717 結婚式そして結婚式 89ゲリラ10
「デカいすよ!」
先日、経験した地震とは比較にならないほどの揺れを感じて、羽田の部下が身体強化をかけた。
大地の揺さぶりに弄ばれながら、羽田 毅はG式達との繋がりを切るまいと足掻いていた。
「クソ!式神が言う事を聞かない!」
元々反抗的だが!
毅は自分が使役している式神が、念話による命令に従わず消えていくのを止めようとしていた。
様子がおかしい。
この地震が来る前から、何時もは無表情だった式神がソワソワしていた。
遂に式神達は、誰かに無理やり首筋を掴んで引き摺られるように消えていく。
「ダメだ!霊界に連れて行かれた!クソ!誰が一体! 状況は!」
「進行予定方向に発煙!虫です! 虫が発火して燃えています」
「なんだと!それじゃ動けないじゃ無いか!
後方は?囲まれているのか?」
「いえ、後方は数カ所燃えていますが、包囲されているわけじゃありません」
「では一体?・・・・・釜さんに状況を報告しておけ!」
「はい!」
「首都の状況は!」
「数カ所から火災発生! 多くのビルが倒壊しています!」
「念話を使って九鬼友恵、翠の安否を確認!しろ!」
念話を使える数少ない門人が、首都に滞在している九鬼友恵に繋がろうとしている。
もしもの事があったら、あの親父リミッター外して暴れまわるぞ・・・・
式を使って周囲監視をしている門人に確認を取る毅。
「大陸の連中は?」
「隣国へ移動を開始しています」
「ゲートは?」
「解放されていますね。
全員家族が心配で、逃げ出す様ですよ。
国境守備隊は、フェンスを開けたまま次々に車に乗り込も坂を降り始めました!」
「あっ!」
「どうした!」
「山です!地滑りが始まっています。
国境警備の連中が逃げ出したのは、山崩れを心配したんですね!」
「いい判断だな!」
「あれ?」
「どうした?」
「式が動かないんですよ」
「あれ? マイクもおかしい?」
「先輩!電子機器ダウンしています!」
「なんで?」
「ダメです!電子的な通信機器はダウンしています」
「バッテリー切れじゃないです。これ魔石で発電させている奴で、魔石は魔素の残量60 %示しています」
「・・・・・・式が居ません!管狐も亜空間に逃げ込みやがった!」
「毅さん!
後方上空! 方位210! 高度300メートル
なんすか? アレ?」
陣・・・・・
空中に陣が浮かび上がっている。
「なんだ、あの色? 赤黒い色の陣? だけど、あの中央部・・・・紫?」
「全員!防護服着用!
呼吸ユニットも準備もしろ!
何だかわかんねぇが、紫の煙が来るぞ!
大気分析装置 交戦モードに変更!」
「・・・・・・? 毅さん!
【呪素】の数値が上がって来ています!
浄化システム自動稼働します!」
「全員!サンクチュアリー内へ!」
50人ほどの門人が、中央に集まって来た。
周囲からの汚染された大気と呪素を寄せ付けない。
【サンクチュアリー】が作動した。
サンクチュアリー
一条との戦いの後、黄と柳が、呪術に特化した道士による呪旗を利用した攻撃を萩月に明かしていた。
呪旗で溜め込んだ怨念や呪咀を固め作り出した呪素を、煙の様にして相手を囲み衰弱死させると言う厄介な術だ。
透歌には秘密にしていたが、人の怨念や忌み地に溜まる澱の様な呪咀を固めた物が呪素。
これを、相手に使用する事で、高密度の呪咀となって呪殺に繋げる。
高野山の協力で魔素を変換して、浄化の陣を張った安全な陣地を形成させている。
従来から同じ様な効力を持つ、聖域と言う同じ意味を持つ陣が存在していた。
一対一の術による呪詛ならば、符による防御もできるがそれでは対抗出来ない。
陣を使って防御領域を陣によって構築している。
従来は法力を使用するが、美沙緒と裏高野山の協力で魔素を使う様に編み出した物だ。
まだ試験段階だが、魔道具の状態でアーバインの術師でなくとも使える。
今回、この国で作戦行動に携わる門人達で試す事になった。
防護服を万が一に備えて着用する。
空気清浄システムは、ドルフィンの物を流用した。
これで、ここにいる部下達の生命は守られた。
毅がホッと息をつく。
「岳下!」
「はい!ここに!」
「岳下!誰か繋がったか?」
「首都に居る九鬼友恵様と、その護衛はご無事です。
首都は壊滅状態。
車は、動かないそうです。
住民が使っている旧式のバイクは動くそうで、今、郊外へ出る為の手段を講じられています。
首都は、多くのビルが倒壊していて、今、大学のグランドにサンクチュアリーを展開していらっしゃいます!」
旧式のバイクは動くか・・・・・・
今車を捨てている連中の車は・・・・成程、電子制御か・・・
電磁障害が発生している?
「他に繋がらないか?」
「翠さまも、ご無事です。
対峙していた敵勢力は、反転して首都から離脱。
各地に散っているようです」
「良かった」
「首都に兵やゲリラが、なだれ込んでいないならそれでいい。
他には・・・・・」
「岩屋友嗣様です」
「なんと?」
「全員無事。
金鉱山から脱出中。
東郷洋樹様がいらっしゃるキャンプに、凡そ二千名の作業員と共に徒歩で移動中。
こちらも途中で車列が、停止したそうです。
サンクチュアリーを起動して、ゆっくりと移動しています。
到着予定は二日後。
今日は、安全確保して河原で休息させるそうです。
この、紫色の煙を吸うなと言ってらっしゃいます!」
「鉱山労働者の分は防護服が準備できないだろうから、友嗣さんが強固な遮蔽を重ね張りしているだろう。
そっちの方が、この防護服より安全性が高そうだな。
快適だろうし・・・・・ほんとうにチートな人だよ。
仕方無い。
全員、給水ユニットに給水して、用も済ませておけよー!」
「他の部隊も各自・・・・・
長谷山様が、あの陣の近くにいます!」
「どこだ!」
「ダイアモンド鉱山です!」
「畜生!
車はないし、式も使えないんじゃ、助けに行けない。
「大丈夫だそうです。TST仕様の防護服を準備されているそうです!
サンクチュアリーも起動していますね」
「流石だな。萩月の一番槍ってとこか!」
その長谷山は
「隊長!」
「慌てるな!
地震より、あの空中の陣に注意を払え。
アレは放出系の陣だ。
陣中央から何かが放出されるはずが、中央を塞がれている。
危険だ!」
「良くわかりますね?」
「どんだけ陣を、見させられたと思ってんだ?
美沙緒が物心付いてから、トランプ代わりに陣の組合せやったんだ。
そして室の娘二人。
転校してきた瑠璃。
ポアーザの婆様。
散々説明されたんだ」
「と、言うことは・・・・いずれ何かが噴き出す?」
「あぁ、アイツら何をやったか知らないが、陣に向かって何か
・・・・・・そうか呪核をねじ込みやがった」
「でもそんな事したら・・・・・・」
「何かが起きるだろうな!
どうせ逃げ場はない。
防護服再点検!
何かあったら、各員!盾を張るようにしていろ!
サンクチュアリーの、魔石を確認しろ!
上に重ねる盾は、魔素を使用するタイプに切り替えろ!
その方が、異様の物には強い!
きっと何かが起きる。記録媒体はどうだ!」
「魔石板が動いています」
「そいつは有難い!」
「おそらく他の連中も、記録と・・・・・・・
念話だ!」
「こちら、長谷山!
あぁ、毅のところの岳下か!
生きているか!
全員無事!
他の部隊も大丈夫か!
友嗣は?
良し、金鉱の労働者も全員解放してキャンプに徒歩移動中!
上空の陣?
記録しているよ!
アイツは、放出系の陣だ!
どうせ、脳筋の癖になんて、毅が言っているだろうが、美沙緒達の相手していりゃ詳しくなるさ!
それより中央の放出口に呪核、いやそれ以上に強力な呪素の塊。
その塊をねじ込んで起動させたバカがいる。
きっと反転起動するぜ!
そっちでも記録してくれ
こっちは、真下で良く見えている!」
「状況か?
いささか砂埃と、この怨念のカスみたいな紫の煙がうざったいが、サンクチュアリーと全員TST仕様のスーツのお陰で生命維持には問題ない。
コイツが無かったら撤退したがな!
情報として伝えてくれ!
何か変化があったら中継頼む!」
「流石、長谷山さんですね。
最初、道場であった時の若々しさがそのままだ」
「長谷山様も、陣の事に詳しかったんですね!」
「門人の釜さんも知らないか〜娘がなぜか懐いて、彼が面倒見て遊んでくれていましたからね」
友嗣は、一瞬幼い頃の美沙緒を思い出した。
『美沙緒、大丈夫?』
『透歌!洋樹さんが香織さんに送った映像見たようね!
アレ、井戸の陣の裏っ側だ!』
『と言う事は、表が現れる?』
『あぁ、間違い無いだろう』
『どうなる?』
『わかんね〜』
『そうよね。
誰も陣の陣の間から、呪素の塊を突っ込もうとはしないわね。
そこでね、咲耶から渡された資料によると、反対側の壁にも陣が薄く残っているそうよ。
何が起こるか見ていましょう。
神がなされる事には手が出せないわ』
『・・・・・・透歌? アンタ⁉︎あの陣の働きわかっているんじゃ無い?』
『良くわかるわね』
『もう何年アンタと付き合ってきていると思うの?』
『ふぅ、そうだったわね。
・・・・・・御堂の主が、あなたを霊界に招くのは諦めたそうよ。
もうすぐ、そこから出られるわ。
今、萩と白美に詰められてタジタジみたいよ。
ポアーザのおばあさん二人は、天上書庫で眠っている』
一瞬間が空いた。
何か、他の念話を受けたみたいな間だった。
『これを起動させた道士は、もう逃げられない。
見て見たかったなぁ〜』
『何を!』
『人や怨念の塊で有る呪核が、粒子に戻され浄化されるところ』
『怨念って、粒子になるのか?』
『球を形成しているのよ。
物体なら粒子に決まっている。
どうやって、そう作り替えているか解らないけどね』
『その事、誰かに知らせた?
はっ!
まさか、あの二人に洞窟へ侵入を図らせてな!』
『・・・・・・』
『透歌!透歌!クソ切りやがった!』
『美沙緒!』
「何?巴!」
「TSTのスーツ三着。香織に届けられた!
それを、現地の洋樹達に送れと言われたそうよ!
それが抜かれた!」
「透歌め!意識操作しやがった!」
「なんとかならない?」
「祈るだけだ!」
「誰に!」
「自分の愛する男でいいだろう?
・・・随分と可愛い女になったわね?・・・巴」
「美沙緒?・・・・・」




