711 間話 フィットネスクラブ3
「何よ?俊恵。その目?」
「香織まで?」
ナオとミキの不安を他所に、未彩が二人を黒百合姫の園へ誘い込む。
「二人とも、基礎体力はしっかりしているし、そんなに苦労はしませんよ。
特に、他の武道を身につけていない分、基本が入りやすい。
それに、ミキさんは器械体操が得意なんですよね?」
「そうです。新体操も得意かな?」
「棍棒とかフープも得意ですか?」
「それが、一番かな?」
「じゃあ、俊恵さんが教えてあげたらいかがですか?
特に、この頃鍛錬しているブラックジャックは、【収納】と合わせれば護身術には最高では?
相手の身体に傷をつけずに、打撃を加えれるでしょう?」
未彩が平然と、ブラックジャックの利点を解く。
「未彩姉さんも、使っているのよね?」
「香織の電撃を使いたいけど、今はそうはいかないから」
「どうして?」
「電撃は自分の身体に、電気を溜め込むでしょう?
子供に、どんな影響が出るか分からないじゃない?」
「あぁ、そうだった!良かった。避妊しておいて」
香織は、腰から青魔石ベルトを外した。
「何これ?」
「今は、魔素を切っているけど、私たちアーバイン人は、この石から出る魔素で子供ができにくくなるの。
だから、今は切っているわ
洋樹さんとの夜は、入れてそばに置いておくの」
今度は、ナオとミキが赤くなる。
「人間には、効かないのね。真弓も、魔素が効けばいいのに・・・・・」
「どうして? ハネムーンベイビーでも良いんじゃない?」
ミキが、羨ましそうだ。
「私と真弓は、しばらく子供は作らないの。
だから、真弓はピルを使うんだろうけど・・・・・・」
「あぁ、アレか?
それなら心配要らない。もうピルは使っていないよ」
「なんで!じゃあ、帰ってきたら、お腹膨れた真弓になるの?
真弓、排卵日だったんだよ! う、裏切り者・・・・・」
「違う違う、帰蝶様が制御できるよ」
そこで、静が帰蝶の隠された能力を教えた。
「精子まで手懐けるの?」
「ピルが嫌いなの。私も帰蝶様も」
「味はしないよ。大会に合わせて服用していたからね」
「でも、アレを飲まれると繋がりが薄くなる気がするから嫌だった」
「そうだったんだ!御免なさい!」
「謝らなくても良い。
我らも、なぜそうなるのか判らんが、月のモノが関係しているのかもしれない」
「まさか、閉経したら、ううん子供ができたら消えるんじゃないよね!」
香織が必死。
「それは無いと思う。子供が出来て産むのを楽しみにしているくらいだ。
でも、例え消えても悔いはない。
殿に抱かれることができた。
香織と洋樹さんの、子供の為なら消えても構わない!」
「ねぇ、子供ができたら産む時は入れ替わる?」
「良いや、最初は苦労をしろ。
好いた男の子を産む女の幸せだ。
なぁ、美彩」
「えぇ、幸せですよ」
「解った。でも今度、輪廻の輪に乗る時は一緒だからね!」
「あぁ、そうしたい」
「したいじゃ無くって!約束よ!」
「我儘じゃなぁ〜香織は!」
「女になったからじゃない?」
「図太くなった!あぁ、私もやっぱ彼欲しいなぁ〜」
「あのさ、その事で言っておくことがあるんだけど聞きたい?」
俊恵が、二人に向き合った。
「そこまで言われたら聞くわよ」
「二人とも渡された、あの交際申し込み用の携帯使った?」
「あっ」
「あぁ〜!忘れてた!」
「だろうね。じゃあ、特定の相手はいない?」
「居ないわよ!実年齢イコール、彼居ない歴なんだから!」
「そういうトシはどうなのよ!又、おじ様捕まえた?」
「又、じゃ無いもん! 初めてなんだから!
彼とは本気で、お父さんお母さんも認めてくれた!」
「はぁ?」
煽っていたナオがその反応に驚く。
「あぁ〜」
沙羅から聞いていた、香織が頭を押さえる。
「何!トシちゃん!」
ミキが反応した!
「あわわ!」
「やはり、繋がったか・・・・・」
「何? 靜さん! 何か知っているの?」
「この娘が話す。それとも、お前が話せるか?」
「流石、サトリね」
「だ、誰?」
「トシちゃん!」
「落ち着け!香織と一緒だ。
魂の欠片が宿っておって、望みが叶って力をつけている」
「初めまして皆様。
羽田 毅の妻・・・・いえ、先妻の美帆、羽田美帆です」
「そういう事!」
「カオリンの事が、無かったら信じないけど・・・・・・」
「それじゃ、トシちゃんの、お相手は・・・・・」
「羽田 毅。羽田家当主です」
「羽田さんか〜成る程ね。未だ45歳くらいだっけ?」
「そうですわ」
それから、トシちゃんを交えて話が進む。
もう、日付けが過ぎたが、眠れるわけがない。
明日は、授業が休みで助かった。
三年後には、結婚する事。
そして、毅には防大を出て米軍で鍛えられている双子の息子。
海渉、宙渉がいる事を伝えた。
美帆に、急かされて映像を出すトシちゃん。
焼けた肌が眩しい二人。
「25歳です。
決まった相手はいません。
実は!」
「ストップ!美帆さん!」
「どうして止めるの? 毅さんも、合わせたいって言っていたでしょ?」
「それは、そうだけど?」
「そこまで聞けば、内容はわかる。
親友同士で双子と結婚か〜
でも双子と、いいながら違いは、はっきりしているね?」
ナオが、話を自分達に引き寄せた。
「そうね」
ミキが、ナオの考えを読む。
「でしょう!
どう?産んだ自分で言うのもなんだけど良い子でしょう?」
私も、俊恵の中にいて、ずっとあなた達の事を見ていたから。
娘にするなら、この二人と思っていたのよ!」
「アワワ!」
俊恵が慌てる。
「会って見ようかな?
他の知らない奴より、良いかもしれないし・・・・・タイプだし」
「私、海渉さんがタイプ!優しそう!」
「ミキは、そうだろうな〜
でも私は、宙渉さんかな?ガッチリしているし」
「それなら、問題ないわね!」
「ちょちょっと!」
「何?」
「いや〜両角さんの門人からも、交際の話・・・・・・」
「無視無視!銭勘定よりも、守ってくれる存在よ!」
「なんだか、必死ねぇ〜」
「あぁ、キッシンさんからも、この二人には縁談が行っているんだ」
香織が、キッシンから聞いていた。
「軍の人?」
「違う。お偉いさんのお嬢さん」
「私も、そっちは勘弁して欲しい」
前回顔合わせの時に聞いた話で、毅も困惑して居る。
「じゃあ、トシちゃんが、私たちの義理のお母さん?」
ミキが、俊恵に縋って見せた。
「ゲッ!」
「ゲッとは何よ!」
「とにかく、あなた達と息子二人の背後には、両角の男達とキッシンさんの女性が、後ろから迫って来ているのは確かよ」
美帆が、二人に告げる。
「一度、会えないかな〜」
ナオが真剣に考え出した。
真面目な話。
これほどタイプな男性には会ったことが無い。
「毅さんに、聞いてみたら?」
美帆が、俊恵を促す。
「それがね〜羽田さん達。現在、アフリカで軍事行動中」
香織が、爆弾を投下する。
「えっ!」
「あの人が!軍事行動!」
「この頃連絡がなかったのは、心配させないためだったのか・・・・・・
他の事ならいざ知らず・・・・・
戦闘なら・・・・・・
もしかして、香織!
道士がいるの?」
俊恵の身体から、青と赤のオーラが立ち上り、紫の花びらを産み出す。
「ちょっと!トシ落ち着いて!美帆さんも!
一人じゃないから!
友嗣さんや洋樹さんに真弓さんも居るし、九鬼当主を始めとしたサポートも居るわ。
もちろん、羽田、長谷山の門人も行っているから冷静になって」
「もう、あの人は・・・・・息子達の空母は?」
「インド洋を抜けて、接近しているわ。
作戦開始は、二日後、日本時間 10時。
時差が有るから、現地時間朝四時ね」
「トシちゃん」
「俊恵、美帆さん」
「無事を、祈るしかないわね」
「えぇ、それしかないわ。
・・・・・・抱かれておけば良かったかな?」
「そんな事はしないわよ。毅さんは・・・・」
「そうなんだ」
「あなたが、迫らない限りね?」
「美帆さん。迫ったの?」
「・・・・・・そんなに永く生きれる身体じゃ無い事は知っていたから。
少しでも感じたかったからね。それに、産めるなら子供産んでおきたかった。
だから、計算して卒業前に、あの人に抱かれ出した」
「・・・・・・」
「さぁ、寝ましょう。
二日続けて、徹夜はお肌に良く無いわ。
もし、バレたら大目玉よ!」
未彩が頃合いを見て、声をかけた。
「未彩さんごめんね。お腹の子供の為にもゆっくり寝て。ミキの部屋を使って。
ミキはナオの部屋で眠って」
「良いの?」
「明菜ちゃんが寝ちゃって居るし、香織は私の部屋で寝て、私は、このソファーで寝るから」
「良いよ!一緒に寝ようよ」
「ううん。
もう少し、ここで考え事したいの。
片付けも有るし、室は睡眠時間短いの。
・・・・・お願い」
「・・・・解った」
「じゃあ、香織。明日の朝一緒に、ご飯を作ろう」
「そうね。
真弓が送って来ているサーモンがあるから、ちょっと季節外れだけど、鮭の炊き込みご飯にしようか?」
「良いね。じゃあ、おやすみ」
「俊恵、美帆さん。無理しないで。
待つ方が笑えてなかったら悲しいよ」
「うん。ありがとう未彩さん」
・・・・・
初めてだった。
こんなに、相手の事を思いながら、夜を過ごすなんて・・・・・・
毅さん
アナタ・・・・・
互いの肩を抱き締める様に、身を縮めて横になる俊恵と美帆だった。




