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いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
724/926

724 結婚式そして結婚式  96 ゲリラ17

「ウグウグ!」

夏王(かおう)様!」

夏興(かこう)!押し返されるぞ!どうした? 押し込むのだ!」

「陣が動かない!」

必死に狭い脚立の上で、もう一度、呪詛球を押し込もうと足掻く二人の夏。

ズル、ズルと穴から紫色の液体がこぼれ落ちる。

そして、それが洞窟内に広がっていく。

もう、風が吹かない洞窟の中は、紫色の雲の中にいる様な状態だった。

「クッソ!コレまでか!」

遂に押し出されてしまい、奥から今まで注ぎ込んでいた分を返すとばかりに、紫に黒が混じった液体が溢れていた。


陣が徐々に色を失っていく。

「もう一度やりましょう!私に、その手袋を預けてください!」

「そうだな!

最初から、お主が押し込めば良かったのだ。

先に小さい方を使いきれ!

陣を起動させろ!

柩を覆っていた緞子を使って手袋を外してくれ!」

言われた通りにした興は、手袋を自分の手にはめた。

「あぁ、コレは!」

「力が湧くじゃろう?」

「えぇ、今なら呪詛球を押し込める。そんな気がします」

「そうか!それならば先に小さい方を押し込んで、それを塞ぐ様に、もう一度大きい呪詛球を押し込めばいい!」

「はい」

「それでは私は、下に降り・・・・・」

「どうしました?」

「柩の蓋が開く!先程の光で姫が目覚めた」

だが、興は動けなかった。


柩の蓋から白い指が現れた。

美しい白い指。

そして手首が出て来て、蓋を横に開けようとする。

慌てて夏王が駆け寄る。

続いて興も球を箱に戻して、手袋を外し脚立を飛び降りた。

夏王では無理だったが、興が力を込めて蓋を横に落とす。

巻き上がる紫の霧。

更に濃い紫の塊が陣から吐き出される。

流れ込む先には、目を開けた蘭姫。

真っ白なベール。

成程、美しい。


「ギャ〜ァ!」

悲鳴が上がる。

「何!」

「しまった!

蘭姫は道士では無い!

出してはいけなかった!

私とした事が!」

紫の煙が柩に吸い込まれていく。

もう悲鳴もない。


静寂の中柩から声が聞こえて来た。

「やってくれたな?」

柩から声が聞こえる。

「蘭姫さま!声が、・・・・」

初めて聞く声だが、先程あがったのは女の悲鳴

だが今聞こえたのは、男?の声。

渦を巻き

ミシミシと柩が軋む。

バァン!

遂に柩が飛び散り姿を表す紫の竜。

金の目。

膨らみかけていた胸が鱗で覆われていく。

「ふははは、まさか蘭姫の竜核を使えるとはな!

地脈の災いに、この身を喰われるところだったが、竜核を感じて逃げ込んでみれば受体出来るとは!

しかしここは?」

「あ、あなたは・・・・」

「なんじゃ? お主らワシを知らずに呼び出したのか?」

「夏の蘭姫様を目覚めさせ、その身に竜を宿らせるのが望みでした」

「そうか・・・・・因果だのう。

ワシを倒す為に地脈を使って竜を宿す筈だった蘭姫。

だが、その美しさに紗の王子は地脈を塞ぎ、蘭姫の竜核を封印してしまった。

封印された【乳の陣】と言う場所に眠らせば良かった物を・・・・・・・

呪詛を地脈に注ぎ込んで、ワシを呼び起こしてくれて、

消えてしまった【竜核】までくれるとはありがたい事だ」

「そ、それではあなた様は?」

「尊き竜! 独竜! 昔は毒竜とも呼ばれたがな?」

「あぁ、なんと言う事だ!私は、毒竜を呼び起こしてしまった!」

「感謝するぞ。・・・・・しかし、ここは?」


壁に描かれた二つの陣を、眺める独竜。

その表情が、変わっていく。

「二つの陣の間!まっ、まさかここは陣の間!消滅の間!」


「グェ〜」

苦しみ出す独竜。

足元に巨大な陣が展開した。

先程、独竜を吐き出した陣も、それに対応する陣も白く輝き出す。

中に閉じ込められた二人の()の男。

そして独竜の頭に声が広がる。

「二人とも良くやりました。

コレで、独竜を滅せられます」

「あっ、あなた様は・・・・・蘭姫!」

「・・・・夏の血を引く者ですね。

ですが・・・・・そうですか・・・・

復活を願う毒竜の企みで、呪素を操る様にまでなったのですね?

ですが、もう心配いりません。

この浄化の間で、魂の浄化を行います。

それならば、輪廻の輪に乗れましょう。

我も、この独竜を抑え込んで消えましょう」

琅の心の中から、どんどん何かが抜け落ちていく。


可哀想な母、そして父。

母は父と、その身に流れる夏の血を恨み続ける事で村八分を耐えた。

祖母も同じだ。

祖父と父は街に出て、そんな俺と母に仕送りを続けた。

村の役人に金を渡して、大学への推薦状を手に入れてくれた。

どこかで、断ち切らなきゃいけなかったんだ。

俺の代で、終わらせることが出来た。

もう、他には夏の血を引き継ぐ者はいない。

「そうです。

正統な夏を使って独竜を滅ぼす。

見てごらんなさい。

指を刺された先には、夏王を名乗った老人の姿は無く、箱に入っていた呪詛球も消えている。

全ての物を、光の粒が食い尽くしていく。

陣の中央には、禍々しい紫の竜の姿は無く跪く美しい女性がいた。

「お願いがあります」

「叶えられるか解りませんよ。私も、輪廻の輪に乗るだけですから・・・・」

「では、聞いてください。

もし良ければ、二人で輪廻の輪に乗りましょう」

「・・・・・・そうですね。

私も、それも良いと思います。

夏の家は滅びました」

琅の身体も、少年に戻りそして全身が光に包まれている。

蘭姫の元へ進む。

そして抱きしめた。

「初めてですよ。こうして男性に抱かれるのは」

「私も、こんな気持ちは初めてです」

あの村娘を抱きしめた時は、ただ肉欲だった。

だが、今は共に居たい。

そんな気持ちだけだった。

(ろう) 駿(しゅん)

「蘭 姫」


その言葉に応じるように、大きな光の柱が二人を包んだ。


長谷山のところからも、上空に浮かんでいた陣の様子が変化しているのは見てとれた。

赤黒かった陣が身震いをしたように見えたが、赤黒さが無くなり白い光の線が侵食を開始した。

自らを汚した相手を取り込んでいく。

そして、光の柱が上空の陣に届いた。


「梓さん!コレ! NORAD (ノラッド)からの映像です!」 

早速回復した米国からの映像。

「まるで光の絨毯だな?」

「出現場所は、大地溝帯のそばですよ。例の洞窟があるあたり!」

「この映像は?」

「ノラッドの軍事衛星が撮っています。

壊れてもいい!そんな気構えで接近させていたようです。

うちの衛星も別角度で捉えています。

光の強さが変動してますね?」

「あぁ、大地の脈動だ」



ケイランド

首都に移動した羽田と友恵、そして翠が広げた巨大なサンクチュアリーには、多くの市民が集まっていた。

九鬼修造達が守る女子供が残されたキャンプでも、そのキャンプを目指す夫達にも、その光景は見えていた。

直立する光の柱。

上空にあった陣に突き当たり、周辺に広がっていく。

それと共に消えていく紫の霧。

足元にも、光が侵入して来た。

サンクチュアリーの壁も、それを防ぐことができなかった。

それどころか、サンクチュアリーを吸収して更に輝く。

「あぁ、気持ちいい」

真弓が声を上げる。

「あぁ、確かに洗われる様な気分だ」

帰蝶も、その心を光に包まれた。

多くの人々が心を洗われる。


空母キッシン艦隊

「あれ!なんですかね?」

全ての艦の艦橋に、多くの軍人が集まっていた。

空母キッシンでは、艦橋に登れない人員達が飛行甲板に座り込んで空を見上げていた。

もう、中にいる事なんて出来ない。

防護服の煩わしさを忘れて見入る光の柱。

その根元から光のカーペットが広がる様に、大地を覆い海へと、そしてこの空母艦隊へ押し寄せて来た。

副艦長は、警告用の押しボタンを思わず押し込んだが、電気設備が使えない事を忘れていた。

光が彼を包み込んだ。

頭の中では『身を屈めて、直接光を浴びるな』

と教わっていたのに。

向かって来た光を、一身に受けたいとそう思うほどだ。

防護服だけでは無く、下着まで脱ぎ捨てたいそう思う程に。


途端に、非常事態を伝える警報音が鳴り響く。

副艦長は慌てて、非常事態を伝えるスイッチを解除した!

連動したマイクを取ると、スピーカーが音を出した。

その音に反応したゴードンが隣でマイクを取った。

「キッシン空母艦隊の全兵士に告ぐ!

こちら司令長官ゴードンだ!

まだ、終わってはいない!

直ちに各部署に戻り、職務に戻れ!

繰り返す職務に戻れ!

友人がやってくれたと思うが、確認がまだだ!

祝杯は待て!

以上」


艦長は忘れていた。

まだ副艦長が、マイクのスイッチを入れている事を。


「イヤッホ〜ィ!アイツら!やりやがったぜ!」


艦隊の各艦長も、嬉しさを堪えるので必死だった!


「やっつけれるんですか?」

「まぁ、見ていな。コイツは自滅する」

紫の竜が、必死に何かに牙を立て飲み込もうとしているが、その数倍の速さで侵食されるように薄くなる。

だが、紫の霧が供給されていて、なんとか均衡を保っていたが急に静かになった。

消えてしまっていた。


「あぁ〜罠にハマりに行ったな。

あれだけ呪詛をかけても、地脈を操るなんて出来るわけがない。

それとも他の企みがあったのかもしれないが、地脈を相手にした時点で終わりだ」


・・・・又、御堂の主が絡んでいるんだろう。

人間を巻き込んで、紫の竜を始末するつもりなんだろうが・・・・・

朱雀や透歌は大丈夫か?

まさか、あの二人も消す気じゃないだろうな?

帰りにアンの様子も見に行くか?


それからどれ位だろうか、大地の割れ目から白い光が溢れてくる。

「もう、大丈夫だ。終わったよ。

檻を収納してくれ。

魔素を先に吸収させないとな」

友嗣から預かった青魔石を使って、魔素を抜いていく。

天井部分に張られていた、亮太がこさえた盾を眺める友嗣。

「やはり、内側からの衝撃には弱かったか?」

「ルベルの攻撃を防ぐ為の盾ですか?」

「あぁ、ルベルの入植地を覆うつもりだ」

「それって? ルベルに動きがあったんですか?」

「ルベルは相変わらずだ。

赤道近くまで移動しては、太陽光パネルで発電した電磁砲だけ射撃を繰り返している。

動きを見せたのはコロニー艦だ。

消えた筈のコロニー艦が、アーバインに戻って来そうだ」

「では僕も、アーバインに戻ります!」

「それには、及ばない。

まだ先の話だ。

移動速度が、全く出ていない。

青木 忍さんも、それに気付くのが遅れたのもそのせいだ。

ボーズを使わずに、移動してきている」

「本当に、ボーズが使えないのですか?」

「時間調整かも知れない。

ドーンさんは、時間調整だと言っている。

成人する時間稼ぎ」

「成人・・・・・クローンですか?」

「あぁ、皇帝様のクローンが産まれたようだ」

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