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いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
57/926

055 チョア

ルイスには、すぐにでも手に入れなければならない【植物】があった。


【チョア】


父から渡された記憶の中に【チョア】の秘密が有った。

確かにアレの邸宅の庭に生えていたのを記憶している。

【チョア】の事を知っている義父もゲーリンも、その実から採れる油の事は知っていなかった。

果物屋だったミキジならと聞いた事があるかと聞いたが知らない。

髪を洗うのに使うが、それなら他により多くの油を採れる実がある。

オリーブから採れた油は量も多く、乾燥した岩場の様なところでも育つ。

庭の隅、畑の脇どこにでも植えられていた。

だが、【チョア】はファルバンの庭でしか見た者はいなかった。

一度、ファルバンの屋敷に入りるしかない。

ゲーリンとメイルに頼んで同行してもらう事にした。


ルイスは髪を黒く染めてもらう。

渋々だったライラが、染め上がった黒髪のルイスをいろんな方向から見ていた。

その事が気になり浜の岩屋に来て、遮蔽の魔道具で岩屋を中から閉じた。

壁に『黒石板』を置いてその前で、ゆっくりと回ってみる。

黒石板で自分を見返してみると、なるほど、こう見られているのか・・・・いつもとは違うルイスがいた。

ライラが色んな方向から見たのは、いつもと違う物の見たさだな。


ライラも記録しておきたいな。

『黒石板』と解ると何かあった時に不味い。

黒石板に【遮蔽】をかけてみる。

大丈夫だ!【遮蔽】の上から【偽装】をかけるか。

色々と試して『白石板』に擬装した。

そこに、筆で記録を取っている様子で『収納』から取り出せば気付かれない。

前にも何回か【黒石板】をコッソリ出して記録したが、今後は出して置いても気づかれる事はないだろう。


盗撮犯ルイスが誕生した。


浜で暮らしたせいか、肌色も黒くなっているし筋肉もついた。

恐らくルースとは気付かれない。

そう確信して家に帰った。

すると、

「良いから入っておいで」とライラが誰かを連れてきた。

「でも、・・・・」

ミキジ?

そう、ライラがミキジを連れて来たのだ。

ライラは釣りの時以来、ミキジを異常に可愛がる。

『1番下だったからね。妹みたいで可愛いんだろうさ』と義母が言っていた。

「やっぱり帰っていた。ほら見てよ!」

「・・・・ルイスさん?」

「ほら、やっぱり気がつかなかったでしょう? 髪の色変えるだけで解らないでしょう!」

「本当!やはり金髪が黒髪に変わるだけで解らなくなる。きっと、誰も解らない【アレ】の・・・・ 」

「・・・・大丈夫だよ。ルイスが【アレ】から来たのは誰もが知っているけど言っちゃいけない事も。で、どうかな? あの街で会ったら解るかな?」

「多分、解らないと思います。髪が黒だし、肌の色も黒くなって筋肉が付いているから」

「ありがとう。これで、心配しなくって良くなった」

「【アレ】の街に行かれるのですか?」 

「少し用があってね?」 

「それなら、これをお母さんのお墓に置いて来てくれませんか? ミオラと一緒に作ったのですが、お母さんのお墓に捧げてあげたいなって思ったので、ミオラのご両親のお家もうちも残っていないのでワタシのお母さんが、ミオラの両親にこのブローチ見てくれたら良いなと思ったんです」

そう言って貝と珊瑚の小枝で作ったブローチを差し出して来た。

ルイスはそれを肉屋から貰った【絹】の小さな布に包んで収納に仕舞った。

「そうだね。今回はダメだけど今度、又一緒に行こう」

墓は【アレ】の外壁に沿って立てられていた。

ただ瓦礫を積んだだけの墓。

3年を超え、書かれた文字も見えなくなって来ている。

誰の墓か解らない。

その下に何があるのかも弔った者しか解らない。

多くが思いだけで積んだ瓦礫の墓。

それでもいくつかはその下に眠る人がいる石碑を置かれた墓が有った。

その一つ。


ルイスは聖地に向かいながら、今日、やる事を一つ追加した。

聖地で石碑を作ろう。

ミキジの父とミオラの両親。

そう思いながら聖地に向かった。


聖地でゲーリンと相談して石碑を土の術師に作ってもらった。

礼を言うと薄い木の板で編まれた籠と一枚の木札を渡された。

「浜に帰られたら果物屋と小間物屋の子に渡して下さい。たまたま持っていた物です」

籠には【果物屋マッフ】と屋号が、木札には髪留めの値段と屋号【フーラ】の焼き印が押されていた。

「これは・・・・ありがとう。きっと喜びますよ」

聴くと【アレ】からの荷を運んできたコムの商品に紛れ込んでいたそうだ。


ゲーリンとメイルで【アレ】の街跡に入る。

先に二人が入り、それと無く周囲を監視するがルイスの【探査】には何も引っ掛かっらなった。

怪しい動きをする者は居ない。

二人が墓が有った跡を探している。

以前、ゲーリンはルナの墓石の欠片を見つけていた。

そして、周囲の位置関係から墓の位置も解っていたが吹き飛ばされて何も無かった。

今も、収納から墓の欠片を取り出し墓があった場所で祈りを捧げている。

側に居てやりたいが万が一が有る。


【触れずの石]】から入っていく。

灯が灯った地下の遺跡を進むと地上の屋敷と繋ぐ扉に出た。

内側から開くのだろうか、不安に思いながら扉を押すと難なく開いた。


もしも、扉が閉まってしまったら出る事が出来なくなるので、扉を大きく広げて収納から出した鉄の棒を使って固定しておく。

この棒は父が押し込んだ物だ。

(まさかこの時の為に用意した物じゃないよな?)

そう思ったが、気を取り直して周囲を探す。

恐らくこの先の地上に繋がる廟は壊されている。

それは、以前来た時に瓦礫が重なっていた事で知っている。

周囲を探してみると多くの物があった。

最初に見つかったのはルースの衣服、絵本、オモチャ、姉の衣類、髪飾り、オモチャ、兄達の衣服、子供用の剣、術の指導書、母の衣服、髪飾りそしてルナの形見と書かれた箱。父の蔵書、服、剣そしてルースへと書かれた箱だった。

恐る恐る開けると手紙が置かれている。

ここならば安全と置いて行った様だ。

『この手紙を誰かが読む時には私らは死んでいるのだろう。

この地を離れるこの時、廟には特殊な術をかけて置いた。

ファルバンの記憶を受け継ぐ者しか入れない。


【収納】に入れられない【チョアの実】をここに置く。

チョアの実は【収納】に入れると萎れて芽が出なくなるし油も絞れなくなる。

黒石板に従い育てるが良い。

成長には3年かかる。

油も収納に入れるな。

魔石の墨にすれば魔石の効果でその効能は失われない。

墨にしろ。

ここに9粒のチョアの実を置いておく。

大事にしろ。

私も旅をして探してみたが原産地は見つかって居ない。

生きろ!ルース!幸せになメトル・ファルバン』


最後にルースと自分の名が記されている。

引き継ぐ者はルースしか居ない。

そう決めた父。

最初から何かあるかを予測していた様な文章だった。

だが、今は感傷に浸っている場合ではない。

箱を手に持ち、他の持ち出す物は収納に入れて外に出る。

泉の部屋に戻り鉄の棒を外すと扉はゆっくりと閉まった。

どうやら、扉の出入りをすると扉が閉じる様だ。

鉄の棒を泉の脇に残して外に出る。

ゲーリンはもう墓に居ない。

離れた場所からファルバン家とルナの墓が有った場所に向かって祈りを捧げる。

父から託された箱を意識して手に持ち、街の外周の墓の列に向かいミキジの母アンレの墓の両隣に、金物屋のミオラの両親の名を彫った石板と夫マッフの石板を建てた。

懐からミキジとミオラが作ったブローチに小さな黄魔石を仕込み、アンレとミオラの両親の石板に渡し掛け保護の術を展開した。これで、この墓の間でこのブローチが外れる事はない。

村で取れた果物をそれぞれの墓に捧げる。


そして、聖地に向かうゲーリン達に橋の袂で合流して聖地に入った。

どうしても、父メトルが残した箱を収納に入れてしまいそうになる。

メイルに頼んで彼の背中の袋に入れて貰った。

聖地に到着して箱の中身を二人に見せる。

聖地で4粒預かり中で先ずは2粒育ててみる事にした。

様子を見て残りの【チョアの実】は、どうするかを決める事にした。

残りはメトルが持ってきてくれる事になった。

中に入って居た【魔墨】はルイスとゲーリンで分け、メトルが残した言葉どおりかを調べる事になった。


ゲーリンに母の持ち物から持って来たルナの遺品を渡す。


ゲーリンは受け取りを拒んだが、これは頼みだと言って受け取らせた。

中にはゲーリンが送った青魔石が付いた髪飾りが入っていた。



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