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いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
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715 結婚式そして結婚式 87 ゲリラ8

アフラドリトの洞窟


中に籠った二人の道士の研究は行き詰まっていた。

「やはり、これは【乳の陣】では無いのか?」

「えぇ、紀伊半島で見つけた陣とは違う紋様ですね」

「そうか・・・・君もそう思うか・・・・」

「ですが【陣】には間違いない様です。

萩月に付いて行けずに、売り込んできた陰陽師から入手した月夜石。

日本各地で老人達が持っていた奉石を集めて、紀伊半島で吸わせた法力には反応していますから、陣なのは間違いないです。

法力に反応が強い事から、マナで動くアトランティス系の陣ではないかと思われます」

「そうか・・・・・」

「ですが、我々が持っている奉石では、如何ともしがたく」

「法力の量が足りないか・・・・・・」

「はい。それも、かなり足りません。地震を起こさせた月夜石の真力も奉石の法力も、我々が入手出来る最大級の物でした」

「それでは、コレを使ってみるか?」

禁呪の箱に入れられた大小の珠。

開けられた瞬間から、眩暈がするほどだ。

「こ、これは!」

「日本で集めた呪詛の塊よ。

まだ、成長段階だがな。

呪旗を使ってチマチマ集めるよりこちらが早い。

一条が、女に固執したのもこのせいだ」

「これは!どの様にして!」

「今は、言えん。我も失われた家に伝わる秘伝書を解き明かす為に作り出したにすぎない」

「それでは、()一族の秘術ですか?」

「・・・・・やはり、私の本名を知っておったか、(ろう)?」

「もちろんです。その為に国を出て、裏切り者の謗り(そしり)をあえて受けて欧米で学んでいます」

「そうであったな。それ故に、ここを知ったのだからな」

「最初、あの岩屋の娘が、私が接触していたエクソシストの集団に調査に来た時には驚きました。

ですが、彼女の足跡(そくせき)を辿って、この壁画の報告書を見た時には震えましたよ。

真力も法力も、あの陣の中央部に押し込んだら地震が発生しています。

ここは、揺れる事が無いのですが、外に出て地震の規模を知って驚くばかりです」

「地脈からエネルギーを吸い出すではなく、こちらの力を利用して増幅して地震を発生させているのか?」

「本来の目的とは、違っているとは思われます。

萩月と高野山が集めている要石の残骸は、地震の被害を抑える為で、揺れのエネルギーを真力か法力に変換するものでしたが、呪糸蟲の持つ弱点の、振動数を産み出す事で呪糸蟲を排除しています。

沖に沈められた陣も、恐らく津波を抑える為だと萩月も考えている様です」

「いずれにしろ、ここの陣を動かすと地震が発生する事は判った。ならば、少し試してみよう。

この、呪詛の球を使ったら大地が裂けるかを!」

(あるじ)!それは危険では?」

「今のままでは、ゲリラや故国の力を借りた国家しか建国できない。

ならば、この地にこう言う物があるぞと脅し続ければ良かろう。

ここは、安全な様だ。

この岩山に、宮殿をこさえさせよう」

「主・・・・・・

私達は安全でも、金鉱にいる同郷人を巻き込んだら、支援が受けれなくなります」

「確かにな。金鉱は潰れるだろう。前回の時でも落盤が起きているらしいからな。

仕方無い。今回は、逃げ出せる様に昼間にしよう。

金鉱にいる連中が、ダイヤモンド鉱山のヘリポートから脱出できる様に、

二時間後・・・・・いやそれなら妨害が入るな。

一時間有れば金鉱からダイヤモンド鉱山への一本道に入れるだろう。

こっちに寄らせると妨害をしかねない」

「では、今から一時間後に実験開始を伝えます」

「あぁ、ついでに昨夜の地震も、こちらで起こした地震だと警告しておく様に!

これなら、奴等もその気になるだろう。

これで、ワシらを馬鹿にし続けて来た連中も逆らわなくなる。

きっと同じ様な物が存在しているはずだ。

大陸にもな!」

「もしそうならば!」

「我々が、大陸の王だよ」

「夏一族の復興ですか!」

あぁ、一条に呪旗と呪詛球を持ち逃げされて衰えた我が一族の秘術。

糸を引いたのは、現政府につながる連中。

もう少し、もう少しで、真なる呪詛球が出来上がる。

その為には、地脈の力が必要だ。

だが、私は諦めない。

さぁ、行くがいい。

これから、この大地を揺さぶって見せると言ってこい。

夏一族の末裔である私と、その傍系の琅一族。

新たな大地に国家を築く。

我が祖先たちが成し続けて来た事よ!」



こうして、一時間後。

脚立に乗った夏老人は、呪詛球を陣の中央に押し込んだ。

「ふははは、わかる。わかるぞ!琅よ!

この陣の先で、大地が震えている。

あはは、震えている。震えている。

おい、しっかりと脚立を抑えよ。

大地が揺れているわけではなかろう?」

「はい、揺れていますのは主人の体です。

主人。お辞めください。腕に血が滲んでおります!」

言われて夏老人は腕を抜いた。

成程、振動のせいか血管が切れて内出血を起こしている。

爪と指の間から血が滲み、手袋の縁から滴り落ちている。

慌てて、呪詛球を受け取ろうとする琅。

「触るで無い。

この手袋をして無い手で、触れよう物ならお前も取り込まれる。

他の者ならともかくも、お前を失うわけにはいかん。

今日は、これくらいにしよう」

夏老人は、呪詛球を箱に戻した。

だが、陣が光っている。

普段は白かった陣が、赤黒く光っている。

「ふははは、これは、用途外の使い方だった様だな。

今頃、大陸の阿呆どもも、萩月も大騒ぎしているだろう。

一条にくすね取られた、この秘伝書。

一条家の東京の分家の地下室で見つけた時は狂喜した。

誰も知らなかった様じゃ。

外の地蔵堂の地蔵を動かせば、地下に入れるとは調べなかったか?

押し入れに残された子供の絵日記に、ありかが書かれていたのにな。

あはは、あはは」

出血した為に、すぐには動けなかった。

洞窟の中で、そのまま軽い食事を済ます。

陣が光っていて灯りが必要ないほどだった。

夏老人と琅は、外の事など気にする事なく眠りについた。


だが、夏老人達は知らなかった。

自分達が起こした地震の規模が、この国の首都を破壊し、大地溝帯の活動を活発化させてしまった事など知らない。

そして、洞窟の上空に赤黒い陣が浮かび上がり、その中央に瘤の様な突起が浮き出ていた。



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