が良かったのね。

あぁ、嬉しい。

早く、会いたいわ」

「えぇ、今は京都にいてもらっています。

神戸に家を構えていますが知られていますし、翠がケイランドに行って呪糸蟲の痕跡を探っています」

「まぁ、そうだったの。最後の足掻きかしら?」

「仭先輩もそう言っていたが、人の呪いと穢れはどこにでもあるからな」

「そうね。国内にも残っているし周辺国にも」

「えぇ、平和そうな日本でも、多く集めていましたから。

無くなる事はないでしょうし、ある意味人間の発展の糧でもあります」

「そうね。

でも静かね。

いつもなら、こんなに離れていても街の雑踏は聞こえて来るわ」

「それは、私が軍を動かないようにしたからでしょうね」

「あらどうして? 洗脳みたいにして大人しくさせたのは聞いたけど?」

「軍が出てこないから、返って心配なんですよ民衆は」

「準備中ってわけですか?」

「そういう事。

軍が出てきたら、それに数で抵抗する。

その繰り返しだからね」

「もう10日程は、これが続くわね。

それ以上は、周辺国にも動きが出て来るかもしれないけど、紫の霧のおかげでそれどころじゃないわね」

「被害額は、どこでも天文学的な数字になっています。

死者は出ていますが、警告を無視した航空会社の便の墜落は航空会社の責任ですからね。

イカオから警告出たんですから」

「ウチの子供たちは?」

「カナダは問題ありません。霧が到達しませんでした。

ボディガードも換えました。

持ち物も調べて有ります。

携帯の位置情報は本人たちも諦めていましたが、写真や通話が筒抜けだった事にはお怒りでしたよ」

「やれやれ、便利になると耳や目が増えた。

それで、真弓くん。君の肩で寛いでいるのは?」

「この子が見えますか?」

「えぇ、私にも見えるわ。

紗羅さんから、これを頂いてからね」

奉石と魔石の組み合わせのブローチだ。

「そう言えば、私も同じ様な物を受け取ったよ。

洋樹君からね」

出されたのはネクタイピン。

ノーネクタイでも、どこかに挟んでおいてくれと頼まれた。



その後、洋樹と香織はキッチンで仕込みにかかる。

まぁ、キスを繰り返しなのだが・・・・・


「この子は管狐と言って、日本の妖怪にあたります。

翠さんが今手懐けている新しい【符人】ですが、よく似ています」

「そうか・・・・・・新しいのか・・・・・」

「違いますよ。

元は、顕現出来なかっただけです。

顕現する為の機会を得れなかっただけ。

管狐と遊ばせていたら、次第に顕現の仕方を覚えてきています。

大陸にも居たそうですよ。

今回、紫の霧を起こしたのもそのきっかけとなった水竜も、元は大陸に存在していた物です」

「そうだったのか!」

「調査は未だですが、頃を見てCCFから発表されますよ。

いよいよ、地球に起こっている事を発表します」

それから、真弓と紗羅はアーバインの事、そして沙羅の夫岩屋友嗣とその妻たちの事を話していく。

膨大な話になってしまったのでかいつまんでだが、それでもこの夫婦は一術師として理解をするのが早かった。

「地球の終わりか・・・・・・

考えないでは無かったが・・・・・

この国の民衆が知ったら暴動になるな」

「他の国でもでしょうね?」

「そうだな。

自分が歩いてきた道が無くなるんだからな。

後ろも崖、前も崖。

一本の突っ立った岩の上に立っているんだ。

どうしようもない」


「それで、今は地脈の暴走を止めて緩やかに、エネルギーを逃そうとしているの?」

「そうです。

ケイランドに向かったのも、地脈の位置とその活動状況を記録に取るために向かったのです。

婚前旅行も兼ねていました」

「あら? でも、彼は香織さんと?」

「私と一緒なんですよ。彼は戸籍は日本に在りますが地球人じゃ有りません。

香織もそうです。アーバインの子供なんです」

「私は、日本人なんですけどね」

「それなら、貴女が本妻では?」

「いいえ、他に色々あって本妻は彼女です。

でも戸籍上のこと。

彼は私たちだけでは無く、もう一人。

いいえ、もうしばらくすれば全部で四人の妻を持ちます。

そして、その全員を平等に愛してくれています。

彼には、もう娘もいますし、しばらくすれば男の子も産まれてきます。

私たちも産みたいですから、子沢山になりそうですね」

「随分と、巴と仲が良くなったみたいね?」

「えぇ、なんと言っても、幼いなりながら一番の年長者ですし知恵も経験もあります。

今回の件も彼女のサポートが無ければ、もっと悲惨な結末が待っていたでしょう」

「誰かね? その残りの二人の女性は?」

「会って見たいわね」

「済みません。

一人は妊婦ですし、もう一人は・・・・・補習講義と追試の真っ最中で、連れてこれませんでした。

映像をお出ししますね」

映し出した洋樹と未彩、明菜そして巴の巫女服姿。

「あら、この二人は人では無いの?」

「アーバインに住む猫獣人です。

アーバインの住民には、こう言った人と猫や犬、狐の特徴を兼ね備えた人族がいます。

そして人との間でも、子供ができて代を繋ぎます。

この二人は、その中でも稀有な存在。

特定の相手にしか発情しない猫獣人です」

「そうなの!可愛いわね。

抱きしめたいわ。

それに引き換えもう一人の少女は、成人前ね。

笑ってはいるけど、ほらこの写真。

目力が凄い!」

巴が、奉納舞を舞う姿。

「はぁ〜いつもながらに舞は上手いわ。

どんなにやっても、彼女の様に周囲を巻き込む事はできないわ」

紗羅は舞扇を取り出して手元で操る。

「上手いですね。私達も熊野で舞を教えて貰いましたが、中々うまくできません」

「重ね舞ね!

あれは凄かった。

一緒に居てくれたから舞えるけど、一人では無理」

映像を出して見せた。

静かに舞を始めた巫女達の後ろに、残像の様に姿が連なっていく。

「これは!」

もう、目が釘付けだ。

何度も見返す夫妻。


そこへ、

「お待たせしました。はい。厨房に残っていた材料と、私が持っていた材料で作ってみました」

洋樹と香織がワゴンに載せて、様々な食事を運んで来た。

変わったところでは、洋樹特製のデミを使ったオムライス。

紗羅のリクエスト。

随分と食べていないと直ぐに作らされた。

他には、アレンジされた家庭中華料理や色んな料理が並ぶ。

手順を知る為に、香織に炊き込みご飯をリクエストした洋樹。


その夜は、久し振りに笑い声が響く主席公邸であった。

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