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いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
713/926

713 結婚式そして結婚式 85 ゲリラ6

函館沖に停泊中のアーバインの貴賓室。

仙台港から釧路港に向かっていたが、函館沖で停泊して時間調整をする事になった。

釧路港に大型のクルーズ船が入港していて、不具合があったわけでは無い。

窓から見える函館の灯りを見ながら、常義とエリファーナが肩を寄せ合っていた。

「先行役に、2人を選んだのは正解だったわね」

「まさか、修造が乗り込むとは・・・・奴らしいがな!」

「結果オーライなのが、腹立たしいわね」

「交渉力が、必要になったから良かった」

「でも、大陸がアフリカにテーブルの下から手を出しているのは知っていたけど、そこに道士が関わっているとは・・・・・英国に近い各国にも、今一度、用心する様に伝えたわ」

「議会にも、大陸寄りの議員が残っているからな」

「そうね。長い間宗主国であった立場から、現政権に繋がる大陸の財閥との繋がりが強い議員がいるのは認めるわ。

かく言う私の一族もそうだもの。

でも、今回の事は許せない!

女子供を人質に取っただけではなく、鉱山で現地の人を使ってその命を燃やさせる事で富を得る。

潰して!この企みを!悪魔の所業を!」

「恵梨・・・・・」

常義は、涙にくれるエリファーナを抱きしめた。


イバ・・・

常義は、義理の息子であり、親友でもある岩屋友嗣の事を思った。


今、現地では陰陽師達を友嗣が率いている。

萩月の一門だけではなく道士の翠、キッシンの命を受けた米軍も後方支援を担っている。

洋樹と真弓には、指揮を修造に任せて、周囲をゲリラに囲まれた女子供達のキャンプを守らせる。

出来れば戦争には巻き込みたく無い。



首都の周囲に展開する軍とゲリラ。

コイツらは、実は共闘して居る。

戦って居る相手は、形骸化した政府だ。

軍は政府の盾として、ゲリラから首都を守っているように振る舞っているが、脱出出来なかった政府要人が逃げ出さないように包囲して居る。

そして、その対象には九鬼友恵の様な外国人も含まれていた。


大陸にとって都合がいい政府を、強引に実施する選挙により設立させる。

そして、その時の戦勝の証として現政権の指導者と軍幹部を血祭りに上げて、このクーデターが人民に寄る民主的な行動の成果とアピールする。

その時の、クーデターの正当性を証明させる為に外国人を置いている。

その為に道士がいる。

そうして、混沌として居る周辺国家を同じ様に、民衆蜂起で新たな国家を作り上げたように見せかけて、大陸の傀儡国家を樹立させる。


その為の足掛かりとして選ばれたケイランド。

始まりは、官僚達への金品の贈与と美人局。

海外に家族を招き懐柔する。

近代的な生活環境。

なに不住ない生活。

虫に襲われる様な生活から解放された。

ケイランドの首都では、急に発生した害虫の大量発生で眠る事すら恐怖だった。

ベッドに多数の虫が入り込んできて吸血するのだ。

もう自分も家族も戻る気は失せた。

喜んで事実とは異なる証言書類にサインをした。

『マルトの指示で政府の政策を行っていた』

と証言するだけで、新たに手に入れた生活を保証してくれる。

国連での証言をする為に、ニューヨークのホテルに留まって清潔なシーツに包まった若い女と夜を過ごす。

来週には、国連での証言と大陸への感謝を演説する事になっていた。

新しいボトルを空けながら、演説の台本に目を通すケイランド国連代表。


この首都を固める国軍とゲリラの側面には、民間人を装った大陸の軍が展開。

ゲリラと国軍の動きを監視する督戦部隊。

その、隊員のリストと顔写真。

現在の任地を記録した資料は、いつでも公開できる状態。

中には、日本に居るはずの食品メーカーのセールスマンが、出国手続きを取らずにここに居る。

入出国記録は当然準備されていて、大陸の政権の反体制派に送り付けられることになっている。



首都を目前にした林の中に、萩月の部隊がいる。

あくまで、大陸の思惑に手を貸す道士の排除。

それが目的だ。

道士が扱う呪術や呪糸蟲は、普通の軍隊では対応できない。

またそう言う戦い方がある事を諸外国に知られたく無い。

萩月にとっても不利になる。

しかも今回は、この国に常在する生物を式の様に扱う虫使いの存在を、九鬼友恵らが捉えた昆虫に痕跡が見られた。

首都を中心に被害を出している昆虫は、吸血性が無かったのに吸血性を与えられている。


首都攻防は、九鬼の部隊が行う。

「良いか!

我々は、ゲリラと国軍の間を『蜂矢の陣形』で抜く。

相手にするな!

双方に対して、適当に砲撃と銃弾を打ち込めば良い。

そのまま、隣国の傭兵軍を装った大陸の軍と国境の間へ抜ける」

「でもそちらには、例の毒虫の罠が存在しているんですよね?」

「もうそこには、彼がいる。Gマスターがな!」

「羽田さんか〜」

彼方此方で声があがる。

中には身震いする奴もいた。

「こっちの進撃に合わせて国境側から、大陸の軍へ害虫を押し込んでいく」

「でも虫使いがいるんじゃないですか?」

「虫は、ある(こう)の働きで、虫使いを襲わない。

G式には効か無いのが確認されている。

Gが先頭に立つんだ。

後方から香で追い立てられた害虫を率いてな!」

「それは、エグい!」

そこで、無人の荒野を駆け抜けて背後に周る。

後は、ゲリラと国軍側に追い込む。

同士討ちをさせる寸法だ。

首都のお嬢様の事は心配するな。ウチの腕っこきと翠が控えている」



金鉱では、新たな人形が準備されていた。

まだ、動かす時では無い。

人形使いの準備が未だだ。

坑道の奥に操って居る人形が、鉱石を掘っている。

彼らが自滅しない限り、新たな人形を産み出せ無い。

人形使いが使える呪詛の量が足りない。

今回の人形使いの人形は、呪糸蟲に行動を予め仕込んである。

術者がそばに居なければならないのでは無く、こうしろと命令を与えた通りに動く。

坑道の奥深く、なんかには行きたくない。


先日に夜間に起きた地震で、坑道が崩れ中に入れなくなっていた、

坑道の入口から700メートル入った地点。

その先の状況が解らない

苛立つ大陸の関係者は、管理を押し付けたジャイフに食ってかかるが、名ばかりの責任者であるジャイフには、どうしようにも無い。

債権を譲渡されてから、鉱山の専門家が来たのは埋蔵量の算出に来ただけだ。

設備の健全性は評価もしなかった。

こうも地震が多くては、金を諦めて露天掘りのダイヤ鉱山に回すしかない

だがダイヤ鉱山は他の派閥だ。

管理官はジャイフが兼任しているが、奴は何も知らない

だからこの際、傀儡を使い無理にでも坑道を復旧させる事にした。


ロロの夫 マウは苦境に立たされていた

彼は坑道の管理を任されていて、昨夜も最終戸締りをして階段を上がる際に地震に襲われ足首を痛めた。

足を引き摺らないように、ガチガチに作業用テープで固めて坑道復旧の為の会議に出る


これまで怪我をして、病院に送られたやつは帰って来てない。

巨人に変えられ使い潰された。

マウは、ルビと見た事を誰にも言っていない。

騒ぎになれば、真っ先に自分が疑われ巨人にされかねない。

腫れと痛みに効果がある草の汁を、痛みを我慢しながら患部に塗り込んだ。

ルビから子供の頃から教えて貰っていた。


だが、会議中に、その草の匂いを他の集落から来た若造に気付かれ怪我を告げ口された。

奴とは、以前揉めて殴っていた。

奴にとってみれば、仕返しをしたつもりだろうが・・・・

こうして牢にいる。


出される食事には手を付けずに、水も布を椀に当てて濾すようにして飲む。

こうまでして我慢出来ているのは、飯の中に何かが居るという事を知っているから。

そして聞こえるロロの鳥の鳴き声。

居るはずも無いのだが、間違い無くロロだ。

自分の事を呼ぶ時のリズムに癖がある。

「必ず救い出す。食事は摂らないで!あなた!」

「ああ、信じよう! 愛しているロロ!」

そう、応えて痛みと空腹を堪えて眠った。

監視に努めている友嗣と、長谷山の道場師範代の釜。

「強い男ですね〜

アプリで合成した妻の言葉を信じてますよ!」

「相当な痛みだろうに・・・・・・」

管狐と周囲を飛び回る、燕の式が周囲の状況を伝えてくる。

翠の別働隊が、忌み地となった集落の呪旗を処分していた。

「しかし翠さんが、敵ながら嘆くのが解ります。

これだけ式を入れられ、周囲の呪旗を抜かれても検知できない。

ただ回収に来ても、明らかに不足している事に気が付かない。

呪詛は貴重な筈で、監視役の土人形に使っていた筈なのにそれすら居ない。

人形使いの術だけに片寄ってますね。

翠さんは、そこで大陸と、その他の道士の会合を持ちかけた訳ですか?」

「このままでは、大陸や、諸外国に散らばる道士は消滅する。

現に黄や柳達が調べていた資料では、消えた道士の流派の数は三桁に迫ろうとしている」

「そんなに、流派が有るんですか!」

「あぁ、研究熱心だったんだ。

だが、いつの間にか呪術に寄って行った。

黄と柳達の跡を継いだ翠の一族が、生き残っているのは、元々一つの流派から分裂したのを統合して、呪術を消すカウンターに特化しているからだ。

日本で生まれ育っていたせいか、真力を使える事が大きい。

陰陽道と同じ様に真力の様な力を使っていたが、人を犠牲にする呪術に特化して、それを権力者同士の殺し合いに利用され力をつけてしまったのだろう。

でも、今では、その呪旗すら産み出せなくなった。

同じ様に蠱毒の術も・・・・・・

一条家の祖先が、大陸を出る時に持ち出したのが響いているんだろうな。

しかし、女に宿らせて性交渉で人を化け物に変えるのではなく、呪糸蟲は元々こういう使い方が当たり前だったんだろう」

「そう思えます」

「だが、これは潰す。人形使いも潰す。

信長様に頼るしか無いかもしれない。

脳を支配される前なら『鬼斬り』で切り出せる。

我々は、この金鉱を解放する」



「さて準備は済んだ」

洋樹が、転移陣を描き終えた。

持ち込んだプレハブに、青い陣が浮かび上がる。

床下に、大きな青魔石が置かれている。

この陣に、金鉱やダイアモンド鉱山で働かせる為に喉に呪糸蟲を宿らされた被害者を転移させる。

そして、すかさず『鬼斬り』で呪糸蟲を抜く。

そう言う計画だ。

僅かでも助けれれば、暴れられて他の作業員を殺さずに済む。


ルビとロロが床に描かれた転移陣を見て

「これは?」

「アフラドリトの洞窟に描かれた紋様に似ているね?」

「あぁ、そうだね」

「それは?」

この地域に詳しいカメラマンの大沢も知らない地名が出た。

「私たちが住んでいた集落の奥に有って、何をしても削れない不思議な紋様なの。

床じゃなくって壁に描かれているわ。

大きな洞窟で、両側が切り立っている。

向かい合った壁にも紋様が、微かに見えるんだけど見える方が鮮やかなんだ。

真っ白な顔料で書かれているんだろうけど、どんなにしても落ちない削れない」

「今も見れるのかい?」

「どうだろう? 戦闘地域だったから、誰もいない筈」

「他に知っているのは?」

「五年ほど前かな?。国の調査団が来たけどそれっきり。

政府が破綻させられて、それどころじゃ無かったからね」

地図を取り出して場所の確認をしたが、これが中々上手く行かない。

何箇所かを、洋樹が隼の式を使って映像で見せた。

そのうちの一箇所の岩山に、ロロが指を刺した。

成程、ダイアモンド鉱山寄りか・・・・・・

【収納】を通じて映像を送る。

咲耶に連絡を入れて、過去の調査記録との照合を依頼した。

道士の狙いは、【アフラドリトの陣】

大地の裂け目に近い、この地に有る陣ならば【乳の陣】の可能性が高い。


「これが有るからロケットランチャーを、ぶっ放して来たんだな!」

修造が息巻く。

位置を確認すると間違い無く、この遺跡の近隣で攻撃された。

大陸の政府寄りの道士は、金とダイアモンド。


大陸から追い出された道士。

紀伊半島で陣を探していた人形使いの一派は、これを探していたんだ。


紀伊半島や関西から道士が脱出しようとしたのは、高野山の動きとTSTによる壊滅作戦。

透歌達による要石の再生で、存続が危うくなったせいだけでは無かった。

新しい国家に巣食う。

いや、新しい道士の国家を作る。

それが目的。

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